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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第3章『ここは軍事会社です』
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#13


―五十嵐SIDE―

事務所の方が騒がしいと思えば美咲の部隊や事務の連中が集まってんじゃねぇか。

さては新入りの様子でも見に来たんだな。


「おい、おめぇら自分の仕事は済んだのか?」

「いっ五十嵐さん!」


心底慌てた様子の部下連中は彼女が一括すると蜘蛛の子を散らすようにして元の場所に帰っていった。


おや?まだ誰か残ってるのか?

書棚の影から事務所の様子を伺うと新人と美咲がなにやら話しているじゃねぇか

あいついい度胸してやがるぜ。

これで報告書が出来上がってなかったらどうなるか…分かってやってんだろうな。

フッフッフと人の悪そうな笑みを浮かべる五十嵐。

その姿はとても女性とは思えないほど悪い笑顔だ。

さっと飛び出して驚かせてやろうと近づいた時だった。会話の内容が聞こえたのは…。


「五十嵐さんが怖いです…」


あの野郎!

人が居ないのを良い事に好き勝手いいやがって!

もともとてめぇが初日そうそう遅刻するのが悪りぃんだろうが!

せっかく見どころのある奴かと思って期待してたのに陰口をたたくようじゃ飛んでもねぇクズ野郎だったとわよ!


「あれでしょ?あなたも瑠璃の事を男と間違えてたんでしょ?」


なん…だと!?

男と間違えただぁぁ!

あのクソ新人は絶対に言っちゃいけねぇ事を言いやがったな。

人が一番気にしている事をぉぉぉヲォ!

怒りのあまりに本棚の淵をひん曲げてしまった。

それほど彼女は頭に血が上っていたし、我を忘れて怒り狂うほどその一言が彼女にとっては苦痛だった。

『男と間違えられる』

女性である自分への最大の侮辱だ。

確かに同年代の女性に比べ出るべき場所は引っ込み、出なくてはいい所は少々出ている。

体を鍛えているせいか筋肉質な体は一流のアスリートもしくはプロの格闘家を思わせるほど完成された肉体となったがその半面女性らしさに欠ける肉体となっていた。

ある意味では完成された肉体で羨ましがられるものだが、それが余計に彼女にコンプレックスを与える結果となってしまったがもう後の祭りである。

今更生活を変えるわけにもいかず日夜トレーニングを欠かさない彼女。

ましてやその男勝りな態度や喋り方、中性的な容姿の影響もあってかしばしば男性と間違えられる事も。

もっともそんな彼女をしたって複数の部下がくっ付いて回る事などこの会社では当たり前の光景となっているほど彼女は女性からの人気が高いという事も原因の一因であったりする。

彼女の取り巻きをナンパした残念な男性の一言が彼女に男性化を気づかせる事のほったんだったりするのだがその話はまた別の機会に…。


メラメラと怒りを燃やす彼女が近くに居る事など気づく事なく会話を続ける島崎と稲葉の両名。

だがこの後の会話を聞いて彼女の熱は別方向へと向かう事となる。


「まさか五十嵐さんを男性と?御冗談を、たしかにちょっと男勝りだとは思いますがあんな笑顔が素敵な人を男性と間違えるなんて失礼な事はしませんよ」


…………。

ちょ、ちょちょちょちょ!?

自分でも驚くほど顔が熱くなったのが分かった。

原因はあいつのさっきの台詞だ。

『笑顔が素敵な人』

一瞬誰の事を言っているのかと思ったが十中八九あたしの事だ。

生まれて初めて言われたかもしれない、そんな言葉。

部下たちからは毎日のように

「いつも凛々しくて素敵です!」とか

「いつ見てもカッコいいですです!」とか

「お姉様の為なら死ねる!」とか

褒め言葉(?)を聞かされてきたが、こんな気持ちになった事は今の今まで一度も無かった。

なんなんだこの感情は?

あれか?相手が異性だからか?

異性に褒められたら誰でもこんな感じになるのか?


先ほどまでの怒りは消し飛び、このなんとも言い表せない感情に戸惑う彼女。

まさか会話を聞かれているとも知らない彼に彼女はこの後どうやって接すればいいのか悶々と悩むのであった。


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