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 5回、6回と、俺と雪華は体をぶつけあった。

 そのたびにヤリの穂先が挑み、雪華の毛をかする。

 もちろん雪華も、それにやられることはない。

 1度か2度は、雪華がアオの背に乗って来もした。

 だが、すかさず俺がヤリでなぎはらう。

 魔性の物を目の前にして、なぜこれほどの勇気が出せるのかと自分でもいぶかしむほどだった。

 俺と雪華の鬼神がかった戦いぶりに魅入られ、他の連中は体を動かすことさえできなかった。

 そしてついに雪華が、俺を森のさらに奥へといざなったのだ。

 雪華が前を行き、アオは後を追おうとした。

 オレンジ色の炎に包まれた茂みの向こう側へと進もうとした。

 ここで突然、俺は気がついたのだ。自分が炎に囲まれかけている、ということに。


「ええい、なんとかなるさ」


 自分でも気づいていたが、俺にはどうも楽観的過ぎるきらいがある。

 俺とアオが雪華と共に火中に姿を消した後、他の一角たちは馬にムチをくれ、あちこちに火傷をしながら逃げ出すのが精一杯だった。

 森と砦は、そのまま完全に焼け落ちてしまった。

 翌朝には黒々とした一面の燃え残りと灰、焦げた大地以外は何もなかった。

 イノシシ隊長は部下たちに命じ、もちろん焼け跡を捜索させた。

 しかし部下たちは、不思議な報告をしたのだ。


「雪華の死体がどうしても見つかりません」


 だがこれには、イノシシ隊長もあまり驚かなかったようだ。


「まあそうだろうな。なんといっても魔性の物だからな」


「それだけじゃないんです。アオの死体は発見できました。でもあいつは……」


「まさか、あいつも見つからないのか?」


 と、今度はイノシシ隊長も目をむいたかもしれない。


「死体どころか、ヨロイのカケラさえありません」


 その後、俺の姿を見た者はいない、とイノシシ隊長は王都に正式に報告した。


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