愛すべき変態
電車が目的地の駅に着いた。
「降りましょうか」
「そうですね」
亜須真とマスターは電車から降り、
改札口とホームを抜けると外へ出た。
「さぁて、じゃあ俺は帰ります」
と、帰ろうとすると
ガシ!っと肩をマスターに掴まれた。
少し、いや、かなり強い力で…
「マ、マスター!?痛い、痛いっ!!」
もげる~(笑)
「あなたまさか、このまま帰るとか言わないわよね?」
「はい?帰ります」
ギリギリギリッ…
「痛いっ、いたいーーー!!!」
俺は何かマスターの気に障ることを言っただろうか?
…分かってるよ。
「冗談です。ジョークです。行きますって店」
「ならいいの」
そう言って手を離してくれた。
ちっ、冗談も通じねぇの…
「肩、へし折ってあげましょうか?」
「行きますか!」
マスターの目が本気だ。怖すぎる。
そういう事もあって喫茶店には早く着いた。
▽
カランカラン…と音を立て扉が開く。
店の中に入りながら亜須真は言った。
「うーん、土日だしやっぱり今日じゃなくても良くないですか?」
ささやかながらマスターに抵抗。
「MOONKILL」は平日も土日も関係無い。
組織の者は来たければ来て、
気分が乗らなければ年中休むことも可能。
実に適当なのだ。
中には組織に入ったものの1度も顔を出さない者もいるらしい。
本当に適当だ。
「早ければ早い方がいいじゃない」
「まあ、そりゃそうですけど…俺にも休日の過ごし方というものが」
「商店街で御好み焼を食べることが?ずいぶん暇な過ごし方ね」
「うぐっ」
やっぱりマスターには勝てないか…
あー、しょうがねぇ。面倒くさいけど、話ってもんを聞くか。
「約束をすっぽかしといて上から目線…ね」
「滅相もございません。あれ、でもいつ話すんですか?」
「閉店時間後、2階でどう」
「2階…ですか」
ここは2階建になっており1階はご存じの通り、
日本の「MOONKILL」の本拠地、喫茶店になっており、
2階はマスターが住んでいる…らしい。
そのあたりについてはあまり詳しくない。
俺は14歳、中学2年生の時に「MOONKILL」に入ったのだが、
1度も2階には行ったことは無い。
ちなみに中学からは退学処分を受けた。
中学で退学はそうそう無い。俺ってば凄い!
まぁ、学校側からすれば生徒が「MOONKILL」に所属していると
その生徒がいつ死ぬか分からないし、もし死んだら学校の評判が落ちるからな。
当たり前の処置だろう。
「って閉店まで待たせると?」
「ええ」
平然と「ええ」だと。
くっ、まあいいさ。未知の2階が見れるからな。
「待つのが嫌なら任務にでも行けばいいんじゃないかしら?」
「そっすね」
会話を終え、カウンターの前へ行き…
「やあやあ、今日は来るのが遅かったね!
でも遅くても来るという事はやはり君は私のことを愛していると、
そういう意味で受け取っていいんだね!
ふふ、なら事は急げとよく言うじゃないか…」
「…」
「なんだい?それも私に言わせるのかい?
全く君は初心だね。でもそういう所もいいんだ!
もう医療室でベットの用意は出来ている。
私に任せてくれていいよ。全てを私がリードしようじゃないか!
さあイこう!すぐイこう!一緒にイこう!
すぐにベットイ…」
「黙れ変態!」
ンまで言いかけた変態を止める。
てか、いくってどのいくだっ!?
「変態…ああ、君に言われるとその響きもまた…」
「マスター」
「この変態を技術室に持って行って下さい」と言おうとして振り返ると、
マスターは目を逸らし…
「大変ね(ボソッ)」
とつぶやいた。
「そう思うなら止めてくれぇぇぇーーーーー!!!!」
「私も彼女のことは苦手なの」
へー、マスターにも苦手なモノってあったんだ。
…何で雇ってんだマジでーーー。
「雇ったというより彼女が勝手に来たというか…」
「不法!不法なのかっ!?」
「でも道具や器具は彼女の自腹だし…私の所に専用技術者は居なかったし」
魅力的だったってことか…でも、でもっ!
