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隣人の死体 後編


読む順番は、『隣人の死体 前編』→『隣人の死体 後編』→『隣人の金庫 1、2』 でお願いします。 



⭐︎この小説のポイント⭐︎


なんといっても、この小説の四つの部分で、完全な「起承転結」が成立しているということ。


「起承転結」反対主義者の私であるので、この「起承転結」狙ったものではない。


ということは、狙ってないということは、これまでの創作活動の結果、体質として、何かが形成された結果とみる?


ということは、「起承転結」の構成が頻繁に、これ以降の作品に登場すると思うが、それは、決して狙ったものではない。



* *


このオペラ、『パンドラの匣』から着想を得て、つくられたという話、今知った。


なんだか誇らしい!


* *


オペラ『ルル』の本を読んだ。『ルル』の副題に、「パンドラの箱」が出てきた、はっきり書かれている。


ルルという女性が、関わる人たち、関係者が、次々に死んで行って、最後は。。。という話なので、ルルという女性が、『パンドラの匣』の「パンドラ」という女性と、パンドラの箱の二役を担っているということ。たぶん。


(手前味噌、自画自賛)『ルル』というオペラ、見方によっては、オラの小説によく似ているwww


ついでに言うと、『ルル』というオペラ、完結していない、草稿どまりのオペラと思っていたが、未完結でも、けっこう独り歩きできるオペラではあり、未完でもベルクの最重要作品。


     ☆     ☆



平賀源内が考えたとされる「起承転結」の例文サンプル


「京都三条糸屋の娘 姉は十八妹は十五 諸国大名弓矢で殺す 糸屋の娘は目で殺す」


 


希美のぞみは、不思議な女であった。


希美は、この町では、とても顔が広い。町の主要な行事では、かならず顔を出しているというか、姿を見せている。



希美は、この地域では顔が広く知られ、いわば有名人であった。


しかし、希美という女が、実際に、どこどこにすんでいる、どこどこでどういうふうに働いている、希美という女は、これこれという人物であると、分かっている人間はいるのだろうか? 


つまり、希美という女の正体を知っている人間は、いないか、いたとしてもほんの数人に限られている。


希美は、結局はいつこの町に流れ着いたのかもよく分からないような、つまり、この町でよく見られるタイプの誰も知らないような、正体不明の人間の一人であった。


しかし、そうは言うものの、希美は、一見、怪しいところはない。


そんな女にしては、この土地に馴染み、貧乏くさい雰囲気はないし、胡散臭くもない。


もちろん、希美は、成金趣味とは無縁の暮らしぶりだったのだが。


そして確かに、希美は不思議な女であった。



* *



希美は、「風吹探偵事務所」の入っている雑居ビルで殺人事件が起こった直後、町のボスに呼び出された。



町のボスは、名前をNAKAMURAという。



街のボスのNAKAMURAは、毎晩悪い夢ばかり見ていた。


「至急、事務所に来てくれ。今回は一週間待たせるなどということはしないでくれ」


この町のボス、NAKAMURAは、希美にそう頼んでいた。



希美にとっては、NAKAMURAからの用事というのは、実入りのよい仕事であった。つまり、金になった。


しかし、NAKAMURAという町の有力者は、よりによって希美という女に力を借り、重要な用事を依頼する必要があったのか?


このNAKAMURAというのは、この町の世話役を自認している男である。


しかし、NAKAMURAという男、ボスと言うには、手下というか、NAKAMURAが面倒を見ている社員というか、子分というか、ものを頼める人間の数は彼の周りに少なかった。


