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衣食足りて礼節を知るってどういう意味ですの?

作者: ビタミン

 衣食住

着るものなんて一週間分あればいい。フランス人ですら10着しか持たない。

食なんて卵とほうれん草と旬の食材を使えばいい。米は保存がいいだけで栄養はたいしたことない。

住居なんて雨風と寒さをしのげて上下水道と電気が通ればいい。ミニマリストこそ正義。

そんなムダなことが大嫌いなぼくは、まさかの落とし穴にハマった。

そこはアリ地獄。一度ハマったら後はもうどうやってもダメ。

握手会にサイン会、名前を覚えてもらえただけで、数万なんて安い安い。

そう、ぼくは、アイドル、、アイドル沼に、、ズブズブと沈んでしまった!!



 金を友達に借りて踏み倒し、クレジットカードも止められて、親に家賃の工面をお願いして。

本当にぼくは人間失格だ、死んでしまえばいい。そう思いながら日々を生きていた。

もちろんアイドルは見に行ったよ。それがなくなったら、死んだほうがマシだもの。



 そうやって生きているうちに、ふとした拍子にこうしたら死ねるかなとかを考えているぼくがいるのに気づいた。

そんなつもりはなかったのに、赤信号の交差点に勢いよく飛び出してしまった。

妄想と現実の区別があいまいになっていたのだろう。

ぶつかった時は、痛みなんて感じない。うしろに弾き飛ばされて体が変なほうにねじれて、あぁこのまま地面に叩きつけられたら痛いだろうな。と考えていたら、また別の車に弾かれて意識を失った。



 ぼくはいま、大好きだったアイドルと一緒に生活している。別に幽霊になったとかじゃなくて、ちゃんと生きている。

「はぁー、最近あいつ見なくね」

「死んだんじゃね」

「マジでヤバイ、それ最高」

「ウケる」

思っていたよりも口が悪いっていう新発見。でもそんなところもすごくかわいかったりする。



 ぼくの存在は俗世とは隔絶した領域へと昇華した。

衣食住で困ることは、一生涯ないと言ってもいい。

いますぐにでも、ぼくの愛を彼女に伝えたい。





「最近カレシが〜〜」

「うんうん〜〜」


(なに、彼氏なんて聞いてないぞ! 一体どういうことだ!)


「でさでさ〜〜」

「なるほどね〜〜」


(彼氏はいないって言っていたのに、ぼくにも脈ありますかって聞いたときに、全然ありまくりですよって言っていたのにくぁwsうぇでfr)


「ねぇ、あんたの頭にハエが乗ってるよ」バシッ

「やめろし、頭でつぶれたらどうすんのよ」

「ちょっと待ってて、ハエ叩き持ってくるから」





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