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引越し…紘之

 引越しを明日に控え空っぽになった部屋を見回すと、たくさんの思い出が甦った。

 

「早番だから二十一時には帰れるよ」

 

 半年前のあの日、彼女から連絡もないまま二十三時近くになり、迎えに行こうとしたところで、

「人が足りなくて抜けられなかった」と帰ってきた。

 前にも何度か同じことがあり心配するから連絡は入れろと言ったのに、歩いて十分の距離だからと電話をかける手間を惜しむ。

『仕事だからしょうがないでしょ』という的外れな言い訳が透けて見える謝罪に苛々が収まらず、「もう、いい」と部屋を出てしまった。

 一晩経てば冷静になり電話で仲直りしたが、なんとなく会いたくなくて遊び歩いていた。

 そんな時、離婚の際に父に引き取られた兄が失踪した。

 父は手広く事業をしていたため後継者が必要で、兄の代わりに、と相談された。

 今まで放って置いたくせに、と反発する気持ちもあったが『父に認められたい』という思いは強かった。

 だから、父の申し出を受け入れた。

 戸籍も家も変わる。大学に通いながら、会社のことも学ばなければならない。

 社会人の彼女に合わせていたけど、これからはそうもいかなくなる。

 だから別れるのは必然だった。

 何故かわからないけど、彼女に振られたことを必死に受け入れようとしていた。

 十年も一緒にいたから、思い出の品はたくさんあったのに、何一つ残さずに処分した。


 誕生日プレゼントのCD。

 バレンタインの手編みのマフラー。

 合格祝いの鞄。

 マンガ、写真集、小説。

 お揃いのフォトフレーム、ペアの指輪。

 アルバムも捨てようとしたら、母が奪っていった。

 

 一人ぼっちになってしまう彼女を心配な気持ちはある。

 でもしっかりものだし、きちんと生活していたから、自分なんかいなくても大丈夫だろう。

 俺は適当に遊ぶほうが性に合っている。

 少しの未練と、たくさんの思い出は、ここに置いて行くことにした。

お気に入り登録、評価、どちらもありがとうございます。

とても嬉しくて張り切って書いています。

でもちょっと落ち着いたほうがいいですね。

家族が夏休みなので、次話は火曜日更新したいと思います。

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