というのもNAKAMURAというのは、その気質というか、性質の特徴として上げれば、人に口だしされたり、意見されるのを極端に嫌う男であったからである。


そして、そこから派生した気質であるのか、NAKAMURAがさらに最も嫌ったのが、見も知らない人物から意見されることであるということがあった。


NAKAMURAの場合、知人や家族には意見されても、なんとか言い返すことが出来る。


しかし、他人に意見されると、激昂は頂点に達し、言い返すより、相手に説明すればすむようなことでも、つい手が出てしまうというふうに怒りを抑えられない。


そういう自分の弱点に、このNAKAMURAという男は気づいていた。


かりにも、NAKAMURAは、分別のあるこの町の世話役という言い方をしているのだが、ようするにこの町のボスであると言うことだ。


分別のある人間は、NAKAMURAでなくとも、ことあるごとに、いさかい、喧嘩が起こるような事態は、あるいはそういう状況は絶対に避けるべきである。


ということで、NAKAMURAは多くの仕事を抱えてはいても、可能な限りは、気心のしれた身内のチームで取り組むことにしていた。


NAKAMURAは、たいていの事は自分の身内で仕事をこなしていた。


それで、手に負えない場合には、希美などの信頼していた人間の力を借りた。



このNAKAMURAという男は、自分のチーム外の人間であったとしても、例外的に、正体不明ではあるが自分の認める希美という女の力を借りた。


NAKAMURAという地元のボスと希美という女、この二人はどのようにして互いの存在を知るようになったのだろう?


これは、少しおかしな話ではあるのだ。というのも、NAKAMURAと希美は、同じ町で暮らしていても、日常的に交流があるわけではない。


しかし、NAKAMURAは希美と話をするときに、同士とでも言わんばかりに、自分たちのことを「われわれ」という言い方をよくした。


「われわれ」とは、つまり、NAKAMURAと希美のことを指していた。


NAKAMURAという男は、希美に対して、昔、えらい世話になって、希美に対してはそれが借りになっているなどと言う話があった。例えば、希美がNAKAMURAの命の恩人か何かであったらしい。


たしかに、そういう噂がいくつかあった。


しかし、NAKAMURAと希美の年齢差は大きく、二人の生活圏が接する部分はほとんどなく見えるところから、希美が、NAKAMURAの恩人だと言うのは、普通には無理があるように思えた。


つまり、そういう、噂が立つほどに、NAKAMURAは、希美を大切に扱っていたと言うことなのだろう。


実は、さらに、驚くべきうわさがある。


これもまた、NAKAMURAが、知人に話したところによるのであるが、希美はある種の術というか、技というか、そんなたぐいの物を操れるというのとなのだ。NAKAMURAが言うには、希美というのは、一種の魔法使いだというのだ。


そういえば、希美については、不思議な話は、これだけにとどまらない。


これも噂によれば、希美には、不思議な怪力があるという。NAKAMURAは、希美に世話になったときにこれを知ったと言うことであった。



これらのすべてのことは、あくまでも噂に過ぎないのであるが。。。


NAKAMURAの希美に対する信頼は、このような妄想をNAKAMURAの周辺にも生み出したのであった。



* *



NAKAMURAのいやな予感の元となった悪夢は当たってしまった。


まずは、ひとつの殺人事件が起き、この殺人事件の騒動の中心に、NAKAMURAは巻き込まれてしまったのだ。


殺害されたのは、NAKAMURAの会社の金庫番の河瀬という男であった。


NAKAMURAにとって、殺人事件の関係者というのは、これは乗っ引きならない、というか手に負えない危険な事態であった。



NAKAMURAは、思った。


「本当の問題はこんなもんじゃない。俺の心も身体も最悪の状態にしてしまったのは、あまりの事態、それは、俺にとっては、あまりの偶然、思いもしないタイミングで、悪夢の中で、本当のことを知ってしまったためなのだ。悪夢のおかげで、あのなにかの力が、密かに、俺が恐れていた何かの力が、すでに俺に迫って来ていることに気づことになったからだ」


NAKAMURAは、見を見開いた。



「これは、絶対に希美に話しておくべきこと!」



* *




NAKAMURAが希美に連絡を取って、希美がNAKAMURAの事務所に現れるまで、一週間ほどの時が過ぎていた。


その間に、NAKAMURAが恐れていたことが起こってしまった。


悪夢は、あの殺人事件が起こったあとも、続いていた。


希美がNAKAMURAの事務所に現れたとき、NAKAMURAは、茫然自失の状態で、酩酊しているかの様子であった。NAKAMURAは、酒を嗜むことはなかったはずなのだが。


