【4-9】
改稿しました。
アランが連れて行かれるのを確認したエヴァンは、キャスティナに向き合う。
「怖かっただろう」
そう言ってキャスティナの顔を見たエヴァンは、怒りに震えた。キャスティナは、エヴァンの表情が険しくなったのを見て不思議そうにする。
エヴァン様、どうしたんだろう?私の顔を見て驚いてなんだか怒ってる?キャスティナが不思議がっていると、エヴァンがキャスティナの頬に手を添えた。
「傷になってる。すぐに侯爵邸に戻ろう」
エヴァンは、悔しそうに唇を引き結んでいる。キャスティナを横抱きにして抱えようとして、キャスティナの腕が手錠でベッドの柵に括りつけられている事に気づく。
「絶対に許さない!キャスティナ、ごめんね。今は剣しか無いから、鎖だけ切るよ。ちょっとの間動かないで」
エヴァンは、怒りに震えて恐ろしい殺気を出さないように自分を抑え込む。キャスティナを怖がらせない様に、出来るだけ優しく声をかけた。
「大丈夫です。ありがとう」
キャスティナは、エヴァンの顔を見て言った。その表情はとても疲れきっていて、見ていて辛くなる程だった。
エヴァンは、剣を鞘から抜き鎖の近くまで刃を持って行ってから振り下ろした。鎖はガチャンと音を立ててすぐに砕かれた。
エヴァンは、剣を鞘に戻すとキャスティナを横抱きに抱えて立ち上がった。キャスティナは、エヴァンが立ち上がった拍子に体が宙に浮き咄嗟にエヴァンの首にしがみついた。
エヴァンは、ゆっくりと歩いてキャスティナと一緒に馬車に乗る。馬車の中でもエヴァンは、キャスティナを離さずにいた。馬車がほどなくして動き出す。キャスティナは、エヴァンの膝の上に座らされギュッと抱きしめられている。 エヴァンの温もりに、安堵し肩の力が抜ける。
「キャスティナ、ごめん。怖かったね。怒っていいよ」
そう言って、エヴァンはキャスティナの背中をさする。エヴァンの優しさが背中から伝わり、じんわり鼻の奥が熱くなり目元に涙が滲む。
「私が、一人で外に出たからいけないの……。でも、こわっ……かった」
キャスティナは、エヴァンの胸元に顔を埋め声を出して泣いた。自分が悪かったと自覚しているキャスティナは、エヴァンに謝る。
「ごめっ、ごめんなさい……。」
エヴァンに怒って良いと言われたけれど、怒れない。
「キャスティナが悪い訳じゃないよ。誘拐した奴らが悪いんだから」
エヴァンは、泣きながら謝るキャスティナを見て胸が締め付けられる。今までずっと頑張って来たキャスティナだ。一人で馬車から出てしまった理由も従者から聞いている。誰も、叱る事なんて出来る訳がないのに……。
キャスティナは、恐る恐るエヴァンの目を見る。
「本当に? みんな怒ってない?」
エヴァンは、ふっと笑った。キャスティナの手に自分の手を添える。
「誰も怒ってない。怒ってるとしたら、犯人に対してだよ」
キャスティナが、ホッとしたしたような表情を浮かべる。
「はい……」
エヴァンは、キャスティナをギュっと抱きしめて囁く。
「僕も、助けに行くのが遅くてごめんね。これでお相子だから、仲直りだね。キスしていいかな?」
「えっ?ダメです。意味が……」
キャスティナが、言葉を続けようとしたがチュッとエヴァンの唇に塞がれた。
「ダメって言ったのに!」
キャスティナが、顔を真っ赤にしている。
「だって、仲直りのキスはしないとダメだよ」
そう言ってエヴァンは、キャスティナを改めてギュッと強く抱き締める。
「本当に良かった。無事でいてくれて…」
キャスティナは、エヴァンの温もりが嬉しくて黙って自分もエヴァンの背中に手を回した。




