結束
「よぉっ、坂巻。元気か?」
「ああ…俺は大丈夫だ。そっちは?」
「俺か?俺はいつも通り元気だ!」
「まあ…お前は元気だけあるからな…成宮さんとはうまくいってる?」
「そりゃ~まあ~…咲喜とはラブラブだよ~近いうちに結婚するかも?」
「…よかったな。なあ、下野」
「うん?」
「俺と連絡続けてて大丈夫なのか?」
「…そんな寂しいこというなよ。俺たち友達だろ…?」
「NEOのこととか…お前にそんなことがあったなんて…最初は混乱したけど…そのあとも会えなくて寂しかったんだぞ?同窓会にも来やしないしよ…」
「…ごめんな。俺がいったら場違いかなって」
「そんなことないって!そうだ、咲喜と結婚することになったら招待状送るから、絶対来いよ?!」
「…わかった。じゃあな」
「…なんだかんだいってもいいやつなんだよな…」
あれから5年、世界は、特に日本は大きく変わった。
NEOや能力者のことが公になって世界は混乱に陥った。
科学界もひっくり返ったけど、やっぱり経済的、社会的影響が大きかった。
能力者を崇拝する新興宗教も現れる一方、能力者を恐れ、一時的に日本への旅行客が減ったり、移民する人も出てきた。
中には、一ノ瀬政権の「能力者狩り」を肯定し、能力者は皆殺すべきという意見も出てきた。
もちろん、人権問題になるからそんなことにはなるはずないけど…
その代わり、能力者に関する法律が多数制定され…今度は俺たちは法に基づく管理を受けるようになった。
そして、俺たちが行ったことへの法的な責任が問われると思ったけど…そんなことはなかった。
俺たちは、一ノ瀬政権に全ての責任を押し付けるフレーミングのための政治的な道具として利用され、恩赦された。
あまり釈然とはしないけど…
俺たちは自由になったように見えるけど…そんなことはない。
俺たちは常に国家の監視を受け、NEOの使用にも様々な制限がついた。
そして、NEO使用の衝動を抑えるために、監察のもとで定期的にNEOを使用し、欲求を発散する義務が課せられた。
まるで犯罪者のような扱い…能力者の危険性は否定できないし、わからないわけじゃないけど…あまり釈然としない。
あの日、江東区では何があったのか…
それは、政府主導の新物質研究だったらしい。
宇宙由来の未知の物質、「サンティウム」…
出所のわからないエネルギーを放ち続けるその新物質は、新たなエネルギー源になると期待され、日本政府はそれを独占するために秘密裏に研究や実験を行っていた。
あの爆発は…その実験の過程で発生した事故だった。
そしてその影響で生まれたのが、俺たち、NEO発現者…
「サンティウム」、「サンタ」から来てるんだっけ。
泣く子にはプレゼントをくれない悪い大人の象徴…意図はともあれぴったりだな。
そのとき、玄関のデジタルロックを開ける音が聞こえた。
「ただいま~」
「…おかえり、ことな」
「空は、どうだった?」
「うん…もうすっかりよくなったみたい。学校には通ってないけど勉強もしてるみたいだし…空ちゃん、頭いいからすぐに高校の卒業認定も取れちゃうかも。ハハ…」
「そっか…元気そうでよかったな」
「…はるくん、また髪伸びてきたんじゃない?」
「…そうだな。よく出掛けないから美容院にも行ってないし…」
「ちょっと…天沢さんみたいかも」
「…そうかな。確かに…」
今は亡き天沢さんの名前が出て、気まずい静寂が流れた。
「…ねえ、はるくん。私が切ろっか?」
「…ことなが?」
「うん!任せて」
「…じゃあお願いしようかな」
俺は椅子に座り、ことなが俺の髪を切り始めた。
正直…天沢さんのことはあまり思い出したくない。
悲しみとも、寂しさとも違う…申し訳なさに近い感情に包まれるから。
俺は目をつぶったまま、ことなに話しかけた。
「ねえ、ことな」
「うん?」
「高校のときの下野と成宮さんって覚えてる?」
「うん…はるくんの友達だったよね」
「その二人、結婚するって」
「へえ…よかったね。私は…あまり親しくなかったし…結婚式には行けなそうだけど…」
「まあ、でも呼んでくれるかも。それでなんだけど…俺たちはいつ結婚しよっか?」
「ええっ?!」
「ハハ、相変わらず可愛い反応だな…」
「もう…驚かせないでよ…鋏持ってるんだから、危ないでしょう!」
「ごめん、ごめん。まあ…でも、冗談じゃないよ。余裕はあるし…ことなのことは大好きだから」
「はるくん…もう…」
「ことなは、俺のこと好きじゃないの?」
「そんなこと言われたら…ずるいよ…私も…はるくんのこと、好き…」
「…ありがとう。まあ…でもそんなに急がなくてもいっか」
どんな世界になっても、どんな存在になっても…人は幸せを求められる。
今は…難しいことは一旦置いておいてもいいと思う。
ことなと一緒なら、きっと大丈夫。
今はそう信じていたい。




