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e01-02『人気の無い小道には入らないようにしましょう』

 少女に手を引かれ、暫く走ると森を抜け小道の様な所に出た。



 舗装はされていないが、地面の一部が踏み固められておりそこが道であることが分かる。


 車ならギリギリ2台すれ違えるかどうかという道幅。


 周囲に人影は無い。おそらく寂れた街道かなんかなんだろう。



 俺の手を引き前を走る少女が、一瞬振り返る。



 片側だけをやや長めに伸ばした前髪が風になびく。


 少しツリ目気味で涼しげな印象を受ける大きな目。


 その瞳は灰色……いや、銀色か?


 夜を照らす満月のように、少し妖しくも淡く儚い雰囲気を醸す少女だ。


 歳は同じくらいだろうか?



 また直ぐに前を向いてしまったので一瞬しか見えないかったけど……



 ――すんげぇーー可愛い!!



 可愛いと美人の丁度間くらいの人形みたいな顔。



 さすがファンタジー世界というべきか!


 整いすぎてて若干現実味が無いまである!




 そんな事を考えていると、再び彼女が振り返り今度は一瞬俺の顔を見る。


 目が合う。


 そしてすぐまた前を向く。



 一瞬目が合っただけで心臓が高鳴る。


 もっとも今高鳴ってる鼓動は、さっきから続いている全力猛ダッシュのせいかもしれないが。



 暫く走り続けた後……。


「そっち! 隠れて!」


 そう言って街道脇の茂みの中に俺を引きずり込む。



 息を殺して、敵に悟られないよう気配を断つ。


 いや、そんなアサシンみたいな技能は無いがとにかく静かにすべきだろう。



 辺りを伺う。……人の気配はしない。

 どうやら追手は撒けたみたいだ。



 茂みから少しだけ顔を出し周囲を見渡す少女。

 確認が終わると、少女は握っていた俺の手を離しこちらに向き直る。



「えっと……あなたが誰で、何処から現れて、何で私を助けてくれたのか、色々とよく分からないけど……助けて貰ったんだからまずはお礼! ありがとうございます。お陰様で助かりました」


 そう言って深々とお辞儀をする。



「でも……いくらなんでも危な過ぎ! 見たところ、武器も持ってないし、本当は魔法使いってのもウソなんでしょ!? いくら野盗とは言えあの人数相手にハッタリだけで立ち向かうなんて無謀過ぎだよ!」


 そう言って、少し怒った顔で俺の目を覗き込んでくる。


 顔が近い。


 いい匂い。


 ……あ、ヤバい可愛い。



 そんな俺の頭の中を見抜いたのか、はたまた顔に出てたのか、少女の目が少し険しくなる。


 透き通った銀色の目に見つめられ慌てて切り返す。


「ご、ごめん! 邪魔するつもりは無かったんだけど、……ほ、ほら! 女の子のピンチを見過ごすとあっちゃ俺の騎士道に反する! みたいな?」


 ははっと笑ってごまかしてみる。


「えっ!? あなた何処かの騎士団の人?」


 そう言うと少女は慌てて俺から離れて立ち上がる。


「う、うそうそ! 冗談というか言葉の綾というか……あ、俺の名前はカナト! 遠江(とおのえ) 叶途(かなと)


「冗談で騎士の身分を名乗るとか……騎士団にバレたら本当に冗談じゃ済まなくなるわよ。……それにしても、変わった名前ね。東方の出身……?」


「えぇっと……東方と言うか何と言うか、凄く遠い所と言うか……」


 俺が答えあぐねていると、少女は両手をパタパタと胸の前で振った。


「あ、ごめんごめん! 別に詮索するつもりじゃないの! ……とにかく助けてくれてありがとう。私は――」




 その時――


 突然乾いた破裂音が響き、茂みの向こうから何か光る物が高速で飛来。


 そして茂みに背を向けて立っていた彼女の背中に直撃する!!


 直撃した物体は1メートルほどの火柱と黒煙を上げる!


「グッ……」


 小さな声を上げ、少女が膝から崩れ落ちる。



「おー!! 当たった当たった! 中々の威力じゃねぇか」


 茂みがガサガサと揺れ、人影が現れる。


 さっきの野盗集団の男だ。



 その手に握られているのは……大型の拳銃…!!


 あんまり詳しくないが、映画とかで見るリボルバー式と呼ばれる種類のハンドガンだ。


 その銃口から細々とした白煙が上がっている。


「さっきはよくもやってくれたじゃねぇか! まさかこんなガキが詠唱無しで魔法ぶっ放してくるとは思わねぇからなっ! ……痛かったぜ……!」


 男の頭部からは血が流れ出ている。


 しかしそれ以外に目立った外傷は無い。


 ガサガサ……。

 茂みの中から次々と男達が現れる。


 皆腕や足に傷を負っているがどれも致命傷とはなっていないようだ。


「さーて、ここまでやっちまったからにはもう穏やかに、とはいかねぇな。まずは……男にゃ用はない。悪いが兄ちゃん……死んでくれや」



 倒れて動かない少女を横目に、男は銃口をこっちに向けながら、一歩、一歩と歩み寄ってくる。


 逃げなきゃ……!


 分かっちゃいるが足が動かない。


 人が撃たれるのを初めて見た!

 いや、銃自体見たのは初めてだ!!


 少女の方を見る。


 地面に倒れたままピクリとも動かない。


 その背中からは黒い煙が上がっている。



 精一杯腕と足に力を入れ後ずさりする。


 男はずいずいと距離を詰めてくる。



 数歩ぶん程後ずさった所で背中が何か硬いものに当たって動けなくなった。


 背後を振り返ると大きな木が立っている……絶体絶命!



 男との距離はどんどんと縮まり、2,3歩の距離まで来た所で立ち止まる。



 銃からカチャ……という金属音が聞こえる。


 銃鉄を上げる音…?


 よく分からないが、俺を殺す準備が整った音なのは間違いないだろう。



 銃口がゆっくりと俺の頭に向けられる。


「じゃあな、通りすがりのヒーローさん」


 そう言って男がトリガーに手を掛ける。


 その動きから目が離せない。


 その僅かな指の動きで自分の命が終わる。


 恐怖で思考が停止しているのか、ただその動きがやけにゆっくり目に焼き付く。


 それに対して体は恐怖でぴくりとも動かない。


 ダメだ、死ぬ……!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


▷もし人気の無い場所で野党に襲われたら。

荷物を置いて一目散に逃げましょう。

金目の物さえ差し出せば、それ以上追ってこない事が殆どです。

 しかし、そのような事態に遭わないためにも、街から街の移動は大きなキャラバンに同行するのが1番! 本書では実績豊富でかつリーズナブルなキャラバンをいくつかご紹介します。巻末の特別付録をご覧ください!

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