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悲願

目が覚めたとき、目に映ったのは白い天井だった。


ここは…


「あっ、ことな、空!」


俺は、ベッドから飛び起き、慌てて周りを見回し始めた。


「あっ、はるくん!起きた…よかった…」


「ことな…そうだ、俺は確か気絶して…ここは…?」


「病院だよ。はるくん…5日も寝てたんだよ…もう…起きてこないんじゃないかって…」


「5日も…まあ、でもこの間よりは早く起きたんじゃないか?ハハ…」


「もう…そんな笑えない冗談やめてよ…本当に心配したんだから…」


「…ごめん…あっ、でも5日ってことは…!」


「…うん。私たちの勝ちだよ」


「よかった…」


しかし、嬉しい報告のはずが、ことなの顔はどこか曇っていた。


「空ちゃんも…助け出されて心理治療を受けてるって。でも…」


「…何かあったのか?まさか…!」


あのあと、真嶋さんの暴露が成功し、俺たちの拠点の山にも警察が押し掛けた。

内閣大臣たちも、特別監査を受けることになった。


まだ結果は公表されてないけど…恐らく全員の罷免は確実だろう。


でも…


天沢さんが死んだ。


天沢さんだけじゃない。


この戦争で…仲間が8人、死んだ。


能力者の存在が公になり、これからは法で守られるとはいっても…本当にこれを勝利と呼んでいいのだろうか。


俺たちは、これからどうなるんだろう…


本当に大丈夫なんだろうか。


「…蘇我さんは?」


「天沢さんの葬式に…」


「…そうか…俺も行かないと…」


「…だめ。しばらく安静にしてないとだから…」


「でも…わかった…」


葬式に行けなくて、惜しいと思うのが正しいんだろう。


それが、当たり前なんだ。


でも…俺が感じたのは、むしろ…安堵だった。


俺は、その場に相応しくないと思う。


俺は…天沢さんの死に大して悲しんでいないから。


悲しまないといけない場に、自分を無理に押し込まずに済んでよかった…とどこかで思う自分がいる。


…なんで、俺は悲しくないんだ…?


他の人ならまだしも、天沢さんとはたくさん一緒に過ごしてきた…


一緒に行動してきて、組織の中で一番親しい人だったんだと思う…


なのに、涙の一滴でも流れるどころか…俺はただ淡々と受け入れていた。


普通なら、心から悲しい気持ちが込み上げて、我慢するくらいに涙が溢れるものなんだろう。


俺はむしろ、悲しいと思おうとしても、どんなに頑張っても、涙が流れてくれなかった。


自分の体調を言い訳に、義務感で行きたくもない葬式にいかなくて済むことに喜びまでも感じている。


…俺は、どうしてしまったんだろう…


俺は、こんな最低な人間だったのか?


戦いの末に、心が壊れてしまったのか?


それとも…俺は元々こんなやつだったのか…?

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