【2-30】
セリアとアイリーンとキャスティナは、楽しい時間を過ごした。美味しいお茶とお菓子に喜ぶキャスティナに、セリアは本当の妹を見るように優しい眼差しを向けていた。キャスティナから見たセリアは、思った通り素敵な女性だった。妹である、アイリーンをとても大切にしていた。話を聞いていると、セリアとアイリーンの実家である、グランウィル家もとても仲がいい。コーンフォレス家を取り巻く人達が一様に素晴らしく、やはり素敵な家族には素敵な人が集まって来るものなのかしら?と一人妙に納得していた。
そろそろお開きかと思われた頃、近衛騎士姿の男性がこちらに歩いて来るのが見えた。良く見ると、エヴァンだった。最初に気付いたのは、キャスティナだ。
「あら?エヴァン様だわ」
セリアとアイリーンが、キャスティナの視線の先を見る。
「あら、本当。どーしたのかしら?」
アイリーンが、首を傾げている。エヴァンが三人の前に現れる。
「セリア殿下、ご歓談中の所申し訳ございません」
エヴァンが、セリアに頭を下げる。
「大丈夫よ。どうしたの?」
セリアが、エヴァンに訊ねる。
「アルヴィン隊長から、お茶会が終わりましたらアイリーン様とキャスティナ様に第一騎士団の訓練場に顔を出すようにと申し遣って参りました」
エヴァンが、真剣な眼差しでセリアに向かって話をしている。キャスティナは、仕事中のエヴァンに見とれてしまった。お屋敷とは違って、キリッとしているエヴァンが新鮮で格好いいと目が言っていた。
「嫌だわ。くすくすくす。二人とも何て顔してるのよ。キャスティナは、エヴァンに見とれてるし、それを見るエヴァンは優しい表情だし。アイリーン、この二人いつもこうなの?」
セリアが笑いを堪えて、アイリーンを見る。
「セリアお姉様、いつもです」
アイリーンが、きっぱりと言って笑っている。キャスティナは、恥ずかしそうに俯き、エヴァンはキリッとした表情に切り替えた。
「エヴァンが、そんな表情になるのもわからなくはないわね。キャスティナは、可愛いもの。それにしても、アルヴィンにまで気に入られてるって本当だったのね。私でさえ、アルヴィンとは挨拶程度しか交わした事ないのよ」
セリアは、頻りに感心している。
「では、私もそろそろ行かなくちゃ。二人とも、気を付けて訓練場に行くのよ。また、来年の春に三人で会いましょう。エヴァン、二人をよろしくね」
「はい。セリアお姉様、また会えるのを楽しみにしてます」
「セリアお義姉様、本日は私までお招き頂きありがとうございました。また会えるのを楽しみにしています」
二人は立ち上がり、セリアに向かって深々と頭を下げた。セリアは、またねっと言い護衛と共に去っていった。
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「では、エヴァン行きましょうか?」
アイリーンが、エヴァンに話しかける。
「はい。では、ご案内します」
エヴァンは、仕事モードのまま二人に言った。ゆっくりと歩き出す。二人は、エヴァンに付いていく。途中、化粧室に寄ってもらい化粧を直した。20分くらい歩いただろうか、王宮の内部から外の通路に出て歩いていると、キンッキンッと言う、剣を交える音が聞こえて来た。通路を抜けると、広いグラウンドが見えあちこちで二人一組になり剣で戦っているのが見える。エヴァンは、階段を登り観客席にアイリーンとキャスティナを座らせた。
「今は、二人一組になって実戦の練習中ですね。珍しく、アルヴィン隊長も出てますね」
エヴァンが説明をしてくれた先を見ると、確かにアルヴィンらしき人が大人数相手に剣を構えていた。




