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秘密の多い令嬢は幸せになりたい  作者: 完菜
第一章 人生って何が起こるかわからない

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23/106

【23】

 キッチンの勝手口から外に出る。いつもの様に30分かけて歩いて町に着く。八百屋のおばあちゃんに声をかけた。


「おばあちゃん、こんにちは。今日はクッキー作って来たから一つどうぞ」


 キャスティナは、にっこり笑顔で買い物かごからクッキーを取り出しおばあちゃんに渡す。


「おや、ティナちゃん。今日は早いね。ありがとう、後で頂くよ。ジーンの所に行くのかい?」


「はい。では、おばあちゃんまたね 」


 ジーンのお店の前に立つ。準備中の看板がかかっていた。良かった、間に合った。キャスティナは、お店の扉を開けて中に入る。


 カランカラン


「こんにちは、マスター」


 カウンターの中で、開店準備をしていたジーンは驚いた顔でキャスティナを見た。


「あれ?ティナちゃん。今日は早いね。どうしたの?」


「マスター、今日はちょっとお話があって、早く来ました。ちょっとお時間いいですか?」


「もちろんだよ。ここに座りな」

 ジーンは、自分の目の前の席を勧めた。


「ありがとうございます」


 キャスティナは、イスに座って話し出した。突然引っ越す事になって、ここに来るのは今日で最後になってしまう事を。


「マスター、本当に今までありがとうございました。私、この場所が大好きです。マスターが、お兄ちゃんみたいでいつも優しく迎えてくれて……この場所があったから笑顔で今までやってこられました」


 キャスティナは、涙を堪えて笑顔でマスターに言った。


「ティナちゃん。ティナちゃんの笑顔にみんな癒されたんだよ。僕も、妹みたいで可愛くて仕方なかったよ。いつも来るのが楽しみでしょうがないんだ」


 ジーンは、キャスティナの頭を撫でた。


「そうか……寂しくなるね……」


 ジーンは、残念そうに寂しさを浮かべた。


「あの、今までのお礼にクッキーを作って来たんです。今日来たお客さんに配ろうと思って。1つはマスター食べてね」


 そう言って、キャスティナは1つマスターに渡す。それと、カバンから昨日買った、ハンカチーフを出す。


「あとね、マスターにだけ特別にプレゼントです。今までお世話になりました。受け取って下さい」


「えっ、いいの?うれしいなぁ。開けてみてもいいかな?」


「はい。気に入ってくれるといいんですが……」


 ジーンは、包みを開けて中のハンカチーフを取り出す。優しくうれしそうに微笑んだ。


「綺麗な水色のハンカチーフだね。ティナちゃんの瞳と同じ色だね。ありがとう。気に入ったよ」


「ふふふ。良かった。マスター、今着てるワイシャツの胸ポケットに入れて欲しいの。ちょっといい?」


 そう言って、キャスティナはハンカチーフを折り畳む。それを、マスターに渡す。

 ジーンが、胸ポケットに入れてくれる。


「どうかな?」


「うん。すごくいい!」


「ありがとう。大切にするからね。今日は、どうする?もう帰る?」


「いいえ。今日は最後に精一杯働いて行きます。また4時までいいですか?」


「もちろんだよ」


 ジーンは、笑顔で答えた。

 キャスティナは、従業員用の控え室に行っていつもと同じようにエプロンをつける。前髪をピンでとめて、髪をバレッタで高い位置でとめる。


「よし。今日が最後。楽しもう」


 キャスティナは、お店に戻る。お店の看板を準備中から営業中に変える。まだお客さんが来ないので、マスターがキャスティナにカフェラテを入れてくれた。


「ありがとうございます。マスターのカフェラテ飲めてうれしい」


「ティナちゃんは、本当に美味しそうに飲んでくれるから入れ甲斐があるよ」


 キャスティナが飲み終わる頃に、お客さんが来始めた。キャスティナは、いつも通り一生懸命働いた。この日も、あっという間に時間が経った。


「ティナちゃん、上がる時間だよ」


 マスターが、キャスティナに声をかける。


「マスター、今日もありがとうございました。また、途中で申し訳ないけど上がらせてもらいます」


 ぺこりとお辞儀をして、キャスティナはお店を後にした。従業員用の控え室に戻ると帰り支度を整える。コンコンとノックの音が聞こえた。


「はい」


 返事を聞いて、扉が開きマスターが部屋に入ってきた。


「ティナちゃん。今までありがとう。また、来たくなったらいつでもおいで。ずっと、待ってるよ」


 キャスティナは、マスターに抱きつく。

 ジーンが優しく背中をさすってくれる。


「マスター、心配しないでね。私、幸せになるから。そしたらきっと、また会いにきます」


 キャスティナが、顔を上げてジーンを見た。


「そうだね。楽しみに待ってるよ」


「またね。マスター」


 キャスティナは、笑顔でジーンに挨拶するとお店の裏口から帰って行った。



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