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初めて投稿します。
誤字・脱字・引用間違い等あればご指摘お願いします。
つたない作品ですが、宜しくお願いいたします。
薔薇色に輝く夢の21世紀。
車からはタイヤが無くなり宙に浮いて走るようになり、近所に散歩に出かける事が如く宇宙旅行が気軽に行ける。
明るく輝かしい未来が誰にでも待っている、そんな風に思って疑いもしない時代が私にもありました。
だが、実際はそんな事はなかった。
車が宙に浮く事などは無く、宇宙旅行など空想上の産物と言われるほどに庶民には手の届かない娯楽として存在する程度だ。
景気も回復するかと思えば今だに低空飛行を貫く始末で就活浪人が街中に溢れかえっている。
その影響か現在無職で家賃滞納中、貯金無の男が自分の境遇を嘆いていた。
先月から就職活動をしているが結果はよろしくない。
昨日も面接にいって惨敗してきたばかりだ。
あまりの惨敗ぶりに落ち込んでいると、その心境を表すかのように突然の雷雨。
突然の事に雨が降る中、傘も差さずに帰宅したせいか高熱を出し風邪で寝込んでいる。
かつて明るい未来に希望を燃やしていた青年の名は島崎宏一。
今は1人部屋で寝込んで孤独感が押し寄せて来るのを耐えていた。
見舞いに来てくれる友人や看病してくれる彼女なんていない。
独り暮らし、いやボッチであるがゆえの苦悩である。
あれ、なんだか眼頭が熱くなってきた。
目から汗が流れ始めたときだった。
ジリリリリン♪ジリリリリン♪
「こんな時に誰だ?」
無視しようかと思ったが一向に鳴りやまないので携帯を取る事にした。
「もしもし?」
「島崎さんのお宅でしょうか?」
「そうですけど、どちら様ですか?」
電話の向こうの声は女性だった。
生憎俺に電話してくるような女性の知り合いはいない。
まったく残念な事に。
「職業案内所の―」
どうやら仕事探しで利用させてもらっている職業案内所からの電話のようだ。
どんな条件でもいいので求人案内が来たら教えて欲しいと頼み込んだかいがあったようだ。
「求人の件でお電話させていただきました。急な話なのですが欠員が出まして、明日面接を行う企業がありまして」
「はい受けます!もちろん受けます!」
思わず飛び上がりベットの上で正座。
体のコンディションは最悪だが俺にも運が向いてきたようだ。
その後、面接の時間やら詳細を聞いて電話を切った。
そしてベットの上で拳を握りしめ決意を固める。
テンション上がって来たぁぁ!
勢いそのままに立ち上がり声高らかに宣言する。
「絶対にうかっ・・・」
立ちくらみがしたのか急に視界がぼやけ始め、足に力が入らなくなった。
そのまま糸の切れた操り人形にようにベットへと崩れ落ちる。
俺はそこで気を失った。
風邪で寝込んでいたのに無理をしてしまったようだ。
翌朝、眼が覚めた時に慌てふためくのは決定事項であった。
面接の時間までもう時間が無い。
昨日まで運が回ってきたなんて言っていた自分を殴ってやりたいくらいだ。
しかも不運な事は続けておこるものである。
薬を飲むように置いてあったコップを倒してしまい用意していた履歴書に水をこぼしてしまった。
おまけに風邪が完全に完治していないようでまだ熱っぽいし、頭がクラクラするし体が重いはで踏んだり蹴ったり状態だ。いや泣きっ面に蜂かもしれない。
え?どちらも似たような事だろって?細かい事はいいんだよ!
やはり俺は神様から見放されたようだ。
よし決めた。もう神は信じない。
もともと信仰深い方じゃ無いし、困った時しか頼らなかった罰があたったんだろうか。
いや、そんな事考えている余裕なんて無かった!
スーツを着るような余裕は無いというかまだ雨で濡れているのでとてもじゃないが着られる状態じゃない。
かと言って寝間着代わりに着ているこのジャージで行くほど勇気は持ち合わせていない。
服を選んでいる時間の余裕も無いと思った俺は壁に干してあった服を急いで着ると家を飛び出した。
普通のポロシャツにチノパン、正直面接には適さない格好だと思うがしょうがない。
これでも割と清潔な格好の方だと思うので良しとしよう!
いやそう思わないとやってけないってのが正直な所だけどね。
愛車に乗って目的地を目指す。
まぁ愛車といっても普通のママチャリです。
ちょっとだけ神様が味方してくれたのかなんとか時間ギリギリに目的地にたどり着く事ができた。
ついさっきまで神は信じないとか言っていたがもう忘れてほしい。
俺に味方してくれる神は信じる事にする。
両頬を叩いて気合いを入れ直し面接会場となっている会社の建物を見上げた。
『千華警備』
会社の入り口にはそう書かれた看板が掲げられている。
「千華警備か」
名前からして警備会社なのは間違いないだろう。
昨日電話もらった時点で会社名は聞いていたが面接の話を聞いた時点で他の話は頭には入っていなかった。
前の仕事をクビになって次の仕事先を探している時だって後半は仕事の内容を選ばずに手当たり次第に求人に応募していたし。
この不景気の時代に選好みしている場合では無かった。
警備会社の求人もあった覚えがある。
だからこの時だって不思議に思わなかった。
「俺、武術とか出来ないけど大丈夫かな」
若干の不安を抱きながら会社へと入っていく。
この小さな不安がやがて大きくなっていくのはもう少し後の話。