【2】
キャスティナは、コーンウォレス侯爵子息に見惚れてしまい言葉が出なかった。
「キャスティナ?」
コーンウォレス侯爵子息に呼ばれ、キャスティナは咄嗟に答える。
「薔薇は好きです。でも、薔薇だけじゃなくて自然が好きなんです。綺麗な風景の中にいると、ホッとします。コーンウォレス様も、少し顔色が良くなってますよ」
「エヴァンでいいよ。その呼び方だと、他人行儀で嫌だな」
「あの·····でも」
言いづらそうに、キャスティナはエヴァンの顔を窺う。エヴァンは、有無を言わせぬ笑顔でニッコリ微笑んでいる。無理·····反抗出来るわけない·····。
「エヴァン様」
おずおずと窺う様に、キャスティナは名前を呼んだ。
「うん。これから、そう呼んでね」
「そろそろ、戻らなくちゃだね。キャスティナが言う様に、何だか体もすっきりしたし。良い時間だったよ。ありがとう」
キャスティナは、エヴァンが言った言葉に疑問が残る。これから?エヴァン様とは、これで最初で最後じゃないの?キャスティナは、首を傾げた。
エヴァンは、さっと立ち上がるとキャスティナの前に跪き手を取った。
「キャスティナ、私の婚約者になってくれる?今日は時間がないからゆっくり説明出来ないけど、悪いようにはしないから頷いてくれないかな」
そう言って、エヴァンはキャスティナの手にチュッとリップ音を立ててキスをした。
キャスティナは、その瞬間何が起こったのかわからず呆然としてしまう。意味を理解した瞬間、顔が真っ赤になってしまう。
「キャスティナ、顔が真っ赤だよ。可愛いね。良いよね?私の申し出受けてくれるよね?」
エヴァンは、先程の有無を言わせぬ笑顔を振り撒く。
キャスティナは、頷く事しか出来なかった。誰がいったい、この申し出を断れるのよ‼と心の中で絶叫していた。
「ありがとう。じゃー、近いうちに父を通してキャスティナの父上に申し込むからね。またね」
そう言って、エヴァンはキャスティナの前から立ち去って行った。
キャスティナは、それを呆然として見送った。気づいた時には、かなり時間が経っていてキャスティナも両親の元に急いで戻って行った。