「やっぱ、この変態は無理だっ。おいっ、変態そんな目で俺を見んな!
うお、近づくな!話しかけんなぁぁぁーーー!!!」
「あああ、いい、いいよ!もっと、もっと罵ってくれないか!
君に罵られるとゾクゾクするよ!」
髪の毛で顔が見えないから本当にこっちを見ているか分からないが、
凄まじくいやらしい視線を感じる。
「ふふふふふ、どうしてそんなにきつくコートを着込んでいるんだい?
ここは暖かいだろう。脱いでもいいんだよ。むしろ脱がないか?
ああ、1人で脱ぐのが嫌なんだね!
いいよ!私も一緒に脱ごう!」
「脱ぐなっ!」
自分の白衣に手を掛けた変態を全力で止める。
今ここでコートを脱ぐ訳にはいかない!
脱いだらハートが、ハートがぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!
「そういえばどうしてコートを脱がないの?」
マスターーーーー!そこは突っ込んじゃダメだぁーーー!
「自分で脱がない?ということは…私に脱がせてほしいのか!
いや、反応を見れば最初からそうに決まっていたじゃないか!!!
すまない。君のことは分かっていたハズなのに!本当にすまない!
この埋め合わせは、君を気持ちよくすることでっ!!!!!」
「違うからっ!!!」
その勘違いはやめろ!
「コートを脱ぐくらいならいいんじゃないかしら?」
マースーター、だからさー脱いだらハートがー
「いや、脱ぐのは遠慮します…」
それにコートを脱いだら羽目はずして暴走しそうなのが居るし。
「マスター」
変態がそう言うとマスターはあろうことか、羽交い締めをしてきた。
「マ、マスター!?」
「ごめんなさい。でもこうしないと私に危険が…」
「ふふふ、いいよマスター。さぁて、動かないでいてくれよ」
「マスター!俺を売ったのか!」
「あなたはいい緩衝材なのよ。…あきらめて」
「ぐっ」
「ふふふふふふふふふ」
手をワキワキさせながら変態が近づいてくる。
くっ、俺の貞操もここまでか!?
プチ、プチ、と変態がコートのボタンを外す。
「今日の君はどんな服を着ているのかなぁ」
そしてついに、コートが脱がされた…
ピンク色の服、真ん中に赤いハートマーク。
あぁ~、うー。
「あ、あなた。その服って…」
「ふむ」
マスターが若干引いている。
変態は…あれ、暴走していない?
「何だ変態!その反応は!」
自棄にになって叫ぶ。
「いや、遂にデレたと思って戸惑った。
…こういう場合どうすればいいのかな?」
「は?デレた?何言ってんだ?」
「いやいやいや、その服、少し昔に君の家に忍びこんで、
君のタンスの中に仕舞った服なんだけれども…」
「なっ!?」
俺の家に忍びこんだ?それって…
「お、お前っ!俺の名前知ってるのか!?
てか、この服はお前かぁぁぁーーー!!!」
「まあ、知らないとは言っていないからね。
それにしても本当、どうすればいいのかな?
私達は相思相愛だった訳だけれども…。
そうだ、そうだね!もうこれはヤってしまうしかないね!
お互い愛していたのだから戸惑う必要は無いよ!
さぁ、ヤろう。海藤亜須真っ!!!!!」
「ぐぶぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
変態に名前を呼ばれた。
威力は凄まじかった。
視界に外れでマスターがご愁傷様と手を合わせていた…
ネタが思いつかなかった。執筆が全然進まなかった。
これが噂のスランプってやつか!?
と、昨日までグダグダだった。
でだ!変態出したらネタが溢れ出してきた!
だからサブタイが「愛すべき変態」。
えっ、この小説が15禁の理由?変態だろ。