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e01-04『旅先で見る海はなぜかテンション上がる』

「えぇ!! 迷子なんですか!?」


 シロエが驚きの声を上げる。


「俺もコイツもド田舎の出なもんで、この辺の地理がさっぱりわんねぇんだ。実は今どの辺りに居るかも全然分かってなくて……」


 ローガンが困った笑顔で答える。


 歩き出してから20分程経っただろうか。



 余計な事を口走らないよう、基本的にローガンが話し、俺がそれに相づちを合わせるスタイルだ。


 ローガンによると、俺達は遠く東の田舎出身で、世界を見て回る放浪旅行の途中……という"設定"らしい。


「時に嬢ちゃん。そのローブ、中々の代物だろ。あれだけの攻撃の直撃を受けてその程度のダメージってことは……かなり強力な法術が込められてると見たが。金糸の刺繍もかなり手が込んでる」


「あ、これですか? これは……随分昔に頂いた物なんです。値打ち、とかは分からないですけど、凄く気に入っててずっと着てるんです。所々ボロボロですけどね。そう言えば……お二人は変わった格好ですね」


 そう言って俺を見るシロエ。



 変った格好とは……パーカーにジーパン。バイト帰りで部屋に居たんだから仕方ないだろ。


 そのままの恰好で異世界に飛ばされた。セレアのご加護かいつの間にか靴は履いている。


 一方のローガンは、黒いパンツに白シャツ。黒いハットを深々と被っている。


 いや、あんたの方は時間あったんだから何か異世界っぽい恰好しとけよ!!



「まぁ……東方の普段着だよ」



 そんな2人の他愛の無いやり取りを交えながら林に挟まれた古い街道を歩いていると……遠くから何か音が聞こえてきた。


 車輪……の音だろうか? ガタガタと木材の揺れる音。


 馬の足音のような……地面を蹴るリズミカルな音。


 それに――人の声。



 道を進む程、それらの音達は段々と大きくなり、やがてはっきりと聴こえてくる。



 薄暗く細い林道を抜けると、俺の目に真っ先に飛び込んできた景色……




 ――遠く遠く遥か水平線まで続くコバルトブルーの海




 あまりの青さに空との境界線が一瞬分からなくなるような、そんな見渡す限りの青い世界が目の前に広がっていた。



「やっと出れた!! ――アラスクル海道!」



 シロエが、この景色に負けない程の爽やかな声を上げる。




 ずっと林の中で気付かなかったけれど、自分達が海岸沿いの高台に居た事を知る。



 林を抜けるとそこは立派な街道になっていた。


 車2,3台は余裕で通れそうな大きな道。その路面には真っ白な石が丁寧に敷き詰められている。



 道の片側――俺たちが出て来た側はずっと林が続いている。



 もう一方の海側は歩道になっており、路面と同じ白い石で出来た石垣が、崖沿いに延々と続き行き交う旅人の安全を確保している。




 そんな街道を賑やかに行き交う旅人達。


 ……その姿形を見て、自分が異世界に来たことを改めて実感する。



 金属の胸当てと膝当てに、首には赤いマフラー。

 腰に細身の長剣を携えた、いかにも旅の剣士と言った男性。


 ショートパンツにタンクトップ。

 腰には何やら色々な道具の入った皮袋をぶら下げている、元気そうな女の子。

 シーフ……がこんな所に堂々と居る訳ないか。アーチャーや格闘家だろうか。


 もっと目立つ格好の女性も歩いている。

 胸元がばっくり空いた、露出多めの白いドレス風の上着。そのスカートの裾は短く、ニーハイソックスにショートブーツ。

 羽織ったストールには豪華な黄金の刺繍が入っており、それが海風になびいてキラキラ美しく輝く。

 そんな彼女の頭上には……2つの突起物!! これは! 日本男児の憧れ! 兎耳女子である! 兎獣人の魔法使いかっ!?



 他にも、上半身裸で大剣を担ぐゴリゴリマッチョな巨漢の男性。


 背中に大きな麻袋を担いで歩く……小人族の商人と思しき集団。



 沢山の、そして見たことのない格好の人々が賑やかに街道を行き交う。




 ……人だけじゃない!


 ガラゴロガラゴロと、車輪の付いた荷台を引いて勢いよく走り抜ける動物が何頭も行き交うが、そこには馬や牛のような見慣れた動物は一頭たりとも居ない。


 サイのような出で立ちだが長い垂れ耳、大きな2本の牙が特徴的な大型の動物。


 キリンのような長首だが、フサフサとした体毛が美しい中型の動物。


 背中付けた鞍に人を乗せて素早く走る、トカゲのような動物。


 様々な動物達が、その所有者と思しき人々と共に街道を駆け抜けていく。




 シロエが駆け足で街道に躍り出る。


 行き交う人々を避けながら車道を横断し、海沿いの石垣まで辿り着く。



 海に向かって気持ちよさそうに深呼吸し、こっちを振り返っり手招きする。


 俺とローガンも人にぶつからないよう気をつけながらシロエの元に辿り着く。


 3人並んで石壁にもたれ掛り海を見つめる。



 海鳥の声が響く。


 カモメによく似た声だがこれも知らない鳥なんだろうか。


 潮の香りを含んだ海風が頬を撫でる。少し冷たいが寒いという程ではない。


 何とも爽やかな光景だ。




 シロエは額に手を当て眩しそうに日光を遮る。


 そして俺の方を見ると、出会ってから1番の――とびきり元気な声で街道の先を指さす。



「見て! あそこに見えるのが――『貿易と美食の街"アーシア"』」




 緩やかに高度を下げながら海にむかって続いていく街道。


 その先に大きな街が見える。



 港には沢山の帆船が停泊し、そこから続く街並みは、白い壁、赤茶色の屋根で統一されている。


 そんな家々が所狭しと並んでいるが、街中には所々緑が生い茂っており景観に配慮されたかなり発展した都市みたいだ。



「へぇー!! 美食の港街かっ! 美味い魚に酒でもあれば言う事無しだな!」


 横でローガンがワクワクした声を上げる。



「私もアーシアは初めてですが、確か世界有数の葡萄酒の産地ですよ!」


 シロエがにこやかに答える。



「おぉ、そりゃ楽しみだ!! 魚に白ワイン、ツマミにオリーブでもありゃ最高だなぁ!!」


「わ、ワインに、オリーブ? ですか? あまり聞いたことのない食べ物ですね」


「え? 無いの?」


 そんなやり取りをしながら街の入口へと続く石畳の坂道を足取り軽やかに進んでいく。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


▷『アラスクル街道』

 貿易と美食の街"アーシア"へと続く海沿いの街道。

 元々アーシアへ続く街道は鬱蒼とした森の中を抜ける道しか無かった。

 旧街道は道幅が狭く、魔物や野盗の襲撃も多いためアーシアの人々は長い間頭を悩ませていた。

 そこで一念発起したアーシア自治会は、商工会、騎士団らとも連携し海沿いに新たな街道を作る事を決意。

 10年以上の歳月を費やし、5年前ついに完成したのが"アラスクル街道"である。

 アーシア周辺の山で多く取れる真っ白な"白雲石(びゃくうんせき)"は、加工のし易さの割りに高い強度を誇り、何より海風に強いという特徴が街道の建設にぴったりだった。

 白雲石で出来た白い街道と空と海の青の対比が美しく、今では街道自体が景勝地として行き交う人々の目を楽しませている。

 皆さんも、アーシアへ寄った際は是非近くの丘まで足を運んで頂き、この美しい街道とアーシアの街並みを堪能して貰いたい。

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