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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第6章『要人警護は命がけ:激闘編』
35/62

#33


第6支援班の南波のもとに五十嵐から通信が入った。


「不発弾が発見されたそうなんだが、そっちに情報はあるか?」

「ちょうど連絡をいれようとしていた所です。軍から直接の情報を受けたので間違い無いと思います。交通情報に従って護送を続けてください」

「そうか、ありがとう」


そこで通信は終わる。

南波は先に五十嵐が不発弾の事を知っていた事を不思議に思った。

支援班ですらたった今手に入れた情報をなぜ知っていたのか。


普通不発弾などの危険性の高い物が発見された場合、国軍に連絡が行く。

そして現場に近い場所の駐軍から不発弾処理班が派遣され状況を確認する仕組みだ。

危険性が確認されるまでの間は警察が対応する手筈になっている。

民間軍事会社などに知らせが来るのはその後、まったく連絡すらない時だってある。

今回は事前に護送の件を国軍に報告していたから連絡があったにすぎない。


「どうしたんだい、うかない顔して」


思案顔をしていた南波にボスが話しかけた。

ちょうど席を外していたので先ほどのやり取りを知らないボスに南波は説明する。


「確かにね。うちに連絡がきた時点ではまだ周知できてないだろうし・・・嫌な予感がする、五十嵐に連絡を」

「了解です」


一般的に危険物が発見されただけの場合は余計な混乱を避けるために情報規制がかかる。

その為人づてに聞いたとは考えられない。

テレビのニュースやラジオでも避難を呼びかける情報は流れていない事から発見されてからまだ時間がそんなに経っていないという事だろう。


「駄目です、繋がりません」

「なんだって!?もう一度試すんだ」

「何度も呼びかけているんですが反応ありません」


南波がなんども呼びかけるが五十嵐達からの反応は無い。

最悪の事態を想定しなくてはいけないとボスは思った。


「至急治安維持局に連絡を、状況を説明するんだ」

「はい!」

「稲葉の第1班はどうしてる、すぐにでもでれるかい」

「現在準備中です、まだ時間がかかるかと・・・」

「だからあれほど準備しとけと」


ボスが次々と指示を飛ばす。

やはり軍事会社を女の手で育て上げてきただけの事はある。

的確に指示をだし、次になにをどうればよいのかちゃんと分かっているようだ。


「いいかい皆よくお聞き、最悪の場合を想定して動く。皆頼むよ!」

「「はい!」」


別任務補佐中以外の社員が不測の事態収拾に向け動き出した。




1台の車が駐軍地から出てきた。

車の側面には治安維持局と書かれている。


「まったくなんで俺が」


運転席に座る男はぼやいていた。

民間軍事会社から支援要請を受けた本部から現状を確認して来いと使いに出されたのだ。

軍属である治安維持局や、その大本である国軍は民間軍事会社とは仲が良くない。

彼らは自分たちは国を、国民を守っているという信念の元に戦っている。

しかし民間軍事会社はお金の為に戦っているという考えが少なからず彼らにはある。

その為か両社は仲が良いとはいいづらい。一方的に彼らが避けているという事もあげられるがこの溝は浅くはない。

今回使いに出された男もそういった考えの持ち主だ。


「うちではなくて本職組が行けばいいのに」


ちょうど駐軍地を出る時に車輌の準備をしている連中が目に入った。

確か不発弾がどうとか言っていたから不発弾処理班だろう。

俺が行ったってなにもどうにも出来ないのに上の連中は何を考えているんだか。

ぶつぶつと愚痴をこぼしながら車を走らせていると周囲の様子が変わってきた。

段々と人の数が減ってきているような気がする。

大きな荷物を持って家族でどこかに急いでいるような連中も見てとれる。

しかし運転中の男は不満ばかりでイライラしているのか気づいていない。

ようやく様子が変なにに気づいたのは前方にバリケードが見えた時だった。


「バリケード?」


車を止めて車外に出る。

バリケード近くには軍服の男が二人立っていた。


「治安維持局の者だが、どこの所属だ?」


話を聞こうと近づいたが途中で足を止める。

バリケードの近くに立つ男達は手にライフルを持っていたからだ。

軍の敷地内警備や軍事作戦中ならなんら問題ないのだがそんな話は聞いていない。

ましてや不発弾での道路封鎖ではありえない事だ。


「っち、また貧乏くじかよ」


男は身分を証明する局員証を見せながら男達に近づいて行く。

まだ攻撃してくる様子はない。

自身の勘違いかもしれないと思いながら探りを入れる事にした。

見た感じ変な所はない。

軍で支給される一般的な戦闘服に通常の装備類。主兵装として配備されている89式小銃、その銃さえ持っていなかった違和感は無かったのだがそんな事を相手の男達が知る由もない。

海外と国内の違いを把握していなかった為の落ち度といえよう。


「我々はここの警備を任されている。部外者は立ち去れ」


相手を刺激しないようになるべく丁重な対応を心掛けたのだか相手の対応はこんなもんだった。

(怪しい・・・だが2対1じゃな)


「そうか、邪魔して悪かったな。任務ご苦労様です」


わざとらしく敬礼しその場を後にしようとした時だった。

男達の無線機に通信が入る。しかも運悪くその内容を聞く羽目になる。


「そっちに向かったぞ、カナリアは傷つけずに生け捕りにしろとの命令だ。それ以外は殺してもかまわんそうだ。傭兵は女ばかりだからもったいない気もするがな、楽しむ為に生け捕りにしても罰はあたらんだろうよ、今から楽しみだぜ」

「・・・」


無線機からは時折銃声も聞こえる。

(やっぱり貧乏くじか)

がっくりと項垂れていた顔をあげると2人の内の片方の男と目が合った。


「!」


男が銃をかまえるよりの早く鳩尾に拳をめり込ませる。

腹部を抑えながら前かがみになった男の顎に膝を打ち込む。

顎に強い衝撃を受けた男は舌でも噛んだのか口から血を吐いて動かなくなった。

一瞬遅れたものの別の男も戦闘態勢に入る。

距離を取り銃をかまえる。

しかし視界内にはあの男の姿はない。


「どこに!?」


停車中の車や電柱など隠れていそうな場所に銃口を向けるも誰かがいるような気配は無い。

血を吐いて動かなくなった仲間の男以外周囲には誰もいないようだ。


「出て来い!」


居そうな場所に見当をつけ威嚇射撃を行う。

自動車や自販機、建物の看板などが弾丸によって形を変えてゆく。

後半はなかば自棄になったのか手当たり次第に銃撃を加え始めた。

マガジン内の弾を撃ちつくしたのか銃からは空撃ちの音しかしない。

弾を補充する為にマガジンを取りはずした時だった男の後頭部に冷たい物が当てられた。


「投降しろ」


必死になって探していた相手が自身の後ろに立ち銃を後頭部に突き付けていた。

男は持っていたマガジンと銃を地面に投げ捨て両手を上にあげた。


「そうだ、それでいい。ゆっくりと膝をついてそのまま地面に寝転ぶんだ」


投降した相手を拘束する為に地面に寝転ぶように指示をする。

言われた男は両手を挙げたままゆっくりと屈んだ時だった。

急に向きを変えると足払いをかけ転倒させる。


「うっ!」


油断していた所を突かれたようではでに転倒してしまい手に持っていた銃も落してしまった。

転倒した男に馬乗りになると形勢逆転と言わんばかりに首を絞めにかかる。

意識が飛びそうになるなか相手が腰にナイフを装備しているのに気づきそれを奪うと腹部に向け力の限り刺し込む。

もう躊躇している時間は無かった。

次第に首を絞めていた力が弱くなり支えを失った体が伸し掛かってきた。

その体を払いのけると呼吸を整える事に専念する。


「がはっ・・・はぁ、はぁ」


膝を突きながら立ち上がり相手に息があるか確認する。

ナイフで刺した方の男は絶命している。となるともう片方はどうだろうか。

首筋に指を当て確認する。

少し弱いがまだ息はあるようだ。

穴だらけになった車に戻り無線機に手を伸ばした。


「こちら治安維持局の相良、緊急事態だ本部に繋いでくれ」


車体に体を預けたまま本部からの返答を待つ間、相良は考えていた。

(なにが起きてる・・・くそっ今日は厄日だ)


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