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秘密の多い令嬢は幸せになりたい  作者: 完菜
第一章 人生って何が起こるかわからない
4/106

【4】

 鳥の鳴き声で目を覚ましたキャスティナは、ベットから出てカーテンを開ける。まだ日が昇ったばかりの白みがかった空は、雲一つない。今日、晴天だ。


「おはよー。今日も一日頑張ろう私」


 そう言って、顔を洗うために水をもらいに下の階に行く。ランドリー室に行って盥に水を入れる。自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、メイドのエーファがこちらに歩いてくる。


 エーファは、元キャスティナの侍女。メイドが足りないと言う理由でキャスティナの侍女からメイドに変更になった。年は、キャスティナより二個上の20才。髪は、栗毛色でくせっ毛。瞳の色も髪と同じ。いつものように、高い位置で一つに結んでいる。


「おはよう。エーファ。今日はいい天気ね」


「おはようございます。お嬢様。今日は、お出掛け日和ですね」


「そうねー。今日は、午後は少し出掛けて来ようかな」


 そう言ってキャスティナは、エーファとすれ違い自分の部屋に戻った。


 部屋に戻ったキャスティナは、顔を洗ってシンプルな水色のワンピースに着替える。この服も、子爵令嬢が着るような服ではないが。自分で着られる服でないとダメなので、平民が着ている様な飾り気ない動きやすい服だ。キャスティナは、貴族令嬢としての暮らしより使用人としての暮らしに慣れてしまったため、服装に拘りはない。むしろ、動きやすいし自分の瞳の色と同じこのワンピースが気に入っている。


 さっ。お腹空いたし朝御飯食べに行こう。キャスティナは、さっきと同じように階段を降り今度はキッチンの扉を開けた。


「おはようございます。お嬢様」


 キッチンにいるコックや、メイドや侍女などの屋敷の使用人から朝の挨拶を受ける。


「おはよー。みんな。お腹空いちゃった。今日の朝御飯なにー?」


 キャスティナは、毎朝キッチンの隣にある使用人用のダイニングで朝御飯を使用人達と一緒に食べる。この習慣も5年ほど前から始まった。家族で一緒にご飯を食べていた時期もあったが、義母の視線とお小言、キャスティナがいないのと同じように扱う空間が耐えられなくなり、いつしか自室で食事を摂るようになった。


 しかしそれも、一人ぼっちで食べる食事に耐えかねて使用人達と一緒に食べる事を思い付き、執事のダンに頼みこんで何とか許可をもらった。もちろん、家族には内緒にするという約束で。だから、家族達は未だにキャスティナは一人で食事を摂ってると思っている。朝は、使用人達とほぼ同じ時間に起きていて父も義母も異母弟もまだ寝ている。昼は、軽食を自室に運んで食べるか、家族が外出していれば使用人達と一緒に食べたりと臨機応変に。夜は、両親が夜会に出掛けていない時だけ、異母弟のルイスと一緒に食べている。


 ルイスは、9才年下の異母弟。髪の色は母親と同じで薄いピンク。瞳の色は、父親と一緒で茶色。あまり笑った顔を見たことがなく、無表情。どちらかというと、母親に似て美しい顔立ち。


 夕食をルイスと一緒に食べている事も、義母には内緒だ。義母は、キャスティナが異母弟のルイスに近付くと怒る。義母がいなければ、それなりに姉弟仲は悪くない。ただ、二人とも義母には諦めを感じていて仲良い所を見せると二人とも執拗に叱られるので、疲れてしまった。その為に、付かず離れずの関係性になってしまった。


 キャスティナは、ルイスの事は嫌いではないしむしろ半分血の繋がりのある弟なんだから仲良くしたいと思っていた。ただ、本当に疲れてしまったのだ。使用人達は、家族の目がなければ良くしてくれて、感謝している。ただ、家族との関係が希薄過ぎて一緒にいるのに一人で暮らしている状態に寂しさを感じずにはいられない。


 家族に対して、何も思う事がなくなってしまった。期待してはいけないんだと、この10年で思い知ってしまった。


 朝食を食べ終わると、お皿を流しに持っていき「ごちそうさまでした」と挨拶してキッチンを出ると、素早く自室に戻った。



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