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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第4章『要人警護は命がけ:依頼篇』
18/62

#16


さすがに2日連続は洒落にならない!

再び会社に向けて全力疾走中である。

まさかの寝落ちとは不甲斐ないにもほどがあるだろ!


ぜぇ、ぜぇ…はぁ……はぁ、うぐ


会社の前に着いた時には汗だくで喉がカラッカラになるほど乾いていた。

腕時計に目をやるとなんとか間に合ったようだ。

思わずガッツポーズを取りそうになったが自重した。

さすがにちょっと恥ずかしいし。

さて、会社についたはいいのだが様子が変だ。

誰も居ないかのように静かだ。いや静か過ぎる。

まさか今日は休みだったとか?

そんなの有りかよ、焦って来たのに意味ないじゃんか。

とりあえず帰るにしても喉がカラカラなので水でも飲もうと給湯室に向かおうとした時だった。


―パン!―パパン!


え、銃声!?

そんな事を瞬間的に思ってしまった。

ヤバい大分毒されているみたいだ。昔なら銃声なんて思いもしなかったのに。

突然の発砲音に動けない島崎の頭に紙吹雪が降ってきた。

辺りは少しだけ火薬臭い。

あれか、さっきの音はクラッカーの音か。


「「「入社おめでとう~♪」」」


いきなり現れた社員達に盛大に歓迎された。

部屋の奥にはいかにも手作りって感じの入社を歓迎するメッセージが掲げられていた。

どうしよう、俺もう泣きそうなんだけど。

なんていい職場なんだ。

辞めたいなんて言ってた自分を殴ってやりたい。

たしかに物騒な会社だけど…みんなええ人や!

突如として始まった歓迎会に考えを改める島崎だった。


昨日島崎が帰った後、稲葉や五十嵐をはじめ社員全員で話して決まった島崎の歓迎会。

当初の予定では入社初日に簡潔に執り行う予定だったが予定外の強盗事件に遭遇した為に予定が狂っていた。

当の本人も含め会社側も配属先云々の指示を忘れていた。

会社の創設者であり社員からボスの愛称で呼ばれている梶原薫社長も歓迎会の話を聞いた時


「そういや配属とかまだ話してなかったんじゃないかね」


と言っていたぐらいに…。


歓迎会が始まった当初、わらわらと寄ってくる女性陣の甘い香りに戸惑いつつも1人1人に丁寧に受け答えをする島崎。

今まで殆ど女性と会話してこなかった彼にとってどう対応したらよいかわからずとりあえず敬語で話せばいいだろうと若干ぎこちないながらもなんとか上手く対応していた。

もっとも本人は女性に囲まれ緊張していたので何を喋っていたかほぼ覚えていないのだが。


やっとの事で解放され一息ついていた島崎の所に梶原社長、いや我らがボスがやってきた。


「前の職場とはかってが違うと思うがあんたには期待してるからね、よろしく頼むよ」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


固く握手を交わす。

以外としっかりした手に島崎は驚いた。

女性でしかも老婆の手が以外にも力強かったからだ。

老婆なんて言うのは失礼に値するかもしれない。

思ったよりも歳では無いのかもしれないと思ったがそんな考えが伝染したのかボスからギロっと睨まれたのでそんな考えは払拭させる。


「そういや配属先をまだ言ってなかったね。五十嵐!」

「は、はい!」


社員をかき分けるように五十嵐がボスと島崎の所までやって来る。


「皆もお聞き!」


ボスのその一声で一斉にこちらを向き私語を慎む社員達。

よく訓練され…よく社員の指導が行き届いている。

やはりそこは軍事会社という事だろうか。


「初めは総合指揮室に配属する予定だったが気が変わった。五十嵐、あんたの班に配属を決めたからね。しっかり面倒見てやるんだよ」

「えっちょ…」


周りの社員達も驚いていたが1番驚いていたのは五十嵐さんだった。

というのも事前の情報では島崎は陸軍の参謀部所属だったという話から会社の中枢、つまり作戦立案や展開パターンの指示等を行う総合指揮室に配属されるものばかりだと全ての社員が思っていたからである。

島崎本人はすこしでも関わりのある五十嵐が同じ場所で働けると思い安堵していたがそんな彼の気持ちを他の者がしる由はない。


「いや、五十嵐さんと一緒になれて良かったです。安心しました」

「え!?なななななに言ってんだ、てめぇ!」


彼の一言で余計に混乱する五十嵐を横目で見ながら悪そうな笑みを浮かべるボスに誰ひとり気づいていなかった。


自己紹介も配属先の報せも一通り終わりそれぞれ自分の持ち場にもどり歓迎会は終了した。

島崎はそのまま五十嵐が隊長を務める第二警備班の詰所がある3階に向かった。

もちろん島崎は場所が分からないので五十嵐に先導してもらう形ではあるが。

詰所に着くまで五十嵐は

「なんで…」

とか

「何を考えているんだボスは…」

とか

「さっきの言葉って…」

とか1人ブツブツと言っていた。


とある部屋のまえで五十嵐が止まる。

部屋の表札には第二警備班と書かれたプレートの他にアジサイの花をあしらったエンブレムが掲げられていた。


「あの、これは?」

「・・・」


返事が無い、ただの屍のようだ。


「あの…五十嵐さん?」

「えおぁ!?な、なんだ?」

「これっていったい…」


部屋の前に掲げられたエンブレムを指さす島崎。


「あぁこれはうちの班章だよ。それぞれ班によって分けられてるんだよ。ちなみにうちの班は実戦部隊だから千華じゃなくて戦華だからな」


言われて気づいた。エンブレムの下に戦華の二文字が書かれている。

なるほど、実戦部隊だから千じゃなくて戦なんだね…え?ジッセンブタイ?


「あの五十嵐さん…実戦部隊って?」


恐る恐る聞いてみた。

聞きたくない答えが返ってこない事を祈りながら。

もちろんそんな祈りなど神様に届く訳でもなく恐れていた答えが返ってきたのだが


「読んで字のごとくだよ、うちらの仕事は要人警護とか現場での仕事がほとんどさ」

「………」


いい職場や!

なんて数分前に言ったけど、まさか。

まさかそんな所に配属されるなんてね!

武術の経験も無い俺がどうしてそんな危険な所に配属なんだよ!

内心焦っていると思いもよらない言葉をかけられた。


「まぁお前なら心配いらんけどな、これから宜しく頼むわ」

「ええ…頑張ります」


なにを根拠にそんな事を言うのかは分からないが、まぁどうにかなるかな。

重い足取りで第二班の詰所の中へと向かう島崎であった。


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