書庫の中、ランプの灯りと捲れる音
終った話、それぞれのその後
―パラリ… ―パラリ… ―ジジッ ―……パラリ…
ランプの灯りが揺れて、少し頁を捲るリズムが遅れる。
恐らくは文字が見づらかったのだろう。
それは壁が全て本棚になった書庫だった、日に焼けるのを防ぐためか窓は全て閉じ切られている。
「…………。」
端から端まで行くのに少々労力が要りそうな広さの書庫、その奥に彼は居る。
無言でただ本を読む彼は三葉、屋敷の住人の一人で基本的に何も喋らず本を読んでいる。
「……っ、ぁ。」
固まった身体をほぐすため、伸びを一つ。
どれだけの時間を書庫で過ごしたのか、彼は覚えていない。
彼にとって本を読む事と、一緒に本を読んだり静かに側に居る事以外は価値が無いからだ。
そして、多分もう一緒に静かな時間を過ごす事は無いので、彼は本を読む。
「……………。」
―パラリ… ―パラリ…
今日も書庫には沈黙と、紙の捲れる音だけがある。
彼は何時も其処に居て、本棚から本を取り出したり戻したり、書庫の奥で本を読む。
いつかの情景は帰らない、あの心地よい静かな時間はもう無い。
だからそんなかつての思い出に近い沈黙と静寂に、少しだけ救いのような何かを…感じるのだ。