まわり道
ゆかりと颯太は、都内の一軒家に住む、若夫婦だ。最近、結婚したばかりで、新婚生活を、謳歌している。ともに、23歳同士だ。高校の同級生なのだ。
最近、引っ越してきたばかりで、近所のことは、よくわからなかった。ただ、隣の家には、独身の29歳の男性が、1人で暮らしていることだけは、わかっていたのだ。
隣の家に、ゆかりは、引っ越しの挨拶にいった。粗品を持って、インターホンを押したら、男性は、不機嫌そうに、出てきた。ゆかりは、引っ越しの挨拶を済ませると、そそくさと、自宅へ戻った。あんまり、仲良くは、できないかな、と、思いつつ。
次の日、ゆかりが、ゴミ出しに行った時、偶然、隣の家の男性、京介と、ばったり会ってしまったのだ。気まずかったが、挨拶を交わし、ちょっと世間話をした。そしたら、たまたま、同郷の青森出身だということがわかり、2人は、親しみを感じ始めていた。青森弁で、ふたりは、少し、話しをした。
家に戻って、颯太に、そのことを伝えた。颯太も、京介に、興味を、持ち始めていた。京介は、独身だし、今度、鍋パーティにでも、呼ぼうか?という話しになった。もちろん、ゆかりも、賛成だった。同じ、青森県出身者同士、仲良くなりたいと思っていた。
次の日、さっそく、颯太とゆかりは、京介のところに行き、日曜日、一緒に、鍋パーティしませんか?と、誘った。京介は、まんざらでもなさそうに、オッケーと、返事をしてくれた。
日曜日、お昼ごろ、京介は、訪ねてきた。
ゆかりは、一生懸命、料理を作っていた。颯太と京介は、青森のことを、いろいろ、話し始めた。3人とも、青森弁になっていた。お酒も、飲み始め、3人は、打ち解けてきた。
京介は、自分のことを話し始めた。大学まで、青森で暮らして、今は、IT企業に勤めていること。1年前に、離婚したことなど。颯太もゆかりも、興味深く、聞いていた。
鍋が出来上がり、3人で、おいしく食べていた。お酒も、どんどん、進んだ。地元、青森の話は、尽きなかった。時間も遅くなり、京介は、席を立った。颯太が、また、来てくださいね、と、言った。京介は、うなずいて、帰っていった。
颯太も、ゆかりも、いい人が、お隣さんで、よかったと思っていた。
次の日、京介は、昨日のお礼だと言って、菓子折りを、持ってきた。ゆかりしかいなかったのだが、ゆかりは、京介を、家にあげて、お茶を出した。世間話をした。
本当のところ、京介は、一目見た時から、ゆかりのことを、いいな、と思っていた。でも、ゆかりは、結婚しているから、あきらめざるを得なかった。
お茶を、ごちそうになり、京介は、自宅に戻った。自宅に戻ってから、ゆかりのことを、あれこれと、考えていたのだ。
そんな京介の気持ちを、ゆかりは知るはずもなかった。ゆかりは、颯太の帰りを待ちながら、夕飯のしたくをしていた。、
颯太は、今度は、庭で、バーベキューをすることにしていた。この間、ライン交換していたので、京介を、バーベキューに、誘った。京介は、断る理由もなかったし、1人飯よりは、楽しいから、行くことにした。
また、3人で、たくさん飲んで、バーベキューを、楽しんだ。颯太は、京介のことを、兄のように、慕い始めていた。ゆかりも、頼りになる、兄貴のように思っていた。
ときは、四月になり、颯太の会社に、大学卒の、女子の新入社員、みゆきが、入ってきた。上司から、仕事を教えながら、営業回りを、2人でするように、と、颯太は、言われた。常に、2人で、行動するうちに、颯太は、みゆきの事が好きになっていった。みゆきもまた、颯太の事が、気になり始めていた。お昼休憩も、2人は一緒だったので、いろいろ、話しをした。そうこうしているうちに、みゆきと颯太は、時間がかからずに、恋仲になっていった。
最初は、気づかなかったゆかりも、颯太が、毎晩の様に、帰りが遅くなってきたので、さすがに、おかしい、と、思い始めていた。でも、ゆかりには、直接、問いただす勇気は、なかった。どうしたらよいか、考えていた。
そんな時、思い浮かんだのが、兄貴の様に、思っている、京介の存在だった。ゆかりは、京介の家のインターホンを、ならした。京介は、ビックリした、顔で、「どうしたの?」と、聞いた。ゆかりは「旦那の帰りが、毎晩遅くて、仕事ではない気がするの。」と、言って、どうしたらいいか、相談した。京介は、ゆかりに、颯太のことを、信じるように、と、話した。
ゆかりは、京介に、話せたことで、いくぶん、スッキリしていた。
それからも、颯太は、毎日の様に、遅く帰ってきた。たまに、朝帰りをすることもあった。ゆかりは、耐えていた。もめたくはなかった。
そんな時、颯太のワイシャツを、クリーニングに出そうとしたら、口紅が、ついていたのだ。さすがのゆかりも、堪忍袋がキレてしまった。間違いなく、浮気してると思った。悲しかった。
翌日、ゆかりは、京介のところに行き、ありのままのことを話した。ゆかりは、京介の前で、泣いてしまった。京介は、それでも、颯太のことを信じてあげてほしい、と、優しい笑みを浮かべながら、ゆかりに言った。
ゆかりは、だんだんと、京介に惹かれていく自分が怖かった。自分の気持ちを、セーブしようとしても、止められなかった。ゆかりは、京介の胸に、飛び込んだ。
ゆかりは、自宅に戻ったが、涙が止まらなかった。
今度は、京介が、2人を自宅に招いた。焼き肉を、することにした。少しでも、仲が良かった時に、戻ってほしかったのだ。お酒も入り、3人で、飲んでいたが、颯太は、そそくさと、帰っていった。残されたゆかりは、片付けを、手伝った。
京介は、2人は、なかなか、難しいところまで、きてしまっていることを感じていた。なんとか、修復させたかった。2人は、とても、いい人達だと思っていたからだ。自分は、離婚してしまったけれど、2人には、別れてほしくなかったのだ。
ゆかりは、もう、颯太のことは、なんとも、思わなくなっていた。それより、京介の事が、気になり始めていた。颯太と別れてもいいと思っていた。
そんな矢先、ゆかりは、自分が妊娠したことに気づいた。病院に行って、ハッキリしたのだ。ゆかりは、こんな時に、できたなんて…と、思ってうろたえた。
颯太に、子供が、できたことを話した。颯太は、「俺たちの子どもは、あきらめてくれ。」と、平気な顔で、言った。ゆかりは、想定内のことだった。こんな状態で、産めるわけがない、と、思っていた。颯太と別れて、自分一人で、育てていこうと、思っていた。
ゆかりは、颯太に、離婚を切り出した。このことは、京介には、相談しなかった。颯太の答えは、「わかった。」のひと言だった。
翌日、離婚届を、出した。颯太は、荷物をまとめて、出ていった。
京介には、事後報告になったが、ゆかりは、離婚したことを話した。子供ができたことも、話した。一人で、育てていこうと思ってることも。
京介は、冷静に、話した。「もし、良かったら、その子の父親にならせてくれないか。」
ゆかりは、泣いた。「ありがとう。」「よろしくお願いします。」
京介とゆかりは、遠回りは、したけれど、初めて会ったときから、見えない糸で、結ばれていたのかもしれないと、思っていた。
京介は、ゆかりと赤ちゃんのことを、何があっても、守っていこうと、決心していた。




