【3-21】閑話 その後の三人の会話②
「それで、キャスティナの魔法の事だが、恐らく使えるのは癒し系魔法だけではないだろうな」
デズモンドが、先程とは変わって真剣なトーンで話し出した。
「そうですね。じゃないと、辻褄が合わない事が沢山ある」
ローレンスも同意する。
「精神に作用する魔法だろうな·····」
アルヴィンが、呟く。三人各々考え込んでしまう。想像の範囲だが、本当にキャスティナが使えるとしたらとんでもない事だなと頭を抱える。
「本当にそうだとしたら、他の誰かに知られる訳にはいかないな」
ローレンスが難しい顔をしている。アルヴィンも頷く。
「キャスティナは、力の危険度を良くわかっている。だから、私達にも癒し系魔法の事以外は口にしなかった。恐らく、私達が信用出来ないと判断したら、サディアス殿下の様に記憶をどうにかするつもりだろう」
アルヴィンが、悔しそうな表情をしている。キャスティナに、完全に信用されていない事にショックを隠せない。
「だから、あの子の行動は無鉄砲なんだろうな。何かあっても、自分で何とか出来ると思っている。全く18歳の女の子に思えんな。さっきは言わなかったが、キャスティナは王宮からウィードまで夜通し歩いて行ったんじゃよ」
デズモンドが、溜め息を溢しながら説明した。アルヴィンもローレンスも驚いている。今まで、どんな生活を送っていたのか想像がつかない。どうしたら、そんな危ない事が平気で出来るのだろう。アルヴィンは、キャスティナの事が心配でしょうがなくなる。
「キャスティナを送らせたはずのクラウスは、気がついた時に、なぜ自分が一人でコーンフォレス家に向かっているのかわからなかったんだよ」
アルヴィンが神妙な顔をしている。
「おそらく、キャスティナがクラウスに何かしたんだろうな」
ローレンスが考えながら言葉にする。
「この事は、無理やり聞き出さない方がいいだろう。私達は、癒し系魔法と精神に作用する魔法がどんな物なのか調べる所からだな」
デズモンドが二人を見る。二人とも頷いている。
「幻と言われた魔法を二つもモノにしているなんて·····。あんなに可愛い女の子なのに、抱えてるものが大き過ぎるよ」
ローレンスが可哀想だと訴えかける。
「今までは誰にも打ち明けられずに、一人で危ない事をしてきだろうけど·····。これからは、私達がいるから大丈夫だ。今まで苦労した分も、キャスティナには幸せになってもらおう」
アルヴィンが力強く二人に宣言する。
「そうじゃな。王族の事ももう潮時じゃろう。ローレンス、今度の四大公爵家の会議で話を詰めてこい」
「はい、父上」
三人の男達は思う。必死に生きてきた女の子が、幸せになってくれるようにと。自分達に何が出来るのか、各々が考えた夜であった。




