いつもの帰り道
同じ時間、同じ景色。変わらない日常。
「あ〜、終わった〜。」
今日も仕事が終わるのが遅くなった。最近いつもこの時間に仕事が終わる。
「帰らないと。」
いつもと同じ帰り道。この時間に帰るのが日常になっていた。きっとこのまま何も変わらず日々が過ぎていくと…
「あれ?」
ふと、違和感があった。変わらない筈の景色が違って見えた。
「…う〜ん。」
何か違う気がする。何が違うのだろう。
「…あぁ、そっか。」
今日は私一人で帰っている。いつも友達と帰っているから違和感があるのだろう。
(本当に?)
「え?」
誰かが言った。周囲には誰も居ない。
「…誰?」
誰も応えない。怖くなって私は携帯を取り出そうとした。
「あっ、鞄忘れた…。」
うっかりしていた。手に何も持っていない。きっと仕事場に忘れて来たんだ。
「…こんな日に限って。」
私は怯えながら周囲を見渡す。今の所、何も起きない。でも、違和感だけはあった。夕日が差し込むこの帰り道で、一人で帰る事がこんなにも不安になるなんて、
(本当に?)
「…え?」
また声が聞こえた。でも今度はその声より気になる事があった。
そうだ、私は、
ーーあの時、ちゃんと鞄は持っていた。
「なんで?」
一度も忘れた事が無かった。それが今日?いや、確かに持って会社を出た。あの時はちゃんと持っていた。
「あれ?」
その時気付いた。
ーー此処はどこだろう?
「だ、誰か!」
同じ景色に見えるのに、
「…どうして?」
誰も居ない?こんな大通りで?
「…異世界?」
きっと私は迷い込んだ。同じ景色の全く違う場所に、
「…家に帰らないと!」
きっと出口はある。私は必死に出られる場所を探す。いつ迷い込んだかは分からない。何故私が異世界に…異世界?
(…本当に?)
「異世界?」
違和感が拭えない、確信が持てない。でも何処からか聞こえる声が、はっきりと私の言葉に疑問を持つ、今の自分は何処に迷い込んだのだろう。
(……本当に?)
何が、一体何が
(………本当に?)
此処は、
(………此処は本当に貴方の知らない世界?)
「…え?」
私の横を誰かが通る。
「…えっ、何で?」
私の友達、会社の関係者が、私の横を素通りする。
「……あぁ。」
その先には、
「…そっか。」
「私…死んだんだ。」
沢山の人に見送られながら私が何処にいるか確信を持った。
私が帰るのは家では無い。
私が帰るべき世界はあっちの方だ。
「…還らないと。」
いつもと違う帰り道、それに気付いた時、貴方はもしかしたら……