表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

15


 もちろん、黒華の形見が炎に焼かれることはなかった。

 驚くほど大きく、しなやかな物体が群れの中から突然現れ、房飾りを追ったのだ。

 口を開き、牙を巧みに用いて、歯の間にとらえた。

 雪華だ。

 体長は他の魔狼よりも一回り大きく、尾は魔女の髪のように長い。

 毛は透き通るように白く、その姿には俺もため息をついたほどだ。

 しかし、やはり雌であるということか、黒華ほどの巨大さはない。

 それでも他の魔狼たちを従える威厳を、雪華は充分に備えているのだ。


「おやおや、お前があいつの姉貴か? ザコたちを下がらせろよ。俺たちだけでやろう」


 首をかしげ、俺はアオの鼻息に耳を澄ませた。


「アオもそう言っているぞ。お前も女王なら数に頼まず、勇気を見せたらどうだ? サシの勝負といこうや」


 例のイノシシ隊長。

 隊長にまで上り詰めたからには、やはりただ者ではない。

 機を見て逃す、ということはなかった。

 俺の声を聞き、すぐに部下たちに命じたのだ。


「森に火をかけろ。ザコどもには目をくれるな。丘を取り囲む形で、雪華が逃げ場を失うように燃やせ。やつの退路を断つんだ」


「そんなことをしたら、あいつ(俺のこと)も逃げ出せなくなります」


 しかしなんと、真っ当な疑問を述べる部下を、イノシシ隊長はブン殴ったのだ。


「俺の知ったことじゃねえ。魔狼の牙から森人を守るのが一角の使命だ。雪華は魔狼どもの女王だ。雪華を倒すしか方法はねえ」


「でもあいつは?」


「雪華は、あいつが黒華を殺したと、なぜか知ってやがった。人語も分からないはずの獣だが、見ろ」


 イノシシ隊長は指さした。

 今しも丘の上では、雪華と俺がにらみ合っていた。


「雪華の目を見ろ。青黒い炎が燃えてやがる。あれはただの獣じゃねえ。魔性のものだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