古代人
あまり話が進みませんでした…
反省
「古代人」は現代を生きる者達の先祖と考えられている。
根拠はない。民族は存在しても人間以外に種族は存在しないと認識されているし、空の向こうから異星人が来たという考えもない。つまり、異種族が存在する考えは元からないわけである。
その古代人がどうゆう理由で超越した技術の塊である異跡を放置したのか、異跡を作った技術も手放したのか分かっていない。
だから、放置された異跡には人はいない。内部を調査する探求者だけ。
そう思われていたのだが…
「……」
ジンは異跡内部で少女が眠っている事に驚きのあまり唖然と立ち尽くしていた。
「何でこんな所に人がいるんだ?」
正当な疑問である。
透明となった蓋が光を反射して全貌をしっかりと見る事は出来ないが、外見は自分達人間と同じ様に見えた。
ジンは改めて部屋を見渡した。
隅々まで見渡すとやはり部屋の中央にだけ機械が置かれている事が見てとれた。
ジンの知識で機械と言えば、録音機の様な小さな物から車を動かすエンジン、大きな発電機等である。
いずれも異跡の発見が大きい。生産量は低いながらも特別な物以外は発見から数十年後に少しずつ普及し、手に取る機会も増えつつある。
しかし、縦長の箱の表面に透明なパネルがはめ込まれ、そこが光っている物は見た事がなかった。文字を映し出す機械がない。
そもそも、壊したドローンに触れる機会は多くても透明なパネルなんか見た事もないし光っている物もない。全く未知で何も分からない。
だが、ジンは探求者だ。
異跡で見た内部の様子や物をそのまま後方支援に伝える事だけが役目ではない。知識を振り絞り、分からないながらもそれがどの様な物なのか考えて推測を立てる事だってある。つまり、情報を解析し深く掘り下げるのが後方支援だが、その情報源は探求者が現場で直接見て解析した物である。
中央に置かれている全ての機械を見る事にした。
いざ触って何かが起きるとそれは恐い。既に触ってしまったのだが、まずは目視からだった。
棺の様な物の周りにある縦長の機械は少女が眠る棺とコードで繋がっていた。
周りの機械が何の役割を果たしているのかは分からないが、棺と繋がっている事から関係がある事は確かだった。
その機械をもっとよく見たジンは光るパネルを見て驚いた。
「文字…いや、数字か?」
パネルには現代に似た数字が何かを算出した記録を常に更新する様に表示されていた。
まさか、古代の文字とまではいかないが数字を見るとは思わなかった。
(となると…この機械類はここにある棺の何かをしているという事か?)
それが1000年も稼働していたとするなら、とんでもない事である。
現代の機械の耐久度は約30年程とされているが、実際は長くても約10年である。
古代の耐久度には驚かされる。
今度はその棺を調べ始めた。
さすがに分からないうちからパネルに触るのは恐かったし、重要なのは棺にあると思ったからだ。
棺の蓋は透明。底は薄い紫色。中は人1人が横になれるスペースがある。
(どうする…)
困ったジンは入って来た扉を見た。
あまりにも飛び抜けた技術に1人で判断するのが難しかった。
まず、応援を呼ぶ事を考えた。
この発見を外に伝えたら大調査になる事は間違いない。
だが、それはジンが無事に出られ伝えられたらの話だ。
その為には上に上がらないといけないのだが、どうやって上がるか分からない。いや、あの小さな箱を使えば上に上がる事は出来るかもしれないが使い方が分からない。仮に上がれたとしてもドローンに撃ち殺されたら話にならない。没だ。
次に、いくつかの機械を持ち出す事を考えたが即刻没にした。
上記に加えて動きが制限されるし、そもそも1人では無理だ。いや、こっちの方が大調査のメインだ。1人でやろうとしている事自体が間違っている。
(探求者失格だな…)
ジンは溜め息を付くと再び棺を見た。
残された方法としては誉められないが、棺を開ける事を選んだ。
どうやって入ったかは知らないが、古代の技術なら中の人物に尋ねるしかなかった。
もっとも、生きている事とが最低条件であるが。と言うか、そう願いたい。でなければ外に出られないかもしれない。
ジンは恐る恐る手の甲で蓋を叩いた。
興味本意で触れて蓋の曇りが一瞬にして晴れたのだ。あれに似た現象を何度も見せられたら気が持つかどうか分からない。
蓋を叩くと意外に固い印象を受けたが音からしてかなり薄い。
次に、蓋を開けられないかと思い、左手に握ったままの銃をしまうと側面に両手を当てて透明な蓋を押した。
が、力を入れて押すも蓋はびくともしない。
今度は蓋と底の境目を探した。
境目はすぐに見つかった。が、どう見ても指をかけられる隙間はなかった。
「やっぱり普通じゃないんだな」
そう言うと一度常識と知識を捨て、ここで得た情報を改めて整理した。
(棺の様な物には人1人が入れるスペースがあり、そこにはこの少女が眠っている。周りの機械はこれと繋がって何かを記録している様に見える。つまり、記録を取る為には入っていなければならないという事か。なら、何故眠っている?眠らなければならないのか?)
