【2-19】
次の日、午前中のお茶の時間にコーンウォレス家のみんなが本宅の応接室に集められた。もちろん、昨日の夜会の反省会だ。キャスティナは、みんなからどんな反応があるのかわからず、ドキドキしていた。エヴァンには、大丈夫だと言われたが自分の判断が正解だったのか不安でしょうがない。応接室に、二人で入るとすでにみんなの顔が揃っていた。
「エヴァン遅いわよ。二人とも空いてる所に座りなさい」
シンシアが二人に声をかけた。二人は、ソファに腰かける。すぐに、フィルがお茶を運んできた。お茶を飲みながら、話が始まった。まず、デリックがキャスティナの評判について話し出した。
「私とシンシアは、主に私達と同じ世代か上の世代の方達と話をしたが、特に問題なくキャスティナの事は受け入れられていたよ。騒動の後も、キャスティナへの心配の方が強かったな。そうそう、アイリーンの祖父のグランヴィル公爵家のデズモンド殿がキャスティナを紹介しろって言ってたよ。あの方が、紹介しろだなんて珍しいと思ったんだけど……」
「グランヴィル公爵家の方ですか?私、知らないうちに何かしたんでしょうか?」
キャスティナは、とんでもない名前の方が自分を紹介だなんて、信じられず青ざめてしまう。
「お祖父様は、わざわざ良く思ってない人と会うはずないからきっと良いことよ。キャスティナ、心配しなくても大丈夫。今度一緒に挨拶に行きましょう」
アイリーンが、大丈夫とキャスティナに視線を送る。キャスティナもアイリーンがそう言うなら、大丈夫だろうと安心する。
「で、昨日の騒動はどーしたんだ?私達の所からだとよくわからなかったんだが」
お義父様が、そう言うのも当たり前だろうと思い当事者であるキャスティナが話し始めた。
昨日は、エヴァン様やお義父様とお義兄様とダンスを踊った後に少し休憩しようと言う話になり、エヴァンが飲み物を取りに行こうと背を向けた瞬間に、キャスティナは、自分に向けられた悪意のある視線に気付いた。視線の先を見ると、すごい勢いでキャスティナに向かってくる令嬢がいた。手にはワインも持っていた。この後は、王族への挨拶も控えていたし中途半端はよくないと思い、わざと振り向きワインを派手に受け止め転んだ事を白状した。
もちろん、キャロライナ様をエヴァンと一緒に殿下の所に行かせたのも、考えあっての事で。一つは、キャロライナの反応を見たかった。頭の回転が早い方なら、断ると思ったが、残念ながらエヴァンのエスコートにうっとりついて行くのを見て話にならないと思ってしまった。それと、殿下がどんな方なのか知りたかった。キャロライナ様が、殿下の所に行ったらどんな反応するのか興味があった。私の中で、今回殿下を試したような形になったことが一番不味かったのではないかと考えている旨をみんなに説明した。
一通り話してみんなの顔をキャスティナは、窺った。みんな微妙な顔をしている。ジェラルドが、みんなを代表して口を開いた。
「キャスティナ……君は、クリアみたいな所があると思えば……外では、なかなかの策士だね。まさか、そんな何重にも思惑があると思わなかったよ」
キャスティナは、やっぱり不味かったと青くなって俯く。
「申し訳ありません。赤ワイン持ってつっかかって来るからには、自分の行動に責任を持って頂こうと思ったらあの様な……行動に……」
「キャスティナは、悪くないわ。上手くやったと思うわよ。あれだけやったら、他に手を出して来ないだろうし。キャロライナ様も、少しは反省すればいいけど。あの子元々、評判良くないのよ。同じ様な目に遭ってる子たくさんいるし」
アイリーンお義姉様が、キャスティナを励ますように言った。
「そうね。キャロライナ様の事は、特に問題ないわ。問題は、殿下を巻き込んだ事ね。エヴァン、殿下は何て言ってたのよ?」
シンシアが、エヴァンに尋ねる。
「殿下は、終始ご立腹だったよ。キャスティナに会うのが楽しみだったらしくて、私もまさかそんなに楽しみにしておられるとは思ってなくてね。キャロライナ様には、以後顔を見せるなと言われていたよ」
「「「えっ?」」」
女性三人が驚いている。
「エヴァン様、それって……王族主催の催しにもう招待されないって事?侯爵家の令嬢が?私のせいで?」
キャスティナは、信じられないとばかりに力が抜ける。何で?まだ若い女の子がちょっと意地悪しただけで……殿下って思ってるよりずっと容赦ない。こんなつもりじゃなかった……ってか、私に会うのが楽しみだったって?何だそれ?それが一番の想定外だ。ますます、会いたくない。むしろ、汚れたドレスでいいからチャチャッと挨拶しとけば良かった……。もう何言っても遅いわ。
「それだけ、キャスティナの評判がいいって事よ。私達の思惑も上手く行きすぎた感が否めないわね……。まさか、サディアス殿下の興味をそこまで引くとは。私達だって、想定外よ。キャスティナ、それはもう受け入れるしかないわ」
シンシアが、扇子で顔を隠しながらキャスティナに言った。うっ、お義母様が可哀想な子を見る目で見てくる。王族には、やっぱり必要最低限近づかないように頑張ろう。私の見立ては正しかったって事だよ。キャスティナは、しょんぼりしてしまった。
「たった一日で、貴族と王子にこれだけ印象付けたんだから大したもんだよキャスティナ。そんな落ち込まなくても大丈夫だ。キャスティナは、間違った事も悪い事もしてないよ。リッチモンド侯爵家の事は侯爵がなんとかするから大丈夫だ。自分の娘がやったことだし、親子で反省するしかないよ。取り敢えずは、夜会デビューは上手く行ったと言う事で大丈夫じゃないか?」
デリックが、キャスティナを慰める。
「そうね。これで、色々な招待状が届くと思うわ。後は、私やアイリーンに相談しながら自分で考えて社交をしていきなさい」
シンシアが纏めるように話をして、今回の反省会は終了した。