NAKAMURAは、本人が言うには、悪夢との戦いで憔悴しょうすいしていたということだ。



「いま、取り組むべき問題は、もっと大事な問題! 思っていた通り」


希美は、つぶやいた。



NAKAMURAは、希美のぞみが事務所に姿を見ると元気を振り絞るように、言った。


「あそこに殺人事件の騒動の中、俺が行ったらとんでなく悪いことが起こる。そんな予感がしてならないんだ。俺は、警察にこの事件の関係者として、目をつけられ、しかも、一日中、みはられているんだ」



「しかし、それを、アンタに行かせようというのはとんでもなく図々しい考えと思われるかもしれないが、アンタには、俺にないお守りがついているんだ。あんたは、何かの力に守られている。俺は、そう確信している」



「本当にすまないが、今、俺が頼れるのはアンタだけなんだ」


???


くれぐれも、思うのだが、これは不思議なことであった。


NAKAMURAという男について言えば、



NAKAMURAは、人に恩を売ったりはしない男である。


金にならない仕事を人に頼むこともしない。


しかし、NAKAMURAは、人に仕事を頼むことがある。それは、おそらく、NAKAMURAがにっちもさっちもいかないくらいに追い詰められたときだろう。


NAKAMURAは、めったに人に用事を頼むことはしないのだが、今回の希美の頼んだように、関係のない人間、部外の人間に仕事をたのむことはないことはないのだ。



NAKAMURAが思うに、この用事が出来る人間は、めったにいない。どう考えても、NAKAMURA自身が期待している成果をあげる能力の持ち主は、希美以外には考えられなかった。


実際、この用事を頼めるのは、今は、希美だけなのだ。



これは、一方的であれ、NAKAMURAが思っていた本心であった。


* *



希美は、NAKAMURAの依頼した仕事を受け入れた。


希美は、NAKAMURAが提示したひかえめな額の報酬についても受け入れた。


それは、客観的に評価した場合、知る人たちには、希美のお人好しの度が過ぎるというふうにも見えた。




* *



話は前後するのだが、NAKAMRAが見た悪夢について、語っておく必要がある。それは、それは、不思議なものだった。


NAKAMURAに対して、殺人事件を予告した悪夢も勘違いしていた悪夢について少しばかり書いておこう。???


NAKAMURAは、めったに夢を見ないのだが、それでも、たまに夢を見る。


そして、子供の頃からそうである。NAKAMURAがたまに見る夢は、悪い夢ばかりなのだ。


NAKAMURAは、悪い夢を見ると、その悪夢のためにうなされ、ひどく寝汗をく。ひどく、なにかに取り憑かれたようにも見えた。


最近NAKAMURAが見た夢なのだが、その悪夢は、NAKAMURAが生涯に見た夢の中でも、最悪、最低の夢であった。



その悪夢の中のことだが、NAKAMURAは、NAKAMURAやNAKAMURAが仲間たちを動かすために欠かすことの出来ない要素である、資金源を失ってしまったのだ。


NAKAMURAは、夢から覚めて、その悪夢を振り返ってみてた。


自分がそのような困った事態に追い込まれてしまったのかその理由は悪夢の中ではぼんやりとしか分からない。



悪夢は、しょせん悪夢に過ぎないと言ってしまえば、根も葉もないものだと考えてしまえば、確かにそのようにも思えるのだ。



ただ、その悪夢の元となる一つの不安が、悪夢の原因と思われるものが、NAKAMURAの心の中には生まれており、確かに心の中にあった。



NAKAMURAが悪夢に悩まされることになった原因は何か?



