【2-18】
その夜は、エヴァンが次の日休みの為、別邸に戻った。キャスティナは、色々あったので疲れてしまった。湯浴みは王宮で済ませて来たので、化粧のみリサに落としてもらって寝支度を整えてもらう。まだ、ちょっと早かったが寝室に向かった。
別邸の寝室は、エヴァンと一緒になっている。初めて別邸に泊まった日にキャスティナは、驚愕した。エヴァンから、別邸に泊まる時くらい一緒に寝たいと言われた。一緒に寝るだけで、結婚式までは何もしないと。仕事のある日は、朝と夜しか会えなくて淋しいと言われたらもう何も言えなかった。それでも、キャスティナは恥ずかしくて、ちょっとずつ慣らさせて下さいとお願いして、最初はベッドの端で寝ていた。だが、朝になるといつの間にかエヴァンに抱き締められてて、だんだんと馴れていった。まだまだ緊張はするけれど、一緒に寝るのが当たり前になった。
「リサ、エヴァン様は何やってるのかしら?何も言わずに先に寝たらダメよね?」
「そうですね。多分、居間でお酒をお召し上がりになっていると思います」
「わかったわ。ちょっと、お休みなさいの挨拶だけしてくるわ」
キャスティナは、ベッドから立ち上がり居間に向かって歩いて行く。リサが、ノックをして居間の扉を開けてくれた。キャスティナが中を覗くと、エヴァンがソファに腰かけてワインを飲んでいた。
「キャスティナ、もう寝るの?」
エヴァンがキャスティナに気づいて言った。
「はい。ちょっと早いけど疲れてしまって……先に休みます」
「そっか。ちょっとキャスティナこっちに来て」
キャスティナは、言われた通りにエヴァンの座っているソファに向かった。キャスティナは、エヴァンの近くに行くと手を取られてエヴァンの膝の上に座らされた。
「リサ、キャスティナは私が部屋まで送っていくからもういいよ」
「はい。では、お休みなさいませ」
リサは、キャスティナとエヴァンに一礼して居間を出て行った。
キャスティナは、えっ?何で膝の上?意味わからない!と顔を手で覆って悶える。
「エヴァン様、なんで膝の上なんですか…」
キャスティナは、恥ずかしくて堪らない。
「えっ?だって、もう寝ちゃうなんて早いよー。キャスティナが足りないから、補給」
そう言ってエヴァンは、キャスティナをぎゅっと抱き締めた。えぇぇぇぇー。何これ何これ?エヴァン様が、甘えてる?
「エヴァン様、甘えてるの?」
「だって、今週は王宮の舞踏会の準備で夜帰って来るの遅かったから、朝ちょっとしかキャスティナに会えなかった」
何だが可愛い人だなぁーとキャスティナは、思った。キャスティナよりもずいぶん年上なのに。末っ子だからかしら?とキャスティナは、心の中で笑ってしまう。そう思ったら、キャスティナは自然とエヴァンのサラサラの髪を撫でていた。
「何か、キャスティナが子供扱いしてる」
エヴァンが腕を緩めて、顔を上げた。面白くない顔をしている。
「だって、エヴァン様が何だが可愛いくて」
キャスティナは、いつものお返しとばかりにちょっとからかった。エヴァンの顔がキャスティナの顔に近づき、キャスティナの唇にエヴァンの唇が重なった。キャスティナは、突然の事にびっくりする。
「エヴァン様!」
「だって、キャスティナが私をからかうからー。つい、チュッとしちゃった。もう一回してもいい?」
エヴァンが、キャスティナに可愛くおねだりしてくる。なんで?なんで、この人こんなに可愛いのよ!
「嫌だった?」
エヴァンがあからさまに、シュンとした顔をしている。いや、だからそんな顔されたら断れないし……、
「嫌……じゃないです……」
キャスティナは、一杯一杯になりながら言葉を絞り出す。エヴァンは、それを聞いて瞬時にチュッと唇を重ねる。離されて終わりかと思ったら、間を置かずに唇を重ねられて、今度は大人のキスをされた。キャスティナは、びっくりするが抵抗出来ない。やだ、息が出来ない。
「ん……はぁ………エ…ヴァン… さま… 」
キャスティナは、頭が真っ白になって蕩けそうな顔になっていた。キャスティナは、もう、思考を放棄する。今日、もう無理……キャパを超えた……キャスティナは、ぐったりしてエヴァンに寄りかかってしまう。
「ごめん。ごめん。ずっと我慢してたから、軽くじゃすませられなかった」
エヴァンが満面の笑みを浮かべている。どうやら満足したようだ。
「このまま、寝室に運ぶよ」
そう言って、お姫様抱っこされて寝室に運ばれた。キャスティナは、恥ずかしさのキャパを越えていたがもうあえて何も考えなかった。考えた瞬間、私の負けだと頭の片隅で警鐘が鳴った。ベッドに寝かされ、おやすみと唇にキスされた。
あー、もうキスは当たり前になるんだ……と諦めて目を閉じた。