そうして一度頭を捻る。
「眠っている間、どうやって体を維持しているんだ?」
人間は長期間眠っていると体に負担がかかり異常をきたすものである。
それを知っていたからジンは口に出して呟くが、その言葉が答えへと導いた。
「そうか!その間に体を、生命を維持しなければならないという事は、これは生命を維持する装置なのか?」
そう言うが新たな疑問が。
(いや、それならいつから入っていた事になる?最近稼働したらな分かるがそもそもドローンがいる時点で無理だ。女が1人で異跡に入れるわけがない。1000年前か?それなら歳を取るだろ?)
そこまで一気に考えると頭を振った。感じたままに考えたのは正解であったが、常識が途中から入って来た。
(仮に1000年前からだ。1000年間眠っていたなら歳を取るだろ?なら、歳を取らないと考えたら…歳を取らない…歳を取らなくすればいいからそのままの状態にする。つまりは…)
そこで一旦考えるのをやめた。当てはまる言葉が出なかったのだ。感覚では察しが付くのだが上手く言い表せない。実に惜しい。
ジンは再び溜め息をついた。
「どうしてここにいるかは聞けばいい事か。」
そう呟くと今度は改めて開ける方法を考えた。
(古代人ならどうやって開ける?)
今度は古代人の目線で考え始めた。幸いと言うべきか、考えられる事が出来る手がかりがあった。
(階段があった扉のドアノブ。あれは非常口か?そうなると残るはあれか…)
それは、部屋に入る時に触った黒い箱と棺の蓋である。どちらも接触して動いた。なら、何かに触れば開くはず。
試しに指先を蓋の表面に触れてみた。
すると、蓋の表面に光の文字が映し出された。
「やはりか…」
指を引いて呟いた。ここまでは当たりだ。
次に移る為に今度は文字を見た。
「古代文字か…いや、違う!」
光の文字を見たジンは文字の形に驚いた。
文字がジンの知る旧字体に似ていた。いや、旧字体だった。旧字体は画数や難しい形が多い為に今では旧字体を崩した新字体が使われている。今でも一部地域や人で使われており、ジンも古い本を見て知っていた。
だから、こんな場所で見るとも思わなかったし、文字が1000年前と似ている事に驚いていた。
映し出された文字はというと、新たな文字が現れる度に一定の行で消えていた。
(は、速い!)
そのスピードは目で追い付けてはいたが読むには速すぎて最後まで読めていない。
ようやく読めたのは最後の一文字だけであった。
「オール…グリーン?」
そう呟いた時だった。
「なっ!?」
空気が抜ける様な音と共に蓋が上へと開き、その隙間から冷たい白い冷気が漏れ出た。
突然の冷気にジンは驚き声を上げた。水よりも低い温度が体全体に吹き付けたのだ。驚かないはずがない。
「ごほっ!ごほっ!」
そして、冷気にむせて咳き込んだ。
冷気が完全に消え咳が治まると、蓋が完全に開いた事で少女が眠る棺の様な物の全貌を目にする事が出来た。
「これは…」
ジンの目は少女に向けられていた。
ジンよりも年下に見えるその少女は肌が白く、肩の近くまで伸ばした金髪。そして、右側の髪には細く緑色の線が入っていた。白い肌に金髪は滅多に見ない。
次に服。白と黄色を基調とした服装だったが、見た事がないデザインであった。
体のラインに添う様なデザインで首の下から脚の先まで着ていた。少女らしく下はスカートであったが、スカートも長くはなく膝上と短い。靴に当たる物もかかとが少し高い。
ジンは殆ど女性の服装については知らないが、少なくともスカートは膝下、靴の底が薄い事は知っている。
ちなみに、探求者の靴の底は普通の靴よりも厚い。
だから、棺の事よりも少女の方に目がいくのは仕方のない事であった。
ジンは右手の手袋を脱ぐと少女の首に手を当てた。生きているかどうか確かめる為である。
あいにく、脈を確かめるのは手首にしたかったが服と密接していたから首になった。
「脈はあるが、体温が低い」
ジンは手を当てたまま呟いた。
脈があったのは嬉しかったが体温が低いのは誤算…いや、冷気が漏れた時点で少女の体が冷えていると気が付くべきだったのだ。
そう少女を見ながら考えていると、その少女の目がゆっくりと開いた。
ジンは驚き反射的に首に当てていた手を離した。
少女の瞳は翡翠の様に透き通った緑色だった。
少女はしばらくジンを見つめていたが自分の手を動かし、ゆっくりと体を起こした。
「お前は…」
ジンは茫然と見ていた。
ずっと眠っていたらとすると、医学的に体にかかっていた負担までは分からない。だが、それも含めてこの瞬間が普通でない事は分かっていた。
ジンの言葉を聞いた少女は改めてジンを見ると起きたばかりで眠そうなその顔で笑顔を浮かべた。
「おはようございます」
かすれた声。しかし、確かに聞き取れた。
だが、ジンにはそれを気にする暇などなかった。
(言葉も同じ…?)
自分の耳を疑ったが間違いなくそれはジン達が使う言葉と同じだった。
そんな様子のジンに少女は申し訳なさそうな顔をした。
「すみません…まだちゃんと、見えないんです…」
少女の言葉を聞いたジンはその場に崩れ落ちた。
あまりにも衝撃が強すぎた。
叩き付けられる古代技術の洗礼。そして、目の前にいる少女が普通でない事に察しはついていた。だが、少女の気にもしない言葉に張り巡らせていた緊張の糸が一瞬にして切れてしまった。
ようやく落ち着き思考が戻ったジンは再び少女を見た。
少女はさっきまでジンを覗き込む様に棺に座って見ていたが、今度は逆にジンが上から見ていた。
「まずは、俺の言葉が分かるか?」
念の為に聞いた質問である。
少女の言葉が分かってもこちらの言葉が分からなかったら意味がない。
その質問に少女は不思議そうな顔をしながら頷いた。
ジンは内心でホッとすると気になっている事を質問し始めた。
「初めに、お前は何者だ?どうしてその棺に眠っていた?」
最初の質問としては当たり前だが正しかった。そして、この質問にはある意図が含まれていた。
そうとは知らない少女は少し困った顔をすると座っている棺に手を添えた。
「これは、休眠カプセルです」
「休眠カプセル?」
初めて聞く言葉が出た。
少女の声も初め聞いた時と比べてかすれ声ではなく、更にしっかりと聞き取れた。
「知らないのも無理ありません。コールドスリープを可能とする為に作られましたが、まだ実験段階で公には知られていません」
叩き込まれる意味不明な言葉にジンは1つ1つ解決していく事にした。
「そのコールド…何だ?それと休眠カプセルはどうゆう関係があるんだ?」
その質問にはさすがに少女は驚いたのか目を丸くした。
「コールドスリープと言うのは科学小説などでよくあるものですよ?」
(いや、知らないからな)
と心の中で突っ込んだ。
それを読み取ってか少女は詳しく説明をした。
「コールドスリープは老化せずに休眠状態にする事を言います。休眠カプセルはそれを可能にする為に作られたのです」
その説明にジンは成る程と思った。
コールドスリープと言う言葉は異跡探求者に所属するジンでも聞いた事がない。
先ほどジンが一生懸命考えたがふさわしい言葉が無かったために諦めていたが、少女の言葉が全てを代弁してくれた。
休眠カプセルで眠っていれば、例え1000年前に眠っても老化はしないという事だ。
「体への負担は?」
「ないように改良されたので殆どありません」
これで1つの疑問は解決した。
だが、肝心な物についてはまだ足りない。
更に追求した。
「それじゃ、何でお前はその中に入っていた?」
「分かりません」
「は?」
意外な言葉が飛び出た。
「気が付いたらここにいました」
何だそれは!とジンは叫びたくなったが、すぐにこの意味を考え始めた。
(冗談を言っているのか?それとも本当に…いや、第三者の存在か…?まさか…)
考えられるだけ考えた。そして、考えたくもない事も考えた。
ジンはこの質問に少女が古代人であるのか見定めようとしていた。
気持ちでは古代人であると思っているがまだどこか信じられないでいたし、調査としても聞いていた。
今の質問では怪しい。質問を切り替えた。
「なら、ここがどうゆう場所か知っているか?」
これで異跡に類似した言葉が出ればこの時代の人間である。
ジンは息を飲んだ。
「研究室みたいですね」
周りを見回して少女が言った。
「何を研究していたかは分かりませんが、一般的な広さの研究室です」
聞きたかった答えとは少し違っていた。
「なