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秘密の多い令嬢は幸せになりたい  作者: 完菜
第一章 人生って何が起こるかわからない

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28/106

【28】

 ついに、キャスティナが18年暮らした屋敷を去る日が来た。その日は、天気にも恵まれて清清しい青空が広がっていた。エーファに手伝ってもらって、身支度を整える。


「お嬢様。髪型は、どうしましょう?前髪切っちゃいます?」


「うーん。どうしよう?この前の横分け結構気に入ってるんだけど……。切っちゃうと一気に幼くなっちゃう気がするんだけど……どっちがいいんだろう?」


「決められないなら、あちらで婚約者様の意見を聞いてみたらいかがでしょう?切るのは一瞬ですから」


「そうするわ。エーファ。前髪は、この前と同じで髪はサイドアップでお願い」


「かしこまりました」


 エーファが、慣れた手付きで髪をセットしてくれる。キャスティナは、それを鏡越しにずっと見ていた。出発する時間が来た。荷物は、ベンが下に運んでくれる。


 エーファと二人で玄関に下りる。今日は、キッチンの裏口じゃなくて玄関から外に出る。当たり前の事だけど、なんだか胸が一杯になった。玄関に着くと、お父様とルイス、それにベンとマーベナーが見送りに出て来てくれていた。


「荷物は先に馬車に入れた。では、行くぞ」


 父親が先に玄関を出て馬車に向かった。


「ルイス、行ってくるわね。約束忘れないでね」


 キャスティナは、ルイスをギュッと抱き締める。


「はい。お姉様もお元気で」


 キャスティナは、ルイスから手を離し一歩後ろに下がる。


「ベン、マーベナー、エーファ、今まで本当にありがとう。行ってくるわね」


 キャスティナは、笑顔で最後にお礼を述べる。


「「「はい。いってらっしゃいませ」」」


 三人は、頭を下げた。

 キャスティナは、何かすっきりした気持ちで、玄関を出て馬車に乗り込んだ。


 馬車に乗ると、お父様がいつもの仏頂面で座っていた。キャスティナは、父親の向かいに腰かける。ほどなくして馬車が走り出した。


「お前が、侯爵家の男を捕まえるなんてな。エジャートン家に、迷惑かけるような事はするなよ」


「はい。今までお世話になりました」


 キャスティナは、ペコリと頭を下げた。


「本当になっ。これでようやく家の中も落ち着くだろう」


 キャスティナは、窓の外に目をやった。この人も成長しないままか……自分が悪い事に気が付かなければ、お義母様もあのままだけどね……。キャスティナは、頭を切り替える。これからの新しい生活に思いを馳せる。


 カタンと馬車が止まった。コーンウォレス侯爵邸に到着した。扉を開けて父親が先に降りる。続けて、キャスティナも馬車から降りた。目の前に、大きくて立派なお屋敷が建っていた。何て言うか、予想を遥かに超えてきたな……私、本当に平気?もの凄く間違えた感が……。


 父親がスタスタとお屋敷の扉の前に立つ。チァイムを鳴らす。すぐに扉が開いて執事が出てきた。


「約束していた、ハロルド・クラーク・エジャートンだ」


「お待ちしておりました。どうぞお入り下さい。荷物はこちらで、お預かりします」


 一緒に来ていた従者が、キャスターケースを執事に渡してくれた。


 父親と中に入ったキャスティナは、息を飲む。凄いお洒落。素敵。屋敷の素晴らしさに、キャスティナは目をキラキラ輝かせながら廊下を進む。応接室に案内され中に入ると、コーンウォレス侯爵と侯爵夫人、エヴァンが待っていた。


 先に父親が挨拶する。続けて、キャスティナも挨拶してお辞儀をした。


「キャスティナ・クラーク・エジャートンです。よろしくお願い致します」


 部屋の真ん中に、大きなダイニングテーブルがあり、二人はコーンウォレス侯爵家の皆さんの前に座った。最初にお父様が、お義母様の体調が悪く急遽来れなくなってしまった事を謝罪した。その後も、淡々と婚約に関する話をお父様とコーンウォレス侯爵がしていた。


 キャスティナは、三人から向けられる冷ややかな空気に居た堪れなくなる。なんで、こんなに三人とも不機嫌?これが普通の感じなのかしら。とにかく、圧を凄く感じる……。エヴァン様も二人でいる時とは、全然違って冷たい雰囲気……。


 キャスティナは、話を聞きながら、コーンウォレス侯爵夫妻に目を移す。こちらが、コーンウォレス侯爵ね。エヴァン様の髪と同じ明るい茶色で瞳の色が緑色でとっても優しそうな紳士なんだけど……。お父様を見る視線が厳しい……。


 エヴァン様のお母様である、コーンウォレス侯爵夫人は、本当に素敵な女性。こんなにキレイで洗礼された淑女って本当にいらっしゃるのね……。シルバーのキレイな髪で、エヴァン様と同じ濃い青い瞳。透き通る白い肌で、目元がシャープで冴えるような美人。エヴァン様は、お母様似なのね。お母様もやっぱり、吹雪いてないよね?ってくらい冷ややかな雰囲気を醸し出している。


「では、こちらに署名を」


 執事が一枚の書面を、テーブルの上に置いた。エヴァン様が書いて、次に私が名前を書いた。


「では、これで話は終了ですね。エジャートン子爵は、お帰りになられて大丈夫です。キャスティナ嬢は、こちらで大切にお預かり致します」


「では、私はこれで失礼させて頂きます。キャスティナ、くれぐれも皆さんにご迷惑をおかけしない様に」


 エジャートン子爵が、立上がりコーンウォレス侯爵家の皆様にお辞儀をして扉に向かう。キャスティナも、玄関まで見送ろうと立ち上がるが父親に止められた。


「ここでいい。では」


 応接室の扉から、お父様が退出する。


 パタン……と、扉が閉まった。

 その瞬間、キャスティナと父親との繋がりもパタンと音を立てて閉じた気がした。


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