第001话 新しい生活の始まり
どれくらい時間が経ったのか分からない。私は目を覚まし、目を開けると目の前に一人の男性――大叔が立っていた。私は警戒して体をすくめる。大叔は私が目を覚ましたのを見ると、穏やかな笑みを浮かべた。
「起きたかい、インプ」
「…………」
私が黙っていると、大叔はまた口を開いた。
「名前は?どうしてこの洞窟にいるんだ?」
「わたし、お母さんと一緒にここに逃げてきたの」
母のことを口にすると、大叔の顔には困惑の色が浮かんだ。私はきょろきょろと辺りを見回したが、お母さんの姿はどこにもない。頭の中に、お父さんが兵士たちに捕まり、壇上で殺された時のことがよぎる。もしかしたら、お母さんもあの人たちに……。そう思うと、涙がこぼれてきた。だが、この大叔は眠っていた私に何もしていなかったし、周りには魔物の死骸が散らばっているのが見えた。大叔も私の視線につられてそちらを見る。
「おお、危なかったな。もう少しでこの魔物どもに食われるところだったよ。魔除けの香はあるけど、中型以上の魔物にはほとんど効かないからな。異変を感じて見に来たら、お前を見つけたんだ。助けてやったんだぞ、小娘」
その時、洞窟の外からもう一人が入ってきた。
「ねえ、エリオン、この子どうするの?」
どうやらエリオンというのがこの大叔の名前らしい。
「仕方ないだろ。さっきの女がきっと母親だ。あの連中は精霊族と人族の兵士で、装備からして王宮の者だ。何があったのかまでは知らないが、服装を見るにこの子は王宮の者だし、精霊族の子どもだ。俺たちに拾われなかったら、魔物に食われるか奴隷商人に捕まって貴族に売られてただろうな」
私はじっと彼らを見つめながら話を聞いていた。
「しかも、けっこう可愛いしね。あ痛っ!」
女性が言い終わらないうちに、エリオンは手刀を食らわせた。
「子どもにまで手を出すんじゃない」
「はいはい。でもよく見ると、この子、瞳の色が左右で違うわよ?」
「えっ?ほんとだ」
その言葉を聞いて、私はじりじりと後ずさった。
「ああ、怖がらなくていいよ。私はナレア」
私が離れようとしているのを見て、ナレアが優しく声をかける。
「たぶんだけどさ、あの精霊族の第二王子の娘じゃない?昔、結構騒ぎになってたでしょ?」
エリオンが思い出したように言った。
「えぇ〜!? 第二王子の娘がなんでこんな場所にいるのよ」
ナレアは私に近づきながら言う。
「お前、情報遅すぎだろ。数日前、第二王子は謀反の罪で処刑されたんだよ。その女が王妃かもしれないし、この子は公開されていなかった、異なる瞳を持つ王女ってやつかもな」
ナレアはゆっくりと私に近づき、私も彼女を見つめ返した。彼女も私と同じ銀髪で、けれど肌は黒く、耳は私と同じ精霊の耳だった。
「ねぇ、名前は?何歳?」
ナレアは宥めるように私の頭を撫でながら聞いた。
「ソ……ソール、7歳」
「ソールちゃんね。私たちは冒険者だよ。この人がエリオン。私たちは冒険者パーティで、もう一人お姉さんが少し離れたところで洞窟の見張りをしてるの」
「おい、ナレア。誰がおじさんだ。俺はまだ21だぞ」
「はいはい。それでね、ソールちゃん、そろそろここを出るよ。長くいると危険だからね。これから一緒に移動するから、その間は動いたり声を出したりしないでね」
私はこくりと頷いて返事をした。
ナレアはそう言いながら私を抱き上げようと手を伸ばし、私も自然と手を伸ばして彼女にしがみついた。抱き上げたナレアは満足そうに笑い、エリオンの腕から離れた。私はナレアに抱きかかえられ、腕で彼女の首にしがみつく。エリオンは母が残してくれた包みを手に取り、私たちと一緒に洞窟を出た。
その後、私はナレアたち、そして途中で合流した綺麗なお姉さんと一緒に森を抜けた。そのお姉さんの名前はリシア。彼女たちは剣士、斥候、魔法使いの三人で構成された冒険者パーティーだった。洞窟を出る時、エリオンは私の目立つ白い髪と瞳を隠すために、自分のマントでぐるぐると包んでくれた。しかし町に近づいたところで――
「なあ、このままじゃ街に入る時の検問で、このガキの髪とか目が見つかったら面倒だぞ」
「そうだね、特にこの目は」
エリオンとナレアは困ったようにため息をついた。
「だったら、魔法で隠せばいいじゃない」
もう一人のお姉さん――リシアがさらっと解決策を言った。
「えっ! リシア、そんな魔法使えるのかよ!?」
エリオンが驚いて尋ねる。
「当たり前でしょ? この程度の魔法、余裕よ」
そう言ってリシアは魔法をかけ、私の瞳の色を茶色に、髪を黒色に変えてしまった。
検問所に着くと、兵士たちはエリオンたちを見るなり声をかけた。
「よう、エリオン。依頼帰りか? しかもガキを連れてるとはな」
「そうなんだよ、面倒くさいけどさ。まあ精霊族の子どもみたいだし、奴隷として売ればいい金になるだろ? ははは」
兵士とエリオンは笑っていた。あの瞬間、本当に売られるのかと思って震えた……
しかしエリオンたちは兵士と顔なじみらしく、無事に街へ入ることができた。私たちは宿屋に向かい、エリオンは冒険者ギルドへ報告へ。ナレアたちはというと――私をそのまま全裸にして浴場に放り込み、上から下まで洗われた。今思い出してもあまり良い記憶じゃない……
お風呂が終わって宿の食堂に戻ると、逃亡以来久しぶりのちゃんとした食事で、私はまるで野良犬みたいに食べ物をむさぼりついた。もはや王女の礼儀なんて欠片もなかった……
食事の後、部屋に戻ると、ナレアはベッドの上で私を膝枕して頭を撫でてくれた。残りの二人はソファに座っていた。ちなみに、リシアお姉さんはおとぎ話に出てくるような魔女帽子をかぶっていて、巨乳でスラリとしたスタイルの人族の女性。エリオンは黒髪短髪、顎髭のたくましい人族の男。ナレアは魔族と精霊族のハーフらしい。
「で、これからどうする? ソールを教会とか孤児院に預けるの?」
「だろうな。私たち冒険者は各地を回るし、ずっと子どもを連れて歩くわけにもいかん。危険も多い」
その言葉を聞いて、私はナレアの服をぎゅっと掴んだ。
それに気づいたナレアが言う。
「ねえ、いっそ私たちでソールを育てちゃえば? 依頼のお金も当分困らないくらいあるし、三人で旅しながらソールにも教えて、ソールも冒険者にすればいいじゃない」
「うん……それも悪くない。ちょうど弟子も欲しいと思ってたし」
リシアが頷く。
「だけど、この子は多分指名手配中だぞ。森で兵士たちに捕まってないし」
「そんなのリシアの魔法で隠せばいいじゃない。誰も気づかないよ」
「……わ、わかったよ」
二人の女性に押し切られて、エリオンはうなだれた。私は疲れと悲しみで、いつの間にか眠ってしまった。
――こうして、冒険者ソールフィの生活が始まった。
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初めての小説なので、拙いところも多いと思いますが、ぜひコメントを残していただけると嬉しいです。改善していきます!
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