【2-6】
食事を終えると、キャスティナは部屋に戻った。今日は、激動の一日で力を使い果たしたみたいに、ぐったりとソファに座った。それを見たリズとリサは、キャスティナを思って早めに寝支度を整えてくれた。
「ごめんね。部屋に入ったとたんに力が抜けてしまって……リズリサに、情けない所しか見せてないわ……」
「ご自分の部屋に戻って来てるんですからそれでいいのです。今日は、色々な方にお会いして新しい場所に来たんですもの、疲れて当たり前ですわ」
リズが言って、リサが頷いている。
「もう、お休みになられても大丈夫ですよ」
リサが言う。
「うん。もう今日は限界だと思う。エヴァン様におやすみなさいだけ言ってきても大丈夫かしら?」
キャスティナが顔を傾げて、二人を見た。
リズとリサは、顔を見合わせる。
「ちょっとリサ、お嬢様が可愛い過ぎるけどこのまま行って帰って来られるかしら⁉」
「リズ、どっちか一緒に行った方が良いかも‼でも、後でエヴァン様に睨まれるかしら?」
「あの……二人とも、ただお休みの挨拶してくるだけよ?」
「お嬢様、まだ婚約者なんです。警戒心は必要です‼そんな無防備な格好と表情で行ったらぱくっと食べられます‼」
「え?食べられるって?」
「リズ、これは早めに体験した方が、のちのち被害が少ないかも」
「うん。ちょっと荒療治な気もするけど……お嬢様行ってらっしゃいませ。あっ、カーディガンは着て行って下さいね」
リズとリサが、にっこり笑顔で見送った。
キャスティナは、隣の部屋の扉をノックする。コンコン。「キャスティナです」
「どうぞ」
キャステナは、扉を開けてその場でエヴァンに声をかける。
「あの、エヴァン様。お休みの挨拶に来ました」
キャスティナは、恥ずかしそうに言った。エヴァンは、一瞬固まったように見えたがすぐにいつもの優しい顔で迎えてくれた。
「キャスティナちょっと、こっちにおいで」
なんだろう?と思いつつ、部屋に入ってエヴァンの座ってるソファの所に行った。エヴァンの横のスペースに手でポンポンと座ってと合図される。キャスティナは、言われるまま横に座る。エヴァンが、キャスティナの手を握る。
「もう寝ちゃうの?」とエヴァンがキャスティナの顔を覗き込む。チュッと、頬にキスして抱き締めた。
「ダメだよキャスティナ。こんな無防備な格好で部屋に入って来たら。可愛すぎて離せなくなっちゃうよ。ね?」
エヴァンは、抱き締めてた手を離してキャスティナの顔を窺うと、なんとキャスティナがボタボタと涙を流している。エヴァンは、びっくりした。
「ごめん。嫌だった?」
「嫌……じゃなくて……ヒック。ビックリ……して。ただ……ヒック。お休み言いに……来ただけなのに……」
キャスティナは、今日一日色々ありすぎて許容範囲を越えた。エヴァンに抱きしめられたりするのが嫌なわけじゃないが、感情が処理しきれず結果子供みたいに泣いてしまった。
エヴァンは、泣いてるキャスティナが可愛い過ぎて、あーこのまま一緒に寝たい……と思ってしまう。そこは、グッと堪えるが……。エヴァンがもう一度キャスティナを優しく抱きしめて、背中をポンポン叩いてくれた。
「ごめん。ごめん。びっくりさせたね。大丈夫だからね。挨拶に来てくれて、嬉しいよ」
「あの、明日の朝も行ってらっしゃいって言ってもいいですか?」
「見送りしてくれるの?」
「はい」
「いつも8時ぐらいに出掛けるよ」
エヴァンは、キャスティナを離して答えた。
「わかりました」
キャスティナは、立ち上がってエヴァンの方を向く。
「では、エヴァン様。お休みなさいませ」
軽く膝を折って、お辞儀する。キャスティナは、笑顔に戻っていた。
「キャスティナもお休み。よい夢を」
エヴァンが笑顔で微笑む。キャスティナが部屋に戻るのを名残惜しそうに見つめていた。
部屋に入ったキャスティナは、リサに目を冷やしてもらった。そのままベッドに入って目を閉じると、すぐに意識を手放した。




