摂氏232°
それは、知識の燃える音
変だ。と思った。
それは、今脳波で流れてきた自殺者のニュースもそう。我々全員に入れられた刺青も、鏡の所持に対する刑罰という風習も何か、変だ。と思った。
「なんでそんなことするかね」
「そりゃ旦那」
ンメーラヤヒ店主が話しかけてくる。
「そりゃ旦那、いじめですよ」
「我々にいじめなどないだろう」
「そりゃ旦那、貧乏ですよ」
「金なら誰にでも、腐るほどあるだろう」
「そりゃ旦那、餓死ですよ」
「食べ物がないほうがおかしいだろう」
「そりゃ旦那、鏡を見て頭がおかしくなったんですよ」
「おまえは誰だ。おまえは誰だ。ハッ! 焼身自殺をするなんて、ちげぇねぇや。ごっそさん」
段階中空を下ってゆく。そのうち、地下についた。
今日は、続接道動自の機嫌が悪いらしく、先ゆく道はどんどん暗くなっている。
続接道動自に脳波を送る。どうした? 故障か? 接続された道が嫌に暗いぞ。
その時、きらり、と暗闇で光るものに気が付いた。
俺は何か本能的な恐怖を感じ、恐る恐る近づく。
「か、鏡だ!」
俺は、慌てて口を押さえる。鏡が壁に立てかけられていた。
「通報……」
通報は直ぐに済んだ。脳波一つで、すぐに駆け付けてくれる手筈になっている。
これで俺も無関係、というわけだ。
しかし、なぜかもったいないような気もする。
もう二度と出会えない。相手が鏡とはいえ、逃してしまってよいのだろうか。
俺は恐怖に対する好奇心から、鏡を見ることにした。
鏡というのは、自分の姿が映るという魔力を持つらしい。
それがどういうものか、とても気になる。
喘ぎ喘ぎ、喉渇き。とくとくと、心臓の音がする。
躙り躙り、どきどき。キャア!
総毛立つ。不道徳な行いを見つかった、と思った。目が合ったこれが自分?
───なんと愛しい形をしているのだろう
事情聴取は直ぐに終わった。家のベッドで今日あったことを思い返す。
それにしても、鏡で見た自分の刺青、何かに似ている。
気が付いた。
パッと飛び起き、地図を取り出す。
「そうか! この刺青、実は地図だったんだ!」
この赤い点のところに宝なり何なりがあるかもしれない。とりあえず俺は、視察することにした。
俺は夜中にひた走る。鏡の時以上にわくわくした。
現地に着くと、建物があった。
「ここだな!」
中に入ってみると、真っ暗だった。
ガラガラガラ!
大きな音を立て扉が閉まる。
「お、おい」
ぽん
火が点く。
体にも付く。燃え上がる。
「うわぁあちぃあちぃ!」
どうやら、不従順な人間は要らないらしかった。




