異跡探求者
夏祭りチャレンジ2日目!
ようこそ。その言葉にジンが出迎えした者達に口を開いた。
「まさか、情報解析部第2班……副長が出迎えか……」
ジンの言葉に最初に声をかけた肩に届く亜麻色の髪の女性が口を開いた。
「一刻も早くあんたが持ってきた情報を知りたかったからね」
女性の言葉にジンの顔が僅かに歪んだ。違うくせにと。
女性はサラに目を向けた。
身長は女性よりもやや低い。金髪に右側に緑色のメッシュが入っている。そして、体のラインに添い、膝上のスカートとここにいる女性達とは違う服装とデザインである。
「この子が?」
「ああ」
「本当に?」
「事実だ」
一体、2人が何をやり取りしているのかサラには分からない。
しかし、どうもジンと情報解析部第2班と言われた人達は密接な関係にあるようで、状況が読めないサラでも分かる。
そのサラに女性は手を差しのべた。
「初めまして。異跡探求者情報解析部第2班副長のエリシュカです」
「サラです。初めまして」
エリシュカの自己紹介にあわててサラも自己紹介し、手を握った。
サラの言葉を聞いたエリシュカは少し驚いた表情を浮かべた。
「言葉も同じなのね」
「え?」
「詳しい事を聞きたいから移動しましょう」
そう言って全員歩き出した。
ジンは近くにいた情報解析部に荷物と報告書を渡して歩いた。
サラはジンの隣に付きながら歩くと尋ねた。
「ジンさん、私失礼な事言いましたか?」
「いや」
素っ気なく答えた。
「ジン、あんたまたそんな風に!」
何故かエリシュカが口を出した。
「サラさん。もしジンが失礼な事をしたならごめんなさい」
「い、いえ!ジンさんには何度も助けられました」
「そう」
その言葉を聞いてエリシュカは胸を撫で下ろした。
ジンとしてみれば余計な事でると顔が歪む。
「具体的には?」
エリシュカではない情報解析部の誰かが尋ねた。
そこ聞くのかとジンは心の中で不機嫌に呟いた。
「コロニーから……」
「コロニー?」
また通じなかった。今度こそ通じると思っていたサラにしてみればがっかりである。
「ジン、コロニーって?」
「異跡の事らしい」
ジンの近くを歩いていた男の情報解析部が小声で尋ねた。ジンも同じ様に小声で答える。
「あ、ジンさん、話してもいいのですか?」
「ああ」
コロニーや自身の事について口止めされていた事を思い出したサラはジンに尋ね、ジンは話してもいいと呟いた。
「い、異跡から出る時と村で……」
「そうよ異跡!」
サラの言葉に思い出した様にエリシュカが声を上げた。
「どうやって異跡から脱出したの?爆発がすごかったって聞いたけど?」
その問にジンは答えにくそうに言った。
「……飛び降りた」
「えっ……!?」
エリシュカは反転するとジンに厳しい表情で詰め寄った。
「飛び降りたって嘘でしょ!?」
声も厳しく怒っていた。
この一声で全員の足が止まった。
身長的に言えばエリシュカはジンの胸くらいしかないが、それでも歳はジンよりも上で、年長者と言うべきか年の功と言うべきか。迫力がある。
「それしかなかったんだ」
そんな相手にも怯まず言うジン。
「なかったって、他にあるでしょ?サラさんを死なせるつもりだったの?」
「飛び降りるしかなかったって言ってるだろ!ドローンがいる中で出口を探す事なんか出来ない!出られる所から出るのが普通だろ!」
「だからって飛び降りる?まさか、1番高い所から飛び降りたんじゃないでしょうね?」
図星に声が出ない。
「よくそれで生きていたわね!……サラさんも」
言うだけ言って最後に呆れてしまった。
エリシュカに話を振られたサラであるが、サラはサラで目を丸くしていた。
自分と話しをしていてもジンは口数少なく答えも短く話は続かない。が、エリシュカと話すジンがこれ程に人と長く話している事に驚いていた。
「あんなに話すジンさん初めてです」