それは、風吹がふたたび町に戻ってきたと言うことであった。


風吹という男は、訳あって、しばらく前に、自分からこの町を出ていった。


風吹という男が、町を出て行ったというのは、まさにNAKAMURAにとっては、望んでもないほどの厄介払いであった。


その風吹が、町を出てから幾らも時が過ぎていないというのに、また、町に舞い戻ってきたというのだ。


風吹が町に戻ってきたという情報が、NAKAMURAの耳に入ると、とある覚悟をきめた。


やはり、風吹はとんでもない秘密をどこかで、嗅ぎつけてしまったのだ。


それは、しかし、NAKAMURAにしてみれば、いつも遅すぎに見えた。


風吹というやつには、それが出来る境遇にいた。


風吹は、いつも大事なことを見落としていた。


NAKAMURAは、風吹のある種の、鈍感さに助けられていた。


NAKAMURAにとって手強い敵として、風吹はNAKAMURAの前に現れた。



風吹は、町に現れるとNAKAMURAに嫌みな攻撃を仕掛けてきた。



風吹は、この町に戻ってきてすぐに、自分の名前をつけた『風吹探偵事務所』という探偵事務所を開いたのだ。


しかも、町に舞い戻ってきたその探偵事務所の場所ときたら、NAKAMURAにとっては、こともあろうに、あの男の、あの事務所の隣に位置する、一室であったのだ。



あの男とは、この町のドン、NAKAMURAの金庫番として活動している河瀬という男のことであった。



金庫番の河瀬は、NAKAMURAの事務所の資金を管理を担当していた。



NAKAMURAは、NAKAMURA自身の金を秘密裏に、自分野この事務所に保管して、合法、非合法な取り引きのための資金あるいは裏金として、金庫番の河瀬が管理していたのだ。


実際に、河瀬の事務所には金庫番と言うにふさわしい立派な金庫があったという。


今回の事件において、河瀬の死体は、河瀬の事務所の中で発見された。河瀬は、ひどく暴行を受けいた。


河瀬の事務所にあったはずの立派な金庫が、中身の現金や書類やお宝と共になくなってしまっていた。


警察は、現在のところ、事件についていかなる見解も公式には表明していない。



* *



希美は、NAKAMURAの用事を、安い報酬で快く引き受けてくれた。


NAKAMURAは、立派な金庫を失い、NAKAMURAは、希美に十分な報酬をあげたくともあげることができなかった。


NAKAMURAは、希美を用件のために送り出すにあたって、伝えておくべきことが沢山あったのだが、NAKAMURAの頭の中は、希美に伝えるべき大事なこととは何か、十分に整理されていなかった。



ただ、望美に、NAKAMURAが伝えたかった事。それは、そのときに起きている事件が、おおよそを、NAKAMURAが、すでに、何かしらの予知によって、あるいは虫の知らせによって知っていたということだということ。つまりは、この世界にある現実は、自分たちが生きている現実は、「生み出されつつあるもの」ではなくすでに起こってしまったことなのかもしれない。


NAKAMURAは、希美に理解してもらいたかったし、伝えたかった。



NAKAMURAは、この既成の現実という発想から、今回の盗難事件と殺人事件について考え、それらのことが始終頭から離れなくなっていた。


しかし、NAKAMURAは現在のところ、一時的に、予知的な告知を受けることがなくなってしまった。NAKAMURAは、希美にとって役に立つような、まともな情報はなかなか手に入らなかった。


そのために、NAKAMURAの頭の中は不安でいっぱいであった。


「取り越し苦労?」そうだ、今のわれわれには、分かっていても、未来に起こることは分かっていても未来は変えられない。



NAKAMURAの金庫番の、河瀬の風吹が事務所を構えてすぐに今度の事件が起こってしまった。



NAKAMURAは、こんなことは当然起こりうる事態だと考えて、その非常時に備えて準備は十分にしていた。


しかし、盗難と殺人事件は、起こるべくして起こってしまった。


あの力がNAKAMURAの、身近に迫っているということも変えられぬ現実にNAKAMURAには思われた。



* *



希美は、NAKAMURAの用件を果たすために、まず、NAKAMURA中村の事務所を出ようとしている。


NAKAMURAは、そんな希美を引き止めた。


「ところで、望美さん、何をやるのか分かっているのかね?」


希美は、NAKAMURAのほうに振り返ると、一定のトーンの安定した話し方で答えた。


「これから、街のハズレの神社に向かいます。神社には『幻戒のほこらに向かう道を発見できるはずです』」


希美は、さらに続けた。


「『幻戒のほこら』は、この世界での私達の旅のはじまりの場所でもあります。NAKAMURA、覚えてますよね」


(要するに、希美は、今度の事件について、自分なりに調べを済ませておいたのであった!!そういうふうに、風吹は希美の言葉から察した)





fin





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