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秘密の多い令嬢は幸せになりたい  作者: 完菜
第二章 貴族としての生活

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【2-26】

 自己紹介を終えた女性三人は、折角なので少し話をしようと休憩室に移動した。三人で飲み物と軽食を取り、楽しく話をした。お互いのパートナーの話や、社交界の話、騎士団の話などキャスティナは実に色々な話を聞かせてもらった。話がいつまでも尽きなかったが、三人のパートナーが迎えに来たので後日お茶会を開きましょうと約束して三人は別れた。


 キャスティナは、初めての経験に興奮冷めやらぬといった様子だ。エヴァンは、キャスティナが楽しんでいるのを見て連れてきて良かったと改めて思った。


「じゃーキャスティナ、そろそろ踊って来よう」


「はい。エヴァン様」


 エヴァンが、キャスティナの手を取り会場に戻ると丁度ゆったりとしたワルツが流れ始めた。二人は踊り始める。


「エヴァン様。今日がすっごく楽しいです。顔が緩んでしまいます」


 キャスティナは、いつにもましてニコニコしている。


「夢だった、お友達が出来ました。ドーリス様もエルナ様も、色々な話をしてくれて楽しかったです」


「私も、キャスティナが楽しんでる姿が見られてうれしいよ。でもまた、クリアみたいになってるけど大丈夫?」


 エヴァンが、キャスティナをからかう。キャスティナは、ハッとしてきりっと表情を引き締めるがすぐに崩れる。


「エヴァン様。私、興奮しちゃって無理です。こんなに楽しくて、夢見てるみたいです」


「素直なのが、キャスティナの良さだから仕方ないね。周りが気を付けるからキャスティナは、そのままでいいよ。アルヴィン隊長も信用出来る人だから、安心して大丈夫。無理強いする人じゃないから」


「ふふふ。それって、エヴァン様の体験談ですか?」


「こらっ。キャスティナ」


 エヴァンもキャスティナも、可笑しくて笑っている。二人が踊っているのを、会場のみんなが微笑ましく見ている。カルロもエヴァンがあんなに優しい表情するなんてなぁーと感心している。二人とも楽しそうでお似合いだ、いい子を見つけて良かったと安心した。


 曲が変わり、キャスティナとエヴァンが離れてお辞儀をした。その途端、キャスティナにダンスの申し込が殺到する。キャスティナが、困っていると後ろから一人の男性が現れる。


「キャスティナ、次は僕とだよ。踊って頂けますか?」


 アルヴィンがキャスティナの手を取る。キャスティナにダンスを申し込んでいた男性達がびっくりして息を飲む。キャスティナは、他のみんなに約束していたのでごめんなさいと断りを入れアルヴィンに近づく。


「はい。よろしくお願いします」


 キャスティナは、笑顔でアルヴィンに答え二人は踊り出す。かかっている曲がアップテンポに変わる。


「あの、アルヴィン隊長。私、ダンスは得意ではなくて。エヴァン様の御家族としか踊った事もなくて。上手に踊れなかったらごめんなさい」


 キャスティナは、曲について行くのが精一杯で足下に目線を下げてしまう。


「それは、光栄だね。キャスティナ、上を向いて僕に任せてくれれば大丈夫だから」


 キャスティナは、上を向いてアルヴィンに重心を預ける。その途端、体が曲に合わせて綺麗に動き出す。キャスティナは、初めての経験に顔が綻んでニコニコが止まらない。


「全く君は·····。君の笑顔は、人を惹き付けるってわかってる?」


「そうなるように、修行したんですよ。成果が出てますか?師匠がいるんです(接客の)」


 キャスティナが、いたずらっぽく笑う。


「本気で口説きたくなる」


 アルヴィンが、ふっと真剣な眼差しをキャスティナに向ける。


「ダメですよ。私じゃ、役者不足です。それにさっきから感じる、多数の男性からの敵意のある視線がビシバシ凄いです」


「そうか。私はエヴァンからの、射殺しそうな視線は感じてたが……威嚇はしといた方がいいね」


 その瞬間、アルヴィンから会場内に殺気が放たれる。会場にいた、騎士達は一瞬で恐怖に襲われる。キャスティナに敵意を送っていた者は、理解する。アルヴィンからキャスティナに手を出すなという威嚇だと。


 カルロは、遠くから二人が踊っているのを見ていた。踊り出したのにも驚いたが、アルヴィンが女性と楽しそうに踊っている光景が信じられなかった。長い付き合いの中で、初めて見るアルヴィンの姿だ。しかも、殺気を放って牽制までした。おいおい、キャスティナ嬢は何者なんだよ。あの二人を手玉に取るって……。


「凄いです。一気に刺すような視線がなくなりました」


「それは良かった。でも、僕の誘いに乗ってくれないのは残念だな」


「それはそうですよ。だって、わたしとエヴァン様の二人が手を出したらアルヴィン隊長は、エヴァン様の手を取るでしょ?私は精々、妹分止りですよ」


 キャスティナは、ふふふっと笑っている。


「君には勝てないね。じゃあ、僕は妹としてキャスティナを可愛がるね」


 アルヴィンもクスクス笑っている。


「はい。よろしくお願いします」


 キャスティナが、にっこり笑顔で返した。丁度、曲が終わり離れてお辞儀をした。そのまま、アルヴィンは、キャスティナの手を取り歩き出す。曲が終われば別れると思っていたのに、キャスティナは驚く。アルヴィンが、キャスティナに合わせてゆっくり歩いてくれる。歩いて行く方向にエヴァンが待っていた。


「ほら、エヴァン。ちゃんと、返しにきたよ。キャスティナは、他の奴と踊らせない方がいい。笑顔が可愛い過ぎる」


 そう言うと、キャスティナをエヴァンに預けて背を向けて去っていった。


「キャスティナ……。何したんだよ」


 エヴァンは、頭を抱える。


「何もしてないですよ。ちょっとお話しただけです。妹認定してくれました」


 キャスティナは、嬉しそうに笑っている。

 エヴァンは、妹って……なんでそうなった?と疑問で一杯になった。


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