ほんの3日間しかいないが、その違いに口を出した。
それに答えを出したのが近くにいた情報解析部の眼鏡をかけた男であった。
「副長が絡むとああなるんだよ」
第2班は慣れているらしく誰一人と驚いていない。
エリシュカはジンの体を足から頭まで見渡した。
「怪我は……左手と顔だけ?他には?」
「ない」
ジンの言葉に腕を組んだ。
「医療部に頼んでおいてよかったわ。本部に着いたらすぐに検査してもらうわ」
「は?」
目を丸くするジン。
「身体検査!飛び降りたのなら足にヒビが入っているかもしれないわよ!あ、サラさんもひとまず身体検査ね」
聞こえる様に言った。
先にとは何故かと首をかしげるサラ。ひとまずと言うことは、その他にも何か予定があったのだろうかと考える。
「そんなもの必要な……」
「よくないわよ!」
拒否するジンにエリシュカが再び厳しい表情を見せた。
「まったく!どうして探求者は自分の体を大切にしないのかしら?その体が武器なんだから大切にしなさい!」
そう言うが、ジンは納得していない。
エリシュカは脅しをかけた。
「それじゃ、歩いて検査に行くのと担架に運ばれて行くの、どっちがいい?」
「なっ……」
言葉が詰まった。
だが、脅しはまだ続く。
「ちょうどスヌーヌあるしそこから担架かりましょうか?あ、調査部もいるから頼んで……」
「分かった。行く!行けばいいんだろ!」
ついにジンが根を上げた。大怪我でもないのに担架に運ばれるなんて洒落にならないし恥ずかしいし、何よりもジンのプライドが許さない。
「それでよし!」
ジンの答えに納得したエリシュカは笑みを浮かべて進行方向に体を戻して再び歩き出した。
ジンは顔に手を当てて大きく肩を下げて溜め息を着いた。
この問答で足を止めていた他の情報解析部達もエリシュカに続いて歩き出した。
「ジンさんのあんな表情、初めて見ました」
サラとしてはジンが見せた事のない表情に驚いていた。
「あんな表情見せられると、《不死身》って言われる探求者が形無しだよな」
同意する様に情報解析部の誰かが言った。
「サラさんはジンが探求者って事は知っているのよね?」
「はい」
エリシュカはサラに声をかけた。
「それじゃ、異跡探求者についても聞いた?」
「異跡探求者?」
エリシュカの言葉に首を傾げた。
まさか……とエリシュカが蒼白顔で呟く。
「異跡探求者って何ですか?」
「ジィィィンーーーー!!」
サラの言葉を聞くなりエリシュカは大きく叫ぶと素早く再び反転してジンに詰め寄った。
「あんた異跡探求者の探求者でしょ!何で異跡探求者について教えてないのよ!」
また全員の足が止まる。
「それは情報解析部の役目だろ?」
「役目の問題じゃない!3日間一緒にいたのに教える機会や聞かれた機会があったでしょ!それなのに、何で何も教えてないのよ!」
「教育係りじゃないぞ俺は!」
はぁと溜め息を着くエリシュカ。そしてジンを睨んだ。
「教育係りになれとは言ってないでしょ!まさか、無視してたって事はないでしょうね?」
そしてサラに目線を向ける。
「えっと……されました」
「バカァ!」
エリシュカの声が一段と上がる。
「だからあんたは優しくない!無愛想って言われるのよ!」
「今は関係ないだろ!」
「いいえ!言わせてもらうわよ!あんたは……」
ジンとエリシュカの口喧嘩にサラを含む情報解析部が取り残された。
誰かが溜め息を着いた。
「副長~!」
耐えかねた誰かがエリシュカに声をかけた。が、
「あんたの場合は無視じゃなく沈黙なのよ!どうして聞かれた事に口を閉ざすのよ」
「関係ないだろ!」
気付かない。
「副長~!!」
また誰かが声をかけた。だが、
「いいえ!関係あるわよ!そんなんだから誰も近寄らないのよ!」
「気にしていないし別にいいだろ!」
やっぱり気付いていない。
また誰かが溜め息を着いた。
「……置いて行こうか?」
