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馬術については、俺も一通りの知識を持っていた。
何を隠そう学生時代には馬術部に所属し、基本的な技術と知識は持っていた。
それがこんなところで役に立つとは思ってもいなかったが。
俺は厩舎へ連れて行かれ、自分のものとなる一頭と初めて対面した。
俺の背中にはサヤがあり、物干しざおほどもありそうな長いヤリが刺されている。
正直に言えばヤリなど、手にするのはもちろん、目にするのさえ初めてだったが、イノシシ隊長から軽く見られるのもシャクだから、何でもない顔をしてやった。
ヤリがずいぶんと邪魔で動きにくいが、なんとか馬の背にはい上がると、イノシシ隊長が口を開いた。
「ようし、ヤリを構えろっ」
「なあ隊長、ヤリを構えて、俺は何と戦うんだい?」
ここでイノシシ隊長は笑ったのだ。
「知らなかったのか? お前は魔狼と戦うのだよ。一角とは魔狼を退治する仕事だ。森には近頃、人食い魔狼が出るのでな」
とんでもない職場にまぎれ込んだことにやっと俺も気がついたが、もう遅い。