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秘密の多い令嬢は幸せになりたい  作者: 完菜
第四章 幸せにつながる道

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最終話

 

 今日は、雲一つない真っ青な青空が広がっている。二人が、待ちに待った結婚式だ。王都で一番大きな教会で式を挙げる事になっている。チャペルには、招待客が集まり出している頃。キャスティナは、全ての準備を終え控室の大きな鏡の前で座っていた。純白のドレスに贅沢にレースをあしらった、スカート部分が丸く膨らんでいるプリンセスラインのドレス。エヴァンの母シンシアとアルヴィンの母シャルリーヌが協力して作り上げた渾身のドレス。値段を知ったら、恐すぎて着られないと思いキャスティナは聞かない事に決めた。二人が考えただけあって、とても可愛らしいドレスでキャスティナも気に入っている。


 エヴァンと出会ってから、一年が経っていた。早かったような、色々な事がありすぎて一年とは思えないほど凝縮されていたようにも思う。一年前に思い悩んでいた、家族との確執から解放され、新しい人生をこれから歩もうとしている。色々な思いが込み上げる。


 鏡を見ながら、自分の中に残る実の母親に語りかける。お母様、私色々あったけど幸せになるね。お母様に言われた事を胸に、これからも歩いて行くから見守っていて。鏡越しの自分に、ニコリとほほ笑んだ。


 コンコン、ノックの音が響く。


「はい」


 キャスティナが、どうぞと返事をする。外から、ダグラスお父様とシャルリーヌお母様の声がした。


「入るよ」


 扉が開き、二人が入って来る。キャスティナは立ち上がり二人を迎え入れた。


「素敵よ、キャスティナ。良く似合ってる」


 お母様が、感激したようで目を輝かせている。


「ああ。綺麗だ。でも、嫁に行くのは早いと思う……」


 お父様が、キャスティナを手放すのが惜しいようで複雑な表情をしている。


「ふふふ。お父様ったら」


 父親が、いじけているのが可愛らしく感じる。キャスティナは、静かに端に控えていたリズに目配せする。リズは、小さく頷き控室にいたスタッフを部屋から下がらせた。キャスティナは、父親と母親の前に足を進める。手を前に組み、姿勢を正す。


「お父様、お母様、二人の娘にして下さって本当にありがとう。たった三カ月間だけだったけれど、19年間分の思い出を貰ったような気がします。ありがとうなんて言葉じゃ足りない、最上級の感謝の気持ちをお二人に」


 キャスティナは、そう言って自分に今出来る最高のカーテシーを決めた。


 室内に静寂が流れる。先に動いたのは、シャルリーヌだった。コツコツと、ゆっくりキャスティナに歩みよる。温かなぬくもりが、キャスティナを包み込む。


「キャスティナ、素敵な言葉をありがとう。キャスティナが来てくれなかったら、娘がこんなに素敵な存在だなんて知らないままだったわ。貴方は、幸せになるのが上手な子よ。何も心配はしてないの。ただ、いつでも帰って来ていいのよ。それだけは、忘れないでね」


 ふわりと、お母様ごと大きな腕に包まれる。


「こんなに、結婚式で感動させられるなんて娘じゃないとわからんな……。私達の元に、来てくれてありがとう。これから先も、ずっと俺の娘だぞ」


 キャスティナは、胸が一杯で言葉にならない。母親の胸から顔を上げると、二人とも涙ぐんでいる。


 コンコンとノックの音がする。そろそろお時間です。と扉の外から声がかかる。


「ふふふ。エヴァンが首を長くして待ってるわよ」


 二人が、ゆっくりとキャスティナから離れる。キャスティナは、はいっと笑顔で返事をした。






 ユリの花が飾られた、バージンロードをお父様とゆっくりと歩いて行く。チャペルの中が、ユリの香りに溢れている。キャスティナは、エヴァンの待っている祭壇に向かって真っすぐに進む。エヴァンは、初めて会った時に着ていた騎士の正装に身を包んでいる。キャスティナは、やっぱり騎士服って格好良いとほれぼれする。エヴァンと視線が合うと、蕩けそうなほど甘い表情でキャスティナを見ていた。祭壇に着くと、お父様が優しくキャスティナの腰を押す。キャスティナは、エヴァンの元に一歩足を踏み入れる。エヴァンがキャスティナの手を取り、祭壇に向き合った。


「綺麗だよ」


 キャスティナの頭の上から、エヴァンが小さな声で囁いた。キャスティナも、嬉しいとエヴァンと目を合わせ微笑む。


 神父の宣誓が始まる。


「エヴァン・ウィリアーズ・コーンウォレス、あなたはキャスティナ・ベル・シェラードを妻とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くす事を誓いますか?」


「はい。誓います」


「キャスティナ・ベル・シェラード、あなたはエヴァン・ウィリアーズ・コーンウォレスを夫とし、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くす事を誓いますか?」


「はい。誓います」


「では、誓いのキスを」


 二人は、向い合う。エヴァンが、キャスティナのベールを上げる。感極まって泣きそうな、キャスティナがいた。エヴァンは、愛おしくて堪らなかった。優しくキャスティナの唇に、自分のそれを落とす。顔を上げると恥ずかしそうに、幸せを噛みしめ微笑んでいた。


 結婚証明書に、お互いの名前を書き込む。リングの交換を行った後に招待客に向かってお辞儀する。バージンロードを、エヴァンとゆっくりと進む。左右にいる見知った顔の面々が、おめでとうと言葉をかけてくれる。キャスティナは、幸せだなと心の底から感じた。





 結婚式の後は、披露宴の時間だ。式場からコーンウォレス家に移動し、キャスティナは、お色直しの為エヴァンの瞳の色のドレスに着替えた。ウエディングドレスとは雰囲気が一気に変わって、背中を大胆に開けた大人っぽいドレスだ。


 準備が整うと、控室にエヴァンが現れる。エヴァンも、騎士の正装から

 濃紺のタキシードに着替えている。


「綺麗だよ。ティナ」


 エヴァンが、キャスティナを抱きしめる。これからは、この腕の中はずっと自分のものなのだと喜びを感じた。


 あのお披露目の後に、エヴァンとキャスティナはジーンの喫茶店を二人で訪れた。ジーンは、突然来た二人にびっくりしていたが、温かくいつもの様に迎え入れてくれた。そこでキャスティナが、みんなからティナちゃんと呼ばれている事を知る。嬉しそうに返事をするキャスティナは、ティナちゃんって何?と久しぶりに有無を言わせぬ笑顔で尋ねられた。


 あっ、これなんか久しぶりのやつだとキャスティナはひるむ。実の母親から、呼ばれていた愛称なんですと話す。エヴァンは、今からティナって呼ぶね。この呼び方は俺だけねと、言い切られた。


「エヴァン様も格好良いです。自分の旦那様だなんて、信じられません」


 キャスティナが、キラキラの笑顔でエヴァンを見る。


「ああ。奥さんが可愛い過ぎる。もう、披露宴なんてどうでもいいから雪崩れ込みたい……」


 エヴァンが、不穏な事を口にする。キャスティナは、雪崩込むってどこに?と首を傾げる。エヴァンが、キャスティナの頭を撫でる。


「なんでもないよ。それよりキャスティナがビックリする、サプライズを用意したから楽しみにしてて」


 エヴァンが、何やら楽しそうにしている。


「なんだろう?楽しみです」


 楽しそうに笑うキャスティナの手を取って、披露宴会場へと向かった。




 披露宴会場では、今日来てくれたお客様一人一人に挨拶をして回った。誰もが二人を祝福してくれて、嬉しさが溢れた。招待客への挨拶を一通り終了して、休憩の為に新郎と新婦の為に用意された席に着く。


「ティナ、大丈夫?疲れてない?」


 エヴァンが、心配そうにしている。


「ちょっと疲れたけど、大丈夫ですよ。何だか疲れより胸が一杯で、夢の中にいるみたいです」


 エヴァンが、ウェイターに声をかけ飲み物を持って来るように頼んでくれた。キャスティナは、楽しそうにダンスを踊っている招待客に目を向ける。こんなに幸せってあるのだなと、ぼんやりとする。


「キャスティナ奥様、本日はおめでとうございます。今日は、奥様の好きなカフェオレをご用意致しました」


 キャスティナのよく知っている、優しい声だった。キャスティナは、声のした方に顔を向ける。そこには、上質なウェイターの制服に身を包んだジーンがいた。制服の胸ポケットには、キャスティナがプレゼントしたハンカチーフが刺さっている。キャスティナは、両手を組んで口元に持って行く。驚き過ぎて声が出ない。目には、あっと言う間に涙が溜まり今にも零れそうだ。


「マスター……」


 キャスティナが小さなな声で呟いた。ジーンは、キャスティナの前にわざとゆっくりとカフェオレを置く。置きながら、キャスティナにしか聞こえない声で囁いた。


「綺麗だよ。ティナちゃん。幸せにね」


 キャスティナは、ポロポロと涙を零す。ジーンは、一礼して持ち場に戻って行く。


「エヴァン様……。私…嬉しくて。本当は…誰よりも…見て貰いたかったから…。どうしよう…。ありがとう…。ありがとうエヴァン様…。大好き」


 キャスティナは、エヴァンの方に向き直り今日一番のキラキラの笑顔で笑う。

 エヴァンは、堪らずチュッとキスを落とす。キャスティナが目を丸くして驚いている。一気に顔が真っ赤になる。


「ティナが、可愛い過ぎるのがいけない」


 招待客は、新郎と新婦の可愛らしい掛け合いを微笑ましそうに見ていた。











 ジーンは、披露宴会場の隅っこで新婦を見ていた。そこにそっと、誰かが佇む。


「妬けるか?」


 声で誰だか把握する。視線は、ずっとキャスティナに向けたまま動かない。


「いえ……。あの、表情を無くして居場所を探してた女の子が、光の中であんな風に笑ってるのを見られて嬉しいと言う気持ちしかないです。デズモンド様、参加させて頂き本当に感謝しております」


 そう言って、ジーンは深々とデズモンドに頭を下げる。


「儂もあの笑顔が、見たかったんじゃ。サプライズは、成功じゃな」


 二人の視線の先には、顔を赤くしながらも幸せそうに笑うキャスティナがいた。




 完



長い話を、最後まで読んで頂きありがとうございました。


少しでも面白かったと思って頂けたら、下の☆☆☆☆☆をポチッと押して欲しいです。

次を書く、エネルギーになりますo(^▽^)o


実は、最後にエピローグがあります。·····。主人公視点ではなく、喫茶店のジーン視点の話です。興味のある方だけ、良ければ読んで見てね(*^^*)


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