その言葉に情報解析部数名が同意した。
「いいのですか?」
これに異を唱えたのがサラである。指示を出し、副長であるエリシュカを置いて行くことは問題でないのかと。
「ああ。こうなったら、どっちかが折れるまでやらせるしかないんだよ。」
そう言って情報解析部はサラを連れて歩き出した。
サラは後ろを振り向き、いまだに口喧嘩をしている2人を見ると、情報解析部に連れられて歩いた。
「ジンさんとエリシュカさんは知り合いなんですね」
「知り合いってものじゃないよ」
サラの言葉に情報解析部は苦笑いをした。
「あの2人は親子だからな」
「………え?」
意外な言葉が飛び出た。
今度はサラの足が止まる。
ジンは鳶色の髪と鋭い目付き。エリシュカは亜麻色の髪に目付きは細いがジンほど鋭くはない。
はっきり言って、どこも似ていない。
「ええぇぇぇーーー!!」
親子と言う衝撃にサラの声が響いた。
◆
異跡探求者本部内。
数名の情報解析部と別れると、医療部がいる所へ向かいながら今も同行している情報解析部の3人の内の1人、アルファがサラに異跡探求者について説明していた。
「異跡探求者と言うのは100年前に発見された異跡を調査、解明する為に作られた組織」
ユリウスと同じ年号を言っている。
何というか、サラにしてみれば違和感しかない。
つい最近までコールドスリープしており、目が覚めたら1000年後……となっている。何故そんなに眠っていたのか分からない。
しかも、
(古代人……)
サラの位置付けが古代人と言うものである可能性に戸惑っていた。
それを知らないアルファは話を続けていた。
「設立は今から98年前。きっかけは国家間で異跡解明にやっきになりすぎて世界バランスが崩れた事から。外交や経済が一時的に停滞し混乱が起きた。そこで、国家バランスをとる為に調査や技術を一手に率い、情報の開示をしているのが異跡探求者の役割」
「独占ではなく開示ですか?」
サラには不思議に思えた。
コロニーの住人であるサラにしてしまえば、コロニーの技術がどこまですごいか分からない。しかし、進んだ技術なら独占してしまう傾向にある事をサラは知っている。
「まあ、今はある事情から開示が難しくなっていて、少しばかり独占が続いていますが」
アルファは残念そうに言った。
「けれど98年ですか?話を聞く限り異跡探求者は民間運営ですよね?そんなに経っているのにどうして国は何も追及をしないのですか?」
サラの疑問は正しかった。
国家を上げて解明しているのに民間に手を出されたら国家としても恥である。
「確かに異跡探求者は昔は民間運営だったが、今は世界になくてはならない機関になっています」
そう言って指を3つ上げた。
「理由は3つ。1つは国家以上の実績と技術により国家が認めて異跡調査から手を退かざるをえなくなった。これは国家バランスをとる上で必要だった条件。異跡にばかり傾倒していれば国は機能を麻痺させてしまう。それには異跡探求者には力がある事を認めさせなければならなかった」
一呼吸置いたアルファにサラは尋ねた。
「けど、簡単な事ではないですよね?」
「そう、簡単ではない。そう思われていた」
「思われていた?」
どうゆう意味なのか。
「設立が98年前ですが、国家が異跡調査から手を退いたのがそれから3年後」
「3年!?」
なんと、僅か3年で国家よりも先頭に立ち、国家が渋々諦めざるをえなくさせたのだ。
「僅か3年という数字は誰も予想してはおらず、異跡探求者を立ち上げた人達が手腕であった事が伺えます。」
はっきり言って神業である。
「そうなると、今度は圧力がかかりますよね?」
今までの話を聞いて頭でまとめたサラは国家が次に出す手を口にした。
自国がダメなら取り込むか潰して再度返り咲く方法をとる。
「それが2つ目。異跡探求者が置かれている場所に理由がある」
サラは首を傾げた。
