リングアンドの冒険者たち

　ここではないどこか。今ではないいつか。剣を振るい、魔法を放ち、己の腕前を頼りに、日々の糧を得る。あるいは挑むのは、強大な敵か、深遠なる迷宮か、闇に潜む大いなる謎か。危険と共に浪漫に満ちた、そんな世界に、俺はいつだって憧れてきた。

　つまらない毎日を飛び出して、冒険の世界に飛び込みたいって、確かに思っていたことは否定しない。

　けれども、じゃあなんの前触れもなく、そんな世界に着の身着のまま放り出されるなんて、これはもうたまったものじゃない。もう少し導入を優しくしてくれたってよかろうに。せめて言葉は通じるようにしてくれるとか。

　それでも俺は、やっぱり憧れは捨てきれないらしい。

　申し遅れたが、この物語は、20代の半ばにして異世界に転移してきてしまった、俺……早瀬田陸人と、その仲間たちの冒険譚である。読んでいるのが、日本人であることを切に願っている。