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今日から傭兵 -就職先は軍事会社でした-  作者: 蒼乃堂紋
第3章『ここは軍事会社です』
13/62

#12


給湯室で珈琲を淹れなおしながら現状を整理していた彼女は、自分の手が震えている事に驚いた。

いままで数々の修羅場をくぐり抜けて来たが今日ほど命の危険を感じた事は無かった。

なにが逆鱗に触れてしまったのか考えたが答えは見つからない。

だがやはり彼はここの会社には必要な人物だ。

あそこまで強烈な殺気を放てる人物はそうそういない。

いかに殺しのプロでも正面から彼に立ち向かう事は不可能と言っていい。

それほど強烈な印象を彼女は彼に抱いていた。


「まさか、ここまで大物だったとはね…」


精神を落ち着かせ、覚悟を決める。

まるでこれから戦地に向かうような気分になった自分の苦笑するしかなかった。

いままで数々の男を手玉にとってきた。

この体だって相当の自身がある。

なにより男の心を操るなんて簡単だと思っていた。

少なくとも今まで会った男たちは皆簡単に操れていた。

あの男に会うまでは…。

だから余計に彼に関心を持ったし、自分の虜にしてやりたいとも思った。

彼女が1人の男に執着するのは初めてかもしれない。

彼女自身そんな経験が無かったので自分の気持ちに気づくのはまだ先の話である。


珈琲を淹れなおし、事務室に戻るとさっきのは気のせいだったのかと思うほど

先ほどの空気は嘘のように消し飛んでいた。

なにがあったかは知らないけどこれは好都合だわ。


「面接の時いらいね。私の事覚えてる?」

「も、もちろんですよ」

「あら、嬉しいわ」


そう言って彼女は彼に最高の笑みを向ける。

その笑みは見る人が見れば


「地上に女神様が舞い降りられたぞ!」


とか言って発狂しそうな奴が現れそうなほど最高の頬笑みだったのは間違いない。

だがそんな事はお構いなしに彼は悩んでいた。

もちろんその頬笑みに見とれることなく無表情で。


うそでしょ!?

このあたしの頬笑みに対して無表情だなんて!


彼女が驚愕したのは言うまでもない。

あの頬笑みで落ちない男など今まで居なかったのだから。

だから彼女に非は無い。むしろ気づかない彼を非難すべきである。


落ち着くのよ私。

きっと気づかなかっただけよ、何も問題は無いわ。

そうだわ、緊張してるのよ。そうに違いない。

ここは上司である私がリードして会話し、緊張を解してあげないといけないわね。

そうすればきっと私の魅力に気づくはずよ!


「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私は稲葉美咲よ、これからよろしくね」

「今日からお世話になります!島崎宏一です!」


自己紹介をしたらいきなり立って敬礼されたわ。

職業病ってやつかしら。

上官に対する態度がきっと体に染みついているのね。

だから私に対しても壁を造っているのね。

そうよ、そう考えれば今までの行動に納得いくわ。

今まで私に靡かなかったのもきっとそれが原因ね。

そうと分かれば…。


「ふふっ。そんなに畏まらなくていいのよ。もっとフレンドリーに行きましょ」


そんなに畏まらなくてもいいのよ。

ここはもう軍隊じゃないんだからね。

するとどうだろうか。

若干ではあるが彼の雰囲気が柔らかくなった気がした。

内心ではガッツポーズをとる彼女。

あとひと押しって所ね。

軍人だって男なのは変わりないわ。


「初日はどうだった?」


あとは彼の活躍ぶりを聞いて、褒めて持ち上げるだけで完成!

今回はちょっと苦戦したけど私にしてみいればどんな男だって手玉にとれるのよ!


「五十嵐さんが怖いです…」

「え?瑠璃が…うふふふ」


強盗の件とは違う話みたいだったけどこっちのほうが都合がいいわ。

瑠璃の事だからきっとコテンパンにしてやったでしょうね。

いくら軍人だったとはいえ彼女の体術はかなりのものだし。

後は私がやさしく接してあげれば完璧!


「笑ちゃってごめんなさいね」


私とした事が思わぬ好展開に笑ってしまったわ。

さてそれじゃあ仕上げといきましょうか。


「あれでしょ?あなたも瑠璃の事を男と間違えてたんでしょ?」


さぁどんな辛い事があったのか、お姉さんに相談しなさい。

だが彼女が予想していた事とは別の答えが返ってきた。


「まさか五十嵐さんを男性と?御冗談を、たしかにちょっと男勝りだとは思いますがあんな笑顔が素敵な人を男性と間違えるなんて失礼な事はしませんよ」

「え?」


驚かずにいられない言葉が返ってきた。

彼女の計画は残念ながら振り出しに戻る事となる。


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