【3-28】
ここまでの話を聞き、キャスティナは驚く。王子二人の陰湿さにもだが、王の頼りなさにも。キャスティナが、王族に良い印象を持てなかった事に納得した。それにしても、セリアの立ち位置の重大さに何とも言えない感情が胸の中を彷徨う。
横に座っているデリックを見ると、キャスティナと同様に驚いているようだった。
「ここまでの話は、理解出来たかな?」
ローレンスが、お茶で喉を潤しながらキャスティナに尋ねた。
「はい。私の国の王族というものを理解しました」
キャスティナは、残念な気持ちで一杯だ。
「まぁ、そう残念がるな。陛下達は問題あるが、実際に国を支えている貴族達は優秀な者ばかりなんじゃよ」
デズモンドが口を出す。
「そうなんですか……。セリア殿下は、今回の事は知ってるのでしょうか?」
「知っているよ。あの子には、可哀想な婚姻だった……。だが、あの子は皇太子妃という職業に就いたと思っている。プロとして、きちんと子供を産みしっかり育ててくれた。あの子は、ある意味この国のトップみたいなもんじゃな」
デズモンドが誇らしげに自分の孫について語る。キャスティナは、思った。自分なりに貴族の婚姻とは、家同士の政略結婚だと理解していた。理解していたはずだったけど、本当の意味でわかっていなかった。貴族としての位が上がれば上がるほど、自分の意思とは関係なしに結ばれる婚姻。そしてそこには、途轍もなく重大な使命がある。この国の立派な王を産むという。
それを立派にやってのけたセリアに、今まで以上の尊敬の念が込み上げる。今まで見てきた世界が狭かったキャスティナは、改めて世の中には素晴らしい人がたくさんいるのだと思った。
「それでな、キャスティナ。君に公爵家の養子になってもらおうと思うんじゃよ。どうかな?」
デズモンドが、淡々と述べる。キャスティナは、絶句する。
「はっ?」
あまりの事に、理解が追い付かない。今、公爵家の令嬢って生まれながらに大変なんだって思った所だから!公爵家ってどこよ?誰の養子なの?しかも、何で?
「まぁ、驚くわな。アルヴィン説明してあげなさい」
「キャスティナ、うちの両親の養子にならないか?うちは、女の子いないから丁度いいし」
今までずっと黙っていたアルヴィンが、軽い口調で話す。
「えっ?えぇぇぇぇぇー!!」
キャスティナは、驚きの余り大きな声を上げてしまった。
アルヴィンは、笑いながら理由を説明する。
実は、キャスティナが姿を消してから二日後にアランからキャスティナの実家に一通の手紙が届いた。その内容は、エヴァンが大怪我をして近衛騎士を続けられない。無職になるエヴァンに嫁がせるのは勿体ないから、私の側室にどうかというものだった。
その手紙を見たキャスティナの父親ハロルドが、すぐにコーンフォレスト家の屋敷に来た。もちろんエヴァンは、大怪我などしていない。ただ、ケガをしたのは本当だったので休みをもらい屋敷にいた。その為、エヴァンがハロルドと話をして、大怪我なんてアランの勘違いだと主張しキャスティナと婚約破棄するつもりはないとはっきりと述べた。
それでも、王室と縁を結びたいハロルドはキャスティナを一度家に連れ帰ろうとした。だが今は、お茶会に出かけていていないとエヴァンが断った。
エヴァンがケガをした事は、その場にいた者しか知らない。サディアスが襲われた件は、極秘とされていた。アランが知っていたという事は、自分が犯人だと言っている事になる。頭の悪さに、事情を知る者はみな苦笑いだったそうだ。
この事と、元々親子として扱われていなかった件両方を鑑みて、キャスティナを守るためにも公爵家の養子にした方がいいという事になった。あの父親では、何かあった時にキャスティナを守れないという判断だ。




