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異世界トラベルエージェンシー ~宿敵も魔王も居ない平和な世界で異世界ガイドブック作り~  作者: アーミー
第2章 【貿易と美食の街アーシア】 〜夕赤の天使と若き騎士〜
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e02-03『知らない土地の高そうなお店って入るだけでも結構勇気要る』

 露店の間の狭い通りを沢山の人達が行き交う。


 さっきシロエがやって見せたように、こういう店では価格交渉……値切りというのが当たり前のようだ。

 どこの店も客と店主の腹の探り合い、真剣勝負といった様相だ。



「ねぇ見て! 大きな魚!」


 店頭に並んだ色鮮やかな魚を見て目を輝かせるシロエ。


「お! ベッピンさんいらっしゃい!」


 店主のオヤジが愛想よく声を掛けてくる。



「その格好、旅人さんかい?」


「はい! ついさっき着いたばかりなんです。アーシアは凄い賑わいですね。活気のある街とは聞いていたのですが」


 人の量に少し気圧されながらも、楽しそうに周りを見回してみせる。



「このバザールは旅の人だけじゃなくて地元の人達も日用品やらの買い出しに集まるからな。街でも1番混み合う場所さね。慣れない旅人さんなら、バザールを抜けて少し高台に上がった所のレストラン街辺りが一息つけるんじゃねぇか?」


「そうなんですね! ご親切にありがとうございます!」


 そう言って頭を下げる。



「なに! その高台にうちのかみさんがやってる食堂があってね! 新鮮な魚を使った魚介料理が自慢さ! 旅人さんに生魚売り付ける訳にもいかねぇしここはそっちの宣伝しとかないとな!!」


 店主は豪華に笑って見せる


 漁も自分で出るのだろうか。筋肉質な体は健康的に日焼けし、その豪快さとも相まって気持ちの良い人だ。


「ありがとうございます! 後でお伺いしますね!」


 シロエがお店の名前や詳しい場所などを店主から聞く。



 ちなみに俺はと言うと、店頭にに並んだタコのような謎の軟体動物にずっと釘付けだった。

 パッと見タコだが鱗がありそのまま刺身には出来そうにない。どうやって食べるんだろうか……。


 魚や貝など概ね見知った物が並んでるが、たまに訳の分からん生き物が並んでるあたり、やっぱ異世界なんだな……と思う。



 ―――――



 バザールを抜けると街のメインストリートと思しき大きな道路に出た。


 道路の両側には、先ほどの露店とは違いしっかりとした店舗が並ぶ。



 白い土壁に、赤茶色の瓦のような屋根。店によって多少の違いはあるけれど基本はどの店も外観は統一されている。


 道の清掃もしっかり行き届いており、ゴミは一切落ちていない。


 幟や看板なども立っておらず、先程の活気あるバザールと比べると洗練された雰囲気を感じる。


 貿易都市というだけあって、各地から集まった珍しい物が揃う高級店なんかが並んでいるようだ。



 行き交う人々も、その出で立ちは冒険者や買い出しの地元の人といった人はおらず、皆それなりに小綺麗な格好をしている。



 そんな中でも一際目立つ人々を所々で見受ける。


 貴族かなんかだろうか。

 従者の手を借り、高級そうな馬車(引いてるのは馬じゃなくて何か首の長い綺麗な動物だが……)から降りて来る、綺麗なドレスで着飾った女性。


 他方では、店の前まで出てきて深々とお辞儀をする店主に何か言付けをする身なりの良い男性など、明らかに特別待遇な感じだ。



「お、俺はちょっと場違いな感じかなぁ……」


 さっき買った服にはまだ着替えていないので、今の俺はパーカーにジーンズ。

 いや、この世界にはパーカーもジーンズも無いようだから、この格好が日本の一般庶民の平日スタイルであるということはバレようもないんだが……さすがにあの荘厳な世界に入って行くには気が引ける。


「そ、そうね。ゆっくり見て回る時間もないし、ここはまた今度に……」


 シロエも緊張してか、若干顔が引きつっている。



 2人揃って回れ右し道を引き返そうとしたとき……不意に声を掛けられた。


「そこの方、少し宜しいですか!?」


 男性の声。

 慌てて振り返ると騎士風の格好をしたこれまた身なりの良い男性がこちらに駆け寄ってきた。


「は、はい!?」


 何だ!? やっぱりパーカーにジーンズはダメだったのか!? 景観を乱した的な罪で捕まるのか!?


 そう思い慌てふためいていると、騎士風の男は意外と紳士的な態度で話掛けてきた。



「申し訳ありません。この辺りでクレシア様を見かけませんでしたか!?」


「え、えと? ク、クレシアさま?」


 全く聞き覚えのない名前を告げられ聞き返す。



「ええ。……ん? その格好は……もしや旅の方ですか? クレシア様はここアーシアの専住天使を務めるお方です。赤眼に金の長髪、深紅のドレスとかなり目立つ格好をしておいでたので、見かければ気が付かれたかと思うのですが」


「んーー、いゃぁそんな人は見てないかなぁ。と言うか俺たちも今来た所なんです」


「そうですか……。お連れの方は?」


「いえ」


 そう一言だけ答えて、シロエは顔を背け俺の後ろに隠れるようなそぶりを見せた。



 そんなシロエの様子に、何となく気まずい空気を感じて慌てて話を続ける。


「そ、それより、その人行方不明なんですか? 大事なんじゃ!?」


「え、ええ。まあ普通は天使様が行方不明となれば一大事ですが……お恥ずかしながら、アーシアでは日常茶飯事と言うか恒例行事と言うかか……」


 そう言って気まずそうに笑って見せる男性。



「いえ、他を当たってみます! お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした!」


 そう言うと踵を返し男は去って行った。



 気がつくと、同じ様な格好をした人達が周辺で他の人々にも聞き込みをしている。



「びっくりしたー! しかし、天使様だってさ、天使! 居るんだなー! シロエ知ってた!?」


 亜人や獣人だけでもびっくりなのに、まさか天使まで居るとは。是非一度お目にかかってみたいもんだ。


「え? えぇ……これだけ大きな街だから天使様もおいでるんじゃないかな?」


 俺のテンションとは裏腹に、シロエは少し困った顔をしている。


「さ、さぁ! あっちの小道から丘の方に上がれそうだから行ってみましょ!」


 何処か作り笑いとも思えるような笑みを浮かべてシロエは脇の小道に歩を進めていく。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ▷アーシアの中央にあるメインストリートは高級店が軒を並べるエリアとなっている。

 古くは日用品等を取り扱う店舗が並んでいたのだが、街の発展と共に高価な輸入品等を取り扱う店舗も増え今では『日常品はバザール』『高級品はメインストリート』と棲み分けががされるようになった。

 取り扱われているのは、他国からやってきた宝飾品や織物、絵画、茶葉などといった嗜好品の他、ドレスや武具、貴重なアイテム等など。

 地元の人は普段あまり訪れる機会は無いが、特別な日のプレゼントやデートなどで訪れる人は少なくない。

 中には一般人でも手の出る価格帯の品物を扱うお店もあるので、尻込みせず一度は立ち寄ってみて貰いたい。

 運が良ければ、煌びやかな衣装を身にまとった貴族階級の人々にお目にかかれるかも(※1)


(※1)一般人が容易に話しかけたりするとトラブルになる場合があります。くれぐれも遠目から眺めるだけにしましょう。



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