【３－７】
キャスティナは、眠ってしまっていたようで気がついたら長椅子に横になっていた。毛布が掛けられている。起き上がって伸びをする。今、何時なんだろう？立ち上がって、お店の方に向かう。扉を少し開けて中を窺った。もう、お客さんは数人しかいない。お昼時間が終わって一段落付いた所なのかな？
キャスティナは、ゆっくりと扉を開けてお店の中に入った。すぐに、ジーンが気付いてくれた。
「ティナちゃん、少しは休めたかな？サンドイッチ作ったから持って行こうとしてたんだ。こっちに来て座りな」
ジーンが、カウンターの席を勧めた。キャスティナは、ジーンの前の席に腰を下ろす。
ジーンが、サンドイッチが載ったお皿とお水をキャスティナの前に置いてくれた。
キャスティナは、昨日の夜から何も食べていなくてお腹がペコペコだった。いただきますとジーンに言って、タマゴサンドを一口パクリ。
「美味しい！やっぱり、マスターの料理好き」
キャスティナは、美味しそうにサンドイッチを頬張っていく。
「ティナちゃんは、相変わらず本当に美味しそうに食べるね。僕の作ったものなんて、今まで食べてたものに比べたら普通でしょ？」
「何言ってるんですか！私、美味しいもの沢山食べて来たけど、改めてマスターの料理美味しいって今思ってますよ。あと、カフェオレも。コーヒー上手に淹れられる人って少ないんですよ。紅茶が主流だし。マスターのコーヒーってめっちゃ、美味しいですからね！」
キャスティナは、目をキラキラさせて興奮した面持ちで話す。にこにこしながら、二個目のハムとチーズのサンドイッチに手を伸ばす。
「ありがとう。ティナちゃんにそう言われたら、少しは自分の味に自信持って良いのかな？って気持ちになるよ」
ジーンが、キャスティナに向かって微笑んでいる。キャスティナも、満足そうに二個目のサンドイッチを食べている。
一人の男性のお客さんが、席を立ってレジに向かう。ジーンに向かって話しかけた。
「お会計お願いします」
「はい。今行きます」
ジーンが、答える。お客さんがキャスティナに気付く。
「あれ、もしかしてティナちゃん？戻って来たの？」
「お久しぶりです。ちょっと用事があって戻って来てて。一週間くらいいる予定です」
キャスティナが、笑顔で答える。お客さんは、お会計をしてまた来るよっと言ってお店を出ていった。
ジーンがカウンターの中に戻って来た。
「一週間でいいの？」
「はい。みんなにきっと心配かけてますから·····。ティナを充電したら帰ります」
キャスティナは、笑顔で答えた。
それから、ジーンが八百屋のおばあちゃんの所に行って、夜キャスティナを預かって貰えないか話しに行ってくれた。おばあちゃんは、快く引き受けてくれていつも一人だから嬉しいと言ってくれたそうだ。
キャスティナは、夕方まで久しぶりにお店で働きその後、八百屋のおばあちゃんの所に向かった。
「おばあちゃん、お久しぶりです。元気でしたか？突然ですが、今日から一週間よろしくお願いします」
キャスティナは、笑顔でおばあちゃんに挨拶した。
「久しぶりだね。ティナちゃん。汚い所だけど、ゆっくりしていきなぁー」
おばあちゃんが、にこにこして返事をしてくれた。それから、お店を一緒に閉めて夕飯を一緒に作った。
「いただきます」
「大したものがなくて、ごめんなぁー。一杯おたべ」
今日のメニューは、野菜たっぷりシチューとパン。豪華な食事ではないけど、おばあちゃんと一緒に作れて、一緒に食べられてそれだけでキャスティナは満足だった。シチューを、一口食べる。
「美味しいよ。おばあちゃん。野菜の旨味がしっかり出てる」
「そうかい。そうかい。良かったよ」
おばあちゃんは、キャスティナを見てにこにこしている。二人で、会話を楽しみながら夕飯を食べた。
夕飯の後に、キャスティナに寝床の準備をしてくれた。昔、娘さんが使っていた部屋のベッドを貸してくれるらしい。娘さんは、結婚して近くに所帯を構えてるんだって。だから、しょっちゅう顔は合わせてるから、寂しくはないんだよっと話してくれた。
「一応、掃除はしてるから大丈夫なはずだよ。ホコリっぽかったりしたら、ごめんね」
「いえいえ。突然だったのに、充分ですよ。おばあちゃん、ありがとう」
キャスティナは、おばあちゃんに心からお礼をのべた。私にこんなに良くしてくれる人がいるって、本当に幸せだなっとキャスティナは改めて感じた。
おばあちゃんに、シャワーを借りて今日は早めに眠る事にした。エヴァンの事やコーンフォレス家の人達、アルヴィンの事を考えると申し訳なくて涙が出そうになるから、敢えて何も考えなかった。
とにかく、今日はしっかり寝て明日色々考えよう。キャスティナは、いつもとは違う小さな部屋のベッドで眠りに就いた。
