電車での一時
ただ今俺は思考停止中。
「どうしたの?お代、払わないの?」
そう言われ、思考を戻す。
何でマスターがここにっ!?
いや、今は心を無にするんだ!
がんばれ俺!俺なら出来るっ!
「…」
俺は黙って立ち上がり、勘定を払う。
くっそ、まだ残ってんのに。
「あざーっしたー!」
おやじはよく分からないという顔をしているが無視。
俺とマスターは店を出た。
▽
「じゃあ、行きましょうか」
マスターはそう言って歩き出す。
「…」
亜須真は黙ってマスターの後を歩く。
「…」
「…」
気まづぃぃぃーーー!!!
何か、この沈黙が重い。
いや、周りは人がたくさん居てしゃべっていたり、
車などが走ってはいるが、
亜須真とマスターだけがその空間から切り離された感じがする。
…話かけてみるか。
覚悟を決め話しかける。
「あの…」
「何?」
「…なんでも無いです」
すごい低い声だった。
ごめん俺には無理。
そのままマスターの後ろを歩く。
しばらくすると駅が見えてきた。
切符を買うと改札口を通り、そのまま喫茶店方向の電車に
乗り込んだ。
電車の中、この両は縦にロングシートになっている。
さて、どこに座ろうかな…
だがマスターはそのまま次の両へ歩いて行く。
「どこに行くんですかマス…」
ついて行き、固まった。
「さあ、座りましょうか」
「…うぐ」
この両の席は、ボックスシートだった。
察しの通り2人が向き合う形のタイプだ。
マスターはすぐに座る。
「どうしたの?いらっしゃい」
状況的に回避は不可能。
亜須真はあきらめマスターの前の席に座った。
気まずい。
しばらくすると電車が動き始めた。
こういう時に限って周りに人が全くいない。
この状態で1時間…か。
ある意味拷問だな。
この際寝ようか?
などと考えを巡らせていると
「1時間あるのだし、お話でもしましょうか」
と、マスターが話しかけてきた。
…逃げ道塞がれた。
いいさ、何でも話そうじゃないか。
あんたのバストの大きさとかスリーサイズの話とかなっ!
緊張で思考がおかしくなりつつある亜須真であった。
「言っておくけれど、怒っていないから」
ならいっそこの場で胸を揉みしだいてやろうか!チクショーーー!
え…
「怒っていない…?」
「ええ」
確かに気付くと冷たい気配が消えている。
「でも、何で…?」
「今あなたにキレても意味ないわ」
それはそうだが…いいのだろうか?
って!
「何で俺の居場所が分かったんですか!?」
「ヒミツよ」
「即答!?」
「乙女には秘密が多いものなのよ…」
「…そっすか」
まあ、いいか。
変に詮索して痛い目見るのは嫌だからな。
「で、本当にキレてないんですか?」
「ええ、キレてないわ」
「ホントの本当にですか?
俺マスターの事だからてっきり…
縄で縛ったり、三角木馬に座らせたり、
蝋燭(ろうそく)の蝋をたらしたり、鞭で叩いたり、
そういう事をされるんじゃないかと気が気で!」
「…」
マスターが額に手を当てている。
「どうしたんですかマスター?」
「…あなたがどういう目で私を見ていたか分かった気がするわ」
「?」
「コホン。まぁそれは置いといて」
「置いとくんですか」
「黙りなさい」
「はい」
何故にいきなり命令口調?
「1つ質問するから答えなさい」
俺の目をしっかり見据えてマスターが言った。
こっからは真面目な話だな。
空気を読んだ亜須真は姿勢を正した。
「あなたは沙良のことをどう思っているの?」
「どう、思っている?」
範囲が広すぎる。
それではどう答えればよいか分からない。
「分からない?なら簡単に聞くわ。
あなたは沙良のことは好き、嫌い?」
俺の考えを読んだのか、質問を変えてくれた。
それなら簡単に答えられる。
嫌いな奴を助けるほど俺は甘く無い。
なのですぐに答えた。
「好きか嫌いかだったら好きですよ」
マスターは予想済みだったのか、
軽く頷いている。
「それだけ分かれば今はいいわ」
「?…そうですか」
マスターの考えが読めない。
いったい俺に何を求めているのだろうか?
だがそんなことは分かるハズも無く、
数分がたった。
▽
「そういえば店は大丈夫なんですか?」
本当なら最初に気付くべきことなのに気付かなかった。
キレられると思っていたので頭の回転が鈍くなっている。
「さぁ?どうかしらね?」
「は…?どういうことですか」
「どういうことって言われても、ねぇ」
ねぇ、と言われてもこっちは全然分からない。
「一応狭霧をカウンターに残してきたけれど…」
「さ、ぎり…!?」
狭霧麗子、例の変態だ。
あれをカウンターに残すとか…
「ちょっと、チョイス間違えてませんかソレ」
「んー、そうかしら?別に間違っているは思わないけれど…」
「何故に!?」
「あの狭霧よ。みんな迂闊に話しかけないと思うわ」
まあ、そりゃそうだ。
アレと話したら犯されかけるだろう。
主に精神面が。
「でも、任務は?」
「…忘れてたわ。あの子のことだったし」
あの子、彩月だよな。
マスターはどれだけアイツのこと思ってるんだろうか?
気になったにので聞く。
「マスターってどんだけアイツのこと思ってるんですか」
「え?そうね。あの子は家族みたいなものだから」
「ああ、いわゆる母親の気持ちってやつですか…」
「姉妹」
「え?」
「姉妹」
やばい、ちょっと地雷踏んだっぽい。
「そ、そうですね!妹を心配する姉って感じですよね!」
「そんな感じよ」
あ・ぶ・ねぇ。
今度から気を付けよう。
そんなことを思ったり、
色々話したりしていたら、
いつのまにか電車は目的地に着いていた。
はぁ、一応書き終えたけど…
実際手違いで2000字くらいのデータ消えたんですよ。
基本その場のノリで書いてるから最初と違うと思う。
そんなドジな自分に嫌悪。