「異跡探求者は中立国家、永世中立諸島ニシアンに置かれている」
「中立?」
中立の国に置かれているだけで何が違うのか。
「異跡探求者は設立してすぐにニシアンに置かれた。ニシアンは昔から海洋国家で中立を保ち続け、国家間に干渉しない位置付けにいた」
「けれど、それでもニシアンにいるならニシアンは異跡探求者に……あ!」
ここで本拠地を置いた目的を知った。
「そう。ニシアンに保護してもらう事。言い替えれば手を組む事」
アルファは頷いた。
「ニシアンと手を組むと言う事は背後には既にニシアンがおり他の国家に干渉されない事をアピールできる。だから国家は異跡探求者に圧力をかける事が出来ない。ニシアンとしてみれば異跡探求者から異跡の情報と技術が得られる」
だが、問題点は新に生じてしまう。
「そうなると今度はニシアンです。ニシアンに非難が集中します。国家が手を組んでニシアンを消せば、異跡探求者を取り込めるはずです」
サラの問いにアルファが笑みを浮かべた。
「そこで3つ目。情報提供」
「どうして?」
サラには分からなかった。
「ニシアンが中立と言ったが、中立であり続けるには何が必要?」
アルファの質問にサラはすぐに答えた。
「国への理解と戦いが起きた場合に鎮める事」
「そう。加えて国家に干渉しない事と防衛力がある事。」
そう付け加えて続きを話す。
「中立だから武器は持つなとは言わない。今では飛行機があるが、当時、ここへの移動は船しかなかった。海洋国家であるニシアンは海戦が強かったから手を出す事は殆ど出来なかった。」
「けど、ニシアンには技術の独占と非難が集中しているはずです」
「そうでもない。異跡探求者としても手を組んだニシアンは守ってくれる存在。互いに互いを必要としていた。だから情報の開示だ」
ここでようやく本題に入った。
「確かに、ニシアンだけなら他の国家が非難する。だが、異跡探求者がニシアンを守る為に国家に情報提供の約束とそれに対する見返りを出せば……」
「けれど、それだけでもだめです!ニシアンに非難出来なくなっただけで戦う意志があれば別です!」
ニシアンは海戦が強いとアルファは言った。しかし、それは絶対ではない。百戦百勝とも言い切れない。
「それぞれの国家にそれぞれ必要な情報を提供すれば?」
「まさか!」
ここで異跡探求者の情報提供の正体を知った。
「異跡探求者はニシアンに認められた国家公認機関。そして、情報操作で世界のバランスをとっているんですよ」
これはとんでもない事だとサラは気づいた。
今の世界レベルがどれ程か分からない。もしかしたら、サラがコロニーにいた頃よりも低くなっているかもしれない。
「100年前以前には情報の売買はあったのですか?」
「聞いた事がないな」
アルファの言う事が本当ならこれは画期的である。
技術と言う情報、いや、情報そのものは誰もが欲しがるものである。その情報を随時更新し、それを欲する事は人として当たり前。
異跡探求者を作った人達は既にそれを知り、情報の売買を確立させていた。
これなら干渉されないように中立ニシアンに拠点を置き、更に異跡探求者を高い位置付けにして情報の開示。
やった事1つ1つが計算されつくしている。
考えた者は間違いなく手腕である。いや、ただの手腕ではない。ものすごく手腕なのだ。
「あ~、ちょっといい?」
その時、気を切らしたようにアルファと同じ様に同行していた3人の内の1人、ミシカが手を上げた。
「お話し中申し訳ないんだけど、ものすごく討論してなかった?」
「ああ、それ俺も思った」
ミシカに同意して最後の1人、カイロが頷いた。
「俺もだ。」
アルファは一呼吸した。
「ただ説明すればいいだけかと思っていたが、かなり鋭い質問にここまで熱中して話すとは思わなったよ」
アルファも予想外だったらしく、どことなく疲れている様に見えた。
