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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第7章『要人警護は命がけ:解決編』
41/62

#39


なんて事だ。

あんな奴が居るなんて情報は無かった。奴はいったい何者なんだ。

額から冷や汗を流しながビルの解体工事で出た廃材の間を疾走している色白の男は先ほどの光景を思いだし更に顔を青くしていた。

今までにあんな奴には会った事が無い。

あの顔は殺す事になに1つ躊躇しない顔だ。

上手く逃げれたのは偶然か、いや罠という可能性も。

私に雇い主の所まで案内させる気ではないだろうか。

一瞬立ち止まり辺りを警戒する。

あの男が後を追ってくるような気配は感じられない。


「・・・考え過ぎか」


止めていた足を再び動かす。

男は隠しておいた車に乗り込むと解体現場から走り去った。

その数分後に治安維持局の部隊が工事現場へと突入したのだった。


数時間後あの色白の男の姿はとある空港にあった。

眼鏡をかけた男性のすぐ後ろを歩き発進準備を進める小型ジェット機へと向かっていた。


「まったく役にたたん連中だ。高い金出して雇ったというのに、何が最強の傭兵部隊だ」


眼鏡の男はかなり不機嫌そうだ。時折後ろを歩くあの男を叱責している。


「どの道使い捨てだったんですからいいじゃないですか、それに成果もありました。心に傷を負わす事は出来たかと、精神面の傷は外傷とは比べものになりませんから、それに楽しみは後に取っておいた方が楽しめるかと」


あの気味の悪い笑みを浮かべながら眼鏡の男に囁いた。


「ふん、まぁいい。お前には今後も世話になるからな、あの糞爺の無様な姿を拝むのはもう少し後とするか。次の作戦を考えておけ」

「それはもうすでに良い案が・・・」


2人はそんな会話をしながら小型機に取り付けられたタラップを上り機内へと入っていった。

2人が機内に乗り込んだのを確認すると係員がタラップを取り外し、誘導員が滑走路までの案内を始める。

小型ジェット機は徐々にエンジンの回転数を上げながら滑走路へと進んで行った。

その頃機内では眼鏡の男がグラスを片手に酒をあおっていた。


「お前もどうだ?これは年代物の良い酒だぞ」

「ではお言葉に甘えて」


「私も混ぜでもらえるかね?」


「「!!!」」


会話に割り込んで来た主に驚いた2人は手に持っていたグラスを落してしまう。

会話に割り込んできたのは2人が死んだと思っていた白蛇の指揮官セルパンであった。


「この死にぞこないの老いぼれめ」


色白の男は懐から銃を抜き出すとセルパンに銃口を向けた。

だが銃口を向けられてもセルパンは一切の動揺を見せない。

それどころか何処か余裕さえ窺わせるほどだ。


「せっかちな奴だ、そんな奴は戦場では早死にするぞ」

「ふん、ぬかせ!」


色白の男は迷わずにその引き金を引いた。

拳銃から放たれた凶弾がセルパンを襲う。

腹部に打ち込まれ後ずさりするも倒れる事は無かった。

撃たれた箇所を片手で押さえながら空いた方の手を懐へと突っ込むと何かを取り出した。

色白の男は拳銃かと思いさらに数発セルパンに撃ちこむ。

足や腹部等に数発打ち込まれ、遂に倒れ込んだ。

すでに解体現場で負傷しており真面な処置をせずに無理をおしてここに来ていたセルパンはもうすでに虫の息である。

むしろ致命傷と言えるような数発の銃弾を受けてまで意識をしっかりと保っている事が異常だった。


「若造、借りは返したぞ・・・」


セルパンは最後の力を振り絞り懐から取り出した何かを強く握り息絶えた。


「手間取らせやがって」


息絶えたセルパンに近寄り手に持っている物を確認する。

何かのスイッチのように見える。


「もう済んだのか?」


椅子の陰に隠れていた眼鏡の男が顔を覗かせた。


「ええ、ですがしばしお待ちを」


スイッチの存在が気になった色白の男はセルパンの体を確認しようと着ていた上着のファスナーを下げた時だった。


「・・・くそ」


突如閃光が走り飛び立つ準備をしていた小型ジェット機が爆散した。

色白の男が最後に見たのはセルパンの体に巻きつけられた大量の爆薬と赤い点滅をする起爆装置の姿だったのだ。

セルパンは敵であるにも関わらず傷を負った自分を介抱してくれた島崎に対する借りと自分や部下達を裏切った依頼人対して復讐を決行したのであった。




その日の夕方、米国の兵器メーカーの社長が乗る小型ジェット機が爆発事故を起こしたというニュースが流れていた。

偶然にもこの兵器メーカーは三ッ葉重工が米国進出の足掛かりとして傘下に加えたばかりの企業であった。


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