【3-16】
エヴァンは、キャスティナの手を引いて居間へ連れて行った。エヴァンが扉をノックして中に入る。続けて、キャスティナも中に入った。キャスティナは、どんな顔をして会えばいいのかわからず俯いてしまう。
キャスティナが、部屋に入ると元々部屋の中にいた三人がホッとしたような気がした。
一人がツカツカとキャスティナの前に歩いて来た。キャスティナの目には、男物の靴が見える。
「キャスティナ!ちゃんと戻って来なさいと私は言ったよ」
デリックが怒っているのがわかる。いつも誰よりも優しい人なのに。キャスティナは、怖いのを我慢して顔を上げる。
「ごめんなさい」
キャスティナは、緊張からか恐怖からか声が上手く出なかった。小さな声になってしまった。
パンッ
室内に頬を叩かれる音が響き渡る。
「父上!叩かなくても!」
エヴァンが声を荒げる。
「ダメだ!一人くらいちゃんと叱ってやらないと、また同じ事をする。キャスティナは、私達を信用してないから今回こんな事をしたんだ。キャスティナ、私達はもう家族なんだ。言いたい事があるなら、ちゃんと言いなさい。不満だって泣き言だって、ちゃんと受け止める」
そう言ってデリックは、キャスティナを抱き締めた。
キャスティナは、頬がジンジンして痛かった。でも頬の痛みより、コーンフォレス家の人達がもしかしたら傷付いたのかもしれないと言う事に衝撃を受けた。心配されるとは思っていた。でも、キャスティナがみんなを信用していなかったと言う事実に気づいてしまったんだと悟った。自分でも気づいていなかった。
私って何て自分勝手なのだろう。自分の愚かさに初めて気がついた·····。
「ごめんなさい。もう、本当はずっと疲れてて毎日必死だったんです」
キャスティナは、デリックに泣きながら訴えた。




