ベランダの戯れ言
今まで、スマホやテレビゲームばかりをし、人類のあり方というのに気がついていなかった自分がいて、その一つが夜空を見上げることと僕は思った。
人間という生き物は、大切なことを知る前に、様々な事に触れすぎている、というカラクリに気がつくのにどれだけの月日を要しただろうか。
ただ、ベランダに立ち、首を上げて、星々や月を見る。たまに椅子を用意しては寒空の下目を閉じてただただ、生活音に耳を傾ける。それだけの事なのに、なぜだか部屋に戻るときは清々しい気持ちで、夜もぐっすり眠れる。
何を今までしていたんだろうかと自分を嘲笑した。
別に今までが悪いわけでもないし、これが正しいかとどうかなんてわからない。少なくとも、その人にとって正解はあって、それがどの人にも当てはまるかと言ったら、図々しい話だ。それこそ娯楽なんてこんなに溢れていない。
ただ、何か一つだけ選ぶとするのなら、僕は月が見たい。
何の変哲もない、ただの戯れ言だ。
人生から目を背けたくなる程苦しい生活に終止符を打つのも自分。未来に希望を持つのも自分。
「たかし、ご飯だよ」
僕は目を開けて、渋々立ち上がる。
「もう少ししたら行くよ」
「もう少しっていつよ」
「そうだな……あと五分だよ」
言うと、母は階段を降りていった。
今日は曇っていて星なんて見えやしないが、あの雲の上はたいそう綺麗なことだろう。そういう想像をするべく、再び、僕は目を閉じては、オリオン座を思い浮かべ、三日月を添える。何もないからこそできる楽しみ方だ。
瞼を開くと、もちろんそこには真っ黒い雲だけで、空には何一つ描かれていない。
きっと、さっき想像していたのは僕だけのキャンパスに描いた、配置が適当の星達であって、これもまた正解などない。
自由で良いのだ。
転がっている正解や間違いなどは無視しよう。
今日くらいは。




