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引越し…郁

 最後に彼を見た日から、何がいけなかったのか考え続けた。

 彼の隣にいた女性はミニスカートに艶々の長い髪、女の私から見てもとても綺麗だった。

 いつもショートカットでノーメイク、Tシャツにデニムばかりの私が女性に見えなくなったのかもしれない。

 ……浮気じゃなかったのかな。私のことを忘れるくらい、あの女の人が好きだったのかな。

 父がいなくても、母と離れても、彼だけはずっと傍にいてくれると思っていたのに。

 酔っていたから。キスだけかも。私から謝れば。自分から別れたくせに、未練タラタラだ。

 でも、あのキスシーンが頭から離れない。頭の中が怒りでいっぱいになる。

 もし縒りを戻せても、いつもいつも疑ってしまう気がした。

 だから、もう忘れよう。

 

 そう決心したのに、なかなか好きな気持ちも辛い気持ちも消えなかった。

 

 眠れない日はお酒で誤魔化し、寝不足と二日酔いでボロボロになっていった。

 仕事でもミスが続き、シェフはそんな私を見かねてある提案をしてくれた。

 とある避暑地でレストランをしている長年の友人から『コックを紹介してほしい』と頼まれているから、行ってみてはどうか。

 新しい職場で心機一転するのも良い経験になるんじゃないか、と。

 私は仕事の忙しさでこの辛さが紛らせることができるなら、と提案を受け入れた。

  

 彼が小学三年生の時にアパートの隣の部屋に引っ越してきて、離婚で母子家庭という共通点から親同士が仲良くなった。

 学校では知らん顔していたけど、夜まで一人ぼっちの私たちは友達と遊んだ後はどちらかの部屋で一緒にいることが多かった。

 高学年になって料理を覚え始めると、ほぼ毎日、食事の支度をまかされるようになり、晩御飯は彼も一緒に食べていた。

 中学に入ると、顔が整っていて勉強ができてスポーツもそこそこの彼は人気が出て告白されることも増えていた。

 その頃、彼に対する気持ちが友情ではなく恋だと気付いてしばらく嫉妬に苦しんだ。

 中学三年生の修学旅行で、同級生から告白されて無理やりキスされそうになった時、助けてくれたのは彼だった。

 その時、お互いに好きだということがわかって付き合い始めた。

 高校も同じ所に通えたから、本当にずっと一緒だった。

 私は母から、

 

「養うのは18歳までだから。それ以降は自立して生きていって。」

 

 そう言われていた。

 不況で就職は難しいから手に職をつけようと考え、一番身近で、修行にお金がかからない調理師に決めた。

 近所のレストランで厨房の下働きとホールの仕事をさせてもらい、それを高校三年間続け、卒業後にコックとして採用してもらえた。

 母は高校卒業と同時にアパートを出て行った。

 彼は高校の途中から父親の援助で立派なマンションに引っ越してしまった。

 それに進学の目標が国立大だったから受験勉強が忙しかったり、進学後も毎日一緒にはいられないけど幸せな日々だった。

 

 部屋の中は、どこもかしこも思い出だらけで、ガラクタみたいなものでも捨てるのがつらかった。

 でも新しい部屋もそう広いわけじゃないし、未練はここで捨てていくって決めたから。

 彼にもらった物は一つだけ。

 付き合い始めて最初に貰ったプレゼントだけは一緒に連れていくことにした。

三日ぐらいで、と言いつつかけたので投稿します。

各話、文字数がバラバラですが大丈夫でしょうか…

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