「それに答えるあんたも相当すごいと思うよ?」
「いや、かなりギリギリだったからな」
呆れながらも誉めるミシカにアルファは無理して笑みを浮かべた。
「けど、これだけ詳しく聞く事ってやっぱり……」
ミシカの言葉に3人が真剣な表情を浮かべた。
サラは、世界の情勢を全く知らないと言っていい。なのに、質問の1つ1つが知識ある者の問いかけである。
「サラさん……あれ?」
ミシカはサラに声をかけたが、サラの返事がないばかりか姿がない。
3人が足を止めて周りを見回す。
どこにもいない。
「えぇぇぇぇ!?」
「な、何で!?」
「どこ行ったんだぁぁ!?」
三者三者、サラが姿を消した事に驚いた。
* * *
その3人の前から消えたサラはと言うと、
「何ですかこの部屋は?」
歩いている途中に僅に開いている扉があり、興味が沸いたために開けて入り込んでいた。
小さい部屋で扉は開けたままである。
「だから違うって!」
その時、部屋の中で声が響いた。
「そうしたらまたドローンの銃の中身が壊れる!」
「だからって、他に方法ないだろ!」
部屋には2人の男が。その内1人の男の手には工具が握られていた。目をそらすと台と思われるテーブルにはガーディアン・ボールが置かれていた。
サラは近づいてボールを見た。
外装は剥がされ、破損箇所は銃口のみ。機能を停止しているという事は内部のエネルギーを貯蔵する所が壊れ、エネルギーを作る機能が停止していかもしれない。
次に工具を見た。
金槌、バール、ペンチ、スパナ。他にもあるがはっきり言って、
(旧式過ぎます……)
技術が衰退している事を今感じた。
少し目線を反らすと2人の男はまだ討論していた。
ガーディアンに目を戻すと置かれている工具に手を伸ばした。手にした工具はマイナスドライバー。先が薄いから選んだ。
これで何とかなるかと考えながらサラはガーディアンの銃付近、ではなくガーディアンの側面の隙間に刺し、少しずつ動かして隙間を開けた。専用の工具や器具があればこんな荒業はしないだろう。そして、薄さの違うマイナスドライバーを手に取ると刺してテコの原理でドライバーの端を下げ、入れた部分を上げる。すると、カチッと音がして部品が外れた。
ガーディアンは組立式である。外装の中身は規則正しく組み込まれている。その為、ある程度知識を持っている者にしてみればどこに手を入れれば部品が外れるかわかる。知識がなければ、残念ながら、討論している2人の様に力ずくで解体しようとして壊す。
「やっぱり……」
いくつか部品を外し中を見たサラが呟いた。
サラが予想した通り、エネルギーを貯蔵する部分が鉄の銃弾がめり込んでいて壊れていた。
次にサラが手にしたのは磁石であった。
「うまくいって……」
そう願いながら留め具に近づけた。
内部と側面では作る行程が違っていた。内部は精密な作業を必要としていた。その中に磁気で組み立てする方法がある。
サラはゆっくりとその部分に近づけ、カチリと部品がくっついた。
サラの表情が晴れた。ここまできてしまえばレーザーを取り出すのは簡単だった。ほどなくして長さ5㎝のレーザーを取り出した。もっとも、レーザー本体は銃口とエネルギ貯蔵の間にある。つまり、銃口を貫通してエネルギ貯蔵まで壊しているのだ。レーザー本体ももちろん壊れてしまっている。
「これとこれを外して……」
次いで、エネルギ貯蔵も外すと再度組み立てを始めた。
(ここのコードをここに繋げて……これでエネルギが再構成されてまた動くはず……)
さっきとは手順が逆に加えて少し改良。サラはガーディアンを再び動かそうとしていた。
(少し歪んでいるかも?)
それでもすぐに組み立て直した。外装も張り直し、どう見てもガーディアン・ボールにしか見えない。サラが言う歪みも見えない。
「あ!」
ここで決定的な欠損に気がついた。
(指示を出すコントロールルームがありません!)
