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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第5章『要人警護は命がけ:警護編』
25/62

#23


三光女子大に向かう為に1階の駐車場に移動して驚いた。

今まで駐車場にはほとんど車両が止まっている事は無かった。

今までと言っても入社してからなのでそんなに長期間では無いのだが今まで見た事は無かったから最近は主に物置として使っていたのだろう。

だが今日は違った。


「こ、これは」

「ボスが手配してくれたんだ、やっぱすげぇな間近で見ると」


車両に近づいて鍵を取り出しながら説明してくれた五十嵐さん。

いやいや、すげぇなんてもんじゃないですよホント!

興奮した様子で車輌の周りをウロチョロする島崎を遠目に見る班員たち。

若干ではあるが引いているようにも見える。

だがそんな目線にも気にせず文字通り食い入るように見るその車両は軽装甲機動車と呼ばれる車輌であった。

旧自衛隊で2000年代初めに採用された治安維持活動向けの小型装甲車である。

装甲自体は機銃弾に耐えられる程度の軽い防御力しかないが民生品を多く利用することで比較的コストを安くし、安価に生産できる車両として全国的に配備された名車である。

国軍となった現在は後継機である高機動装甲車に代わって現役を退いている。

今なお一部の部隊では後方任務で使用される姿が見られる。

軍マニアからは人気のある車輌でもある。

民生品を多用している為、消耗品などの部品は比較的手に入りやすい事から武装解除と機密機器を取り外した車輌を民間へ払い下げが決まった時にはニュースにもなった。

民間への払い下げが始まってからは一部の熱狂的なマニアや博物館などが買い上げたが一般で出回ることはまず無かった。

というのも安価に生産出来るといっても1輌が約3000万円程度。払い下げの中古品であっても、ゆうに2000万以上はする。

そんな車輌が2輌もあれば誰だって興奮するだろう。

いや、詳しく知らない人にとってはそうでもないかもしれないが戦略ゲーム大攻防を始めてから軍事車輌の魅力に取りつかれた島崎にとってもかつてないほどの興奮状態だった。


「なにか思い入れでもあるですか?」


南部さんが引いた様子で聞いてきた。

どんなに引かれようが今そんなことは重要じゃない。

この迸る熱い思いを伝えたくてしょうがなかったのでその全てを南部さんにぶつける事に。

犠牲になってもらうよ南部さん!


「聞いてくれるかい南部さん!こいつの凄い所は―――」


一行が三光女子大に到着するまで島崎のトークは止まる事無く永遠と続いた。

軽装甲機動車の定員は4名なのでふたてに分かれて移動する事となったのだが島崎が乗った2号車の方に同乗した南部は目的に着いた時にはゲッソリして若干痩せていたという。


駐車場での異様な状態を目撃していた五十嵐と他2名は危険を察知し1号車に乗り込んでいいたので犠牲にならずに済んだ。

後に決まった事だが彼に対して軍事車輌の話題は禁物というのは社内の決まりごととなったという。


「詰所でも話したと思うが、今日は対象との接触、自宅まで警護したのち今後の打ち合わせだ。何か質問はあるか?」

「あのちょっといいですか?」


恐る恐る島崎が手を挙げる。


「なんだ島崎?」

「警護対象ですが何者かに狙われているんですよね?今更かもしれませんがこんな目立つ格好で警護しても大丈夫なんですか?」

「はぁ・・・南部、この馬鹿に説明してやれ」


疑問に思ったので質問したらがっかりされてしまった。

俺なにか変な事言っただろうか。


「いいですか島崎さん」


どこか疲れたような表情の南部さんがなにも知らない馬鹿にもわかりやすく説明してくれた。

民間軍事会社の警備方法は2種類ある。

1つ目は軽装備で対象に張り付き目立たないように護衛する方法でSP式やSS式などと呼ばれている。

これは敵の勢力が判明している場合や護衛する場所が限られている場合に行う。

利点としては比較的軽装備で場所を選ばずに護衛できる事、護衛が目立たないという事があげられるが、重装備でない為敵勢力の鎮圧ができないという欠点がある。

完全に守り重視の護衛形態だ。


2つ目は強力な武装で相手を威圧し、敵の襲撃意欲を激減させる方法で軍隊式と呼ばれる。

SS式とは逆に敵の勢力が判明しない場合など敵の動きを探る時に用いられる。またこの軍隊式は規模もまちまちだが護衛しやすいという利点があるが目立ちすぎるという欠点もある。

重武装での護衛が可能なので攻め重視の護衛形態と言える。

今回の警護任務はこの軍隊式を用いたものという訳らしい。


「つまり脅威を持って敵を排除するという事ですね」

「そうです、わかりましたか?」

「はい南部先生!」

「・・・・・・」


空気が変わった。選択を間違えたようだ。

気づけば五十嵐さんたちはすでに大学内に向かっていた。

あわてて追いかける島崎。

そんな彼らを見ている影があった事にこの場にいた者は誰1人として気づいていなかった。


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