辺境からそれなりの愛とか諸々を込めて
ひっそり行こうね。
私が私であると自覚したのはいつ頃だったろうか、幾度目かの屠殺を経験した時か?それとも運悪く事故死した時か…なんにせよその気付きが訪れるまで、私はただの獣でしかなかったのは確かだった。
「我思う、故に我ありとは、誰の言葉でしたかね?」
意味のない呟きが風に溶ける、今日は快晴で牧歌的なこの辺境には春の息吹を感じられた。
「返事が無いと言うのは、些か寂しいのですが?」
私は眼前の人物に少々わざとらしく水を向けてみるが、帰ってくる言葉はつれないものだった。
「いや、知らんけど?つーかなんで俺に聞くんだ?」
呆れたように言うこの人物は二葉、この辺境において変化のない数少ない例外の建物の門番である、短く刈り上げられた頭に気怠気な表情を貼り付けて、タバコの煙を燻らせるその姿を門番として見られるのかと言うと疑問符が付くが…この建物とその住人を考えるとさもありなんと言うものかも知れない。
「今は何も現れたり繋がっていないので会話に飢えているのですよ。」
「暇潰しの雑談を俺に求めんな、面倒だからヤダ。」
紫煙と共に吐かれた台詞に何事か返そうにもそもそも暇過ぎて話を振った事を思い出して空を仰ぐ。
私がただの獣であれば、こんな時間すら感じる事も無かっただろうか?
そんな、意味のない思考に沈む私だった。