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一本の木の枝
ある国の王様が、愛する娘の結婚相手を探すために御触れを出しました。
翌日からというもの、城にはたくさんの人々が詰めかけましたが、
その数が多すぎて誰を選ぶべきか判断に困った王様は、
次のように条件を変更しました。
「この世で誰も見たことがなく、
誰も知っていない珍しいものを持ってきた者に、娘を娶らせよう。」
ところが、翌日になってもたくさんの人々が城を訪れ、
それぞれが珍しい宝石や海の底から引き上げた秘宝など、
ありとあらゆるものを王に献上しました。
しかし、いくら珍しいものであっても、
人々の間で知られているものや似通ったものばかりで、
これという決め手には至りませんでした。
そんな中、城で働いている庭師の息子が、
季節の実がなった一本の枝を差し出し、王様にこう言いました。
「命あるものに、一つとして同じ形の物はありません。
この枝に実った果実もまた、一つひとつが異なります。
中を見れば、その違いがわかることでしょう。」
その言葉に心を動かされた王様とお姫様は、
庭師の息子こそがふさわしい相手であると感じ、二人は結ばれたのでした。




