未来の俺へ
【冬樹のバイト先】
「結局、一睡も出来なかった」
冬樹は欠伸を噛み殺す。
秋との動画を投稿直後から。
夏の動画が怒涛の如く流され。
「目がチカチカする」
春の強調点が目には優しく無かった。
お陰で、冬樹はモールス信号で救難信号を打て。
扇の知らなくて良かった意味まで理解できた。
「おつかれだね。冬樹くん」
何度目かの欠伸のところで、店長が出勤して来た。
「夏のせいで」
思わずぽろり。
「急に暑くなったせいかな。
夏バテかも知れないよ」
と店長が心配そうに冬樹を見る。
夏違いとも言えず。
なんとなくあいまいな返事で誤魔化す。
「そうか。そういや冬樹くん。
有給いっぱい余っていたよね。
そろそろ消化しないかい?」
冬樹は、一も二もなく頷いた。
【冬樹の部屋】
「という訳で、本来の休みに加えて。
4日間休みが貰えた」
宣言する冬樹。
秋『予約投稿が終わるまで少し時間があります』
秋の言葉に。
夏『一気に出さず、予約投稿は良い判断ね。
後出しだと言われても文句は言わせないわ』
ちょっと疲れたように、消しゴムにもたれた夏。
遠くでは、春がまだ大の字になって寝ている。
秋『現在、特定班と見られる動きを追跡中です。。
どうやら、四つほどの投稿者が。
候補に上がっているようです』
ちなみに、と秋が続ける。
秋『主様の動画は、候補ギリギリでしょうか。
やはり、恋愛物語が主体と見られているようです』
TENTYOOの得意分野ですし。と秋が締めくくる。
「比較動画も、数件のみ。
しかも、他のとの違いのやつか」
冬樹も、動画を確認する。
秋『お陰で、こちらが次々動画を公開しても。
視聴者数を稼げるのはありがたいです』
夏が身体をあげる。
いつものツインテールが、少し弱気に見える。
夏『お題はランダムだから。
これからは違う系統を作るべき』
冬樹は再び頭を抱える。
「じゃあ何作ればいいんだよ」
秋『では、過去に出たお題の系統を出します』
・恋愛
・笑い
・過去
・未来
・知識
スクリーンに表示される。
秋『基本はこのカテゴリ。
そこから分岐とみて良いようです。
例えば、複合で』
秋が、幾つか枝を出していく。
「恋愛ってあったか?今まで」
三姉妹が固まった。
無言で夏が扇を振る。
「本気でおっしゃっています?」
意味を読み解いた冬樹が首を傾げる。
秋『これまでの動画では。
むしろ未来の方が少ないです』
未来か。そう言えば。
「中に未来の俺への手紙が無かったか?」
秋が検索をかける。
秋『確かに、それらしきものはあります。
恋愛要素もありますが、出しますか?』
冬樹は、一瞬戸惑う。
「問題のない範囲で」
秋『では、要約しますね。
電車で目の合った君。
それが俺の未来の嫁だ』
夏が扇を口元に当てている。
春『秋、要約しすぎ』
多分こうじゃないかなと春が予測する。
春『目の合った君。
徐々に近づく距離。
好きだ!電車の中央で愛を叫ぶ。
私も!こうして二人は結婚』
冬樹は、最早ツッコミの糸口すら掴めず。
夏に目で助けを求める。
夏『ダメですわ。
ライバルが登場しませんと』
元の話、何処いった?
素直に手紙を公開するべきか?
【未来の俺へ】
この手紙を読んでる俺は。
10年後だろうか。
もしくはもっと先かも知れない。
隣に可愛い嫁が居るかも知れない。
それは、電車で会うあの子だろうか。
それとも、図書室で会うあの子。
いや、隣のクラスのあの子かも。
それとも予想外の相手かも。
答えを教えてほしい。
仕事は、配信者なんて夢を。
今でも追いかけているだろうか。