動かすのに必要な機器がなく項垂れた。
部屋にいた2人の男は討論をやめてドローン解体に意見を出し終えたところだった。
「とにかくこれでいこう」
そう言ってドローンが置かれたテーブルを見ると、
「……誰?」
見慣れない少女がそこにいた。しかも、
「あーーー!!」
ドローンが再組み立てされていた。
声に気が付いたサラは2人を見た。2人の表情は困惑していた。
「あの……」
だが、サラは困惑する2人に更に追い討ちをかけた。
「レーザー取り外しましたが、始めから壊れてました」
そう言って、壊れていたレーザーとエネルギ貯蔵を見せた。
しばらくの沈黙。そして、
「な…何でぇぇぇぇぇ!!」
2人の声が同時に響いた。
* * *
ジンとエリシュカは並んで廊下を歩いていたが、その表情は僅に不機嫌であった。
結局、調査部のユリウスに止められるまで口喧嘩をしていた。
ユリウス曰、
「何故情報解析部は誰も止めなかったんだ!!」
とぼやいていた。
だが、そんなユリウスをよそに火種はまだ2人の中で燃えていた。
そんな2人をよそに、目前に前を歩くアルファ達が見えた。
「どうやらゆっくりと歩いていたようね。」
エリシュカはそう言うが、1人足りない。
「サラさんは?」
「何でぇぇぇぇぇ!!」
その時、開け放たれた部屋から声が響いた。
何かと見ると、何故かサラがおり、何かに驚いている男が2人。
「あいつ……」
ジンは舌打ちすると部屋に入った。
部屋の中では男達がサラに言い寄っていた。
「どうやって解体して取り出したんだ?そもそも、どうやって再構築したんだ?」
「違うだろ!お前、いったいどこの所属だ?」
質問を一気に言ってしまう。
「えっと……」
サラとしては少し困っていた。教えろと言われてもどれから答えればいいのか分からない。
「あう!」
その時、誰かがサラの頭を鷲掴みにした。
「どうしてお前がここにいるんだぁ!!」
言わずもながらジンである。
「こら!女の子にそんな扱いしない!」
部屋に入るなり、その行動に注意するエリシュカ。
「えぇぇぇぇ!?」
その時、廊下から声が響いた。
「今のはアルファ?」
声の主に驚くエリシュカ。
ジンは舌打ちをすると鷲掴みにしたままサラを連れて部屋を出た。
サラはされるがまま。襟があったら引きずっていただろう。
「あ、ちょっと待って!」
それに気づいて2人の男は駆け出そうとしたが、エリシュカが前方を塞いだ。
「悪いけど、この事についてはしばらく口を閉じてて」
「何故ですか!」
「口閉じてなさい!バラしたら……上に頼んで退職させるわよ!」
最後に脅しを言って部屋を出た。が、
「納得出来るかぁ!」
「方法を言うまで追いかけてやる!」
あまり効かなかった。むしろ、やる気にさせた。
アルファ、ミシカ、カイロの3人はサラを探そうとしていた。
「とにかく1度来た道を探そう」
アルファが指示を出そうとした時だった。
「おい」
背後から冷たい声が響いた。
振り返ると、サラの頭を鷲掴みにしたまま歩くジンがいた。その後ろにはエリシュカ。
「どうやったらこの大荷物を置いて忘れるんだ?」
今のサラのポジションは荷物であった。襟があればそこを掴んで吊り上げていただろう。例えは酷いが皮肉が込められている。
「ちょっと待ってくれーー!!」
「ドローンの解体方法教えてくれー!!」
さらにその後をサラから方法を聞き出そうと部屋から出て来た2人の男。
「退職させるわよ!」
2人に向かって叫ぶエリシュカ。
「ええっ!?解体!?」
解体の言葉に異常に反応するアルファ達3人。
「ちょおっと副長!ここは彼等と共に詳しく……」
「今は何が優先か分かっているでしょ!」
そして、ここ一帯が混沌とかしていく。
サラが起こした出来事が収まらない状況にジンは深い溜め息をついた。
ようやく異跡探求者本部出せました……(; ̄ー ̄A
ところでジン、エリシュカ親だよね?何故おばさん?……理由はいずれ!!(←これ、気まぐれでやるくも?)
部署(仮)も名前だけでなくいずれ沢山出します!
…………豆知識なにもないぃぃぃぃぃΣ(ノд<)