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秘密の多い令嬢は幸せになりたい  作者: 完菜
第三章 誰にでも秘密はある

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【3-3】



 サディアスは、見下した態度でキャスティナに顔を向けた。


「その格好は何だ?」


 馬鹿にした様な口調に、キャスティナは憤りを感じたが何も表情に出さなかった。


「みすぼらしい格好で殿下の前に出て、大変申し訳ありません。ですが、この格好だと気合いが入るので」


 キャスティナは、エヴァンが横になっているベッドに近づき様子を窺った。エヴァンは、背中に矢傷を負った為、俯せに寝かされていて顔だけ横に向けていた。ケガのせいか熱が出ているようで苦しそうだ。


 キャスティナは、エヴァンの額に手をあてる。やはり熱があるようで熱い。汗もかいていた。キャスティナの様子を、サディアスは怪訝な表情で見ていた。


「で、お前なら後遺症がないように出来るのか?」


 猜疑心溢れる表情で、キャスティナを見る。


「はい。大丈夫だと思います」


 キャスティナは、ベッドの横にあったサイドテーブルに白いカバンを置き中から水色のバレッタを出した。久しぶりに髪を一つに束ねて高い位置でとめる。久しぶりにお仕事ルックになったキャスティナは、やっぱりこの格好は落ち着くと心の中で感じた。そしてなにより、よしやるぞ!っと言う気持ちにさせる。


 キャスティナは、エヴァンの寝ているベッドの前に立つ。エヴァンの顔に両手で包み込むように触れ、エヴァンに優しく語りかける。


「エヴァン様。約束通り癒します」


 キャスティナは、エヴァンに掛けてあった掛け布団を足元まで下げた。エヴァンの背中は、包帯がぐるぐる巻きになっている。矢が刺さった箇所はうっすらと血が滲んでいた。


 キャスティナは、エヴァンの矢が刺さった場所に両手を当てる。深呼吸をする。


「では、いきます」


 キャスティナが、サディアスの方をチラッと見る。サディアスは、さっさとしろと言わんばかりに首を縦に振った。


「ヒール」


 キャスティナが呪文を唱えると、両手から傷に向かって光が放たれる。キャスティナは、目を閉じて、傷の治り具合を感じる。傷ついてしまった背骨を治す。傷口のみ完全に治り切らない所で終了させた。これなら、矢がかすった程度で済むはずだとキャスティナは計算した。


 エヴァンを見ると、熱が落ち着いた様で呼吸が落ち着いていた。キャスティナは、掛け布団をそっと元に戻した。その一部始終を見ていたサディアスは、興奮した様子で椅子から立ち上がりキャスティナに迫る。


「素晴らしいじゃないか!これは、癒し系魔法か?物語の中だけではなく、本当に使える者がいたとは·····。この力があれば、我が国は戦える!」


 サディアスは、ギラギラした目でキャスティナを見る。サディアスの言葉を聞き、キャスティナは恐怖を覚えた。やはり、この方は危険過ぎる。絶対に知られてはいけない人だと再確認した。


「サディアス殿下、落ち着いて下さい」


 キャスティナは、サディアスに椅子に腰かけるように勧める。


「サディアス殿下もお疲れでしょう。少し疲れをお取りします」


 キャスティナは、椅子に座ったサディアスの前に進み出る。


「そんな事も出来るのか!よし、やってみろ」


 サディアスは、興奮したままキャスティナを見上げた。


「はい。かしこまりました。では、いきます。目を閉じて下さい」


 サディアスは、キャスティナの言われた通りに目を閉じる。キャスティナは、サディアスの頭に両手を向けた。


「オブリシュ(忘れろ)」


 キャスティナの両手から光が、サディアスの頭に向かって放たれた。キャスティナは目を閉じた。サディアスの記憶にある最初のエヴァンの傷、そして今部屋で見た事全部の記憶を抜き取った。


 キャスティナは、サディアスが意識を無くしている事を確認する。忘れさせる魔法をかけると五分ほど意識が飛んでしまうのだ。


 キャスティナは、急いで自分の白いカバンを取りエヴァンの顔を一瞬覗き込む。すやすやと眠っている事を確認して、安心する。一緒にいたい気持ちを振り切って、扉に向かって急いだ。




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