坂巻晴磨
俺たちは、場を伸ばし続けた。
陸を越え、海へ。
やがて、地球を覆うまで。
蘇我さんのNEOを使って、全人類の記憶を集める。
そして、それを受け取った俺が過去の記憶を元に世界を再現する。
そして…ことなを甦らせる。
俺は、握りしめた左手を見下ろした。
これを開くときが…やっと訪れた。
俺は、ゆっくりと左手を開いた。
眠っていることなの意識を…呼び覚ます。
「…はるくん…?」
「ことな…久しぶりだね…」
「よかった…元に戻ったんだね…」
「ことな…本当に会いたかった…!」
「ことな…俺…ずっと謝りたかった…」
「今から、皆の記憶を消して、ことなも甦らせるよ…」
「…はるくんは?」
「…」
俺は、答えられなかった。
「へえ~はるくんは、私が他の人と結ばれてもいいんだ~私のこと好きっていったくせに、はるくんの私への好きはその程度だったんだね…」
「そんなことない!!!ことなが他の男となんて…絶対いやだ…!想像するだけでもう一回世界を滅ぼしたくなる…」
「ハハ、冗談だよ…でも、そこまでいってもらえると…ちょっと嬉しいかも」
「ことな…」
「…ねえ、晴磨」
「私は…晴磨のしたこと…正しいなんていうつもりないし、許す資格もないよ」
「でも…それでも、私には晴磨が大切だよ」
「…!」
「大丈夫、記憶が消えても…必ずまた晴磨のことを好きになって見せるから!」
「…うん…!」
「…そろそろ時間だ…」
「ことな…またね…!」
「うん!」
ー世界の再現は…成功した。
子供の頃見た、江東区の景色。
俺の身体も、子供の頃に戻っていた。
「晴磨!こっちこっち!」
そこには、ことなが立っていた。
いつもの公園で、いつもみたいに俺を呼んでいた。
「うん…!ことな…!」
俺は、溢れる涙を押さえ、ことなの方へ走っていった。
「ロア」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
俺は…たった一人の、大切な人のためだけに、世界を犠牲にした。
これは、償いとも言えない、ただの俺の独善だ。
俺の罪は…決して消えはしないだろう。
ロアは、完全には消しきれなかった前の世界の爪痕。
失った者は戻ってこない。
彼らの空きから来る矛盾が、新たな「ロア」を産み出すことだろう。
でも…それはもう俺の手を離れた。
俺たちの体と魂の繋がりは消え、NEOは消失した。
もう二度と使うことはできないだろう。
この世界に、もう発現者はいない。
俺はもう…ロアの外側に出てしまった。
「彼は…守れたんだな」
「独善か…さすが俺だな」
「ありがとう…ことなを救ってくれて…」
「ことな…」
「晴磨」は、静かに涙を流した。
いや、実際彼には涙を流す目すらもはや存在しなかった。
ただ、宇宙の片隅が、泣きわめくように震えた。
完結です。
ここまで読んでくださりありがとうございした。
次回は設定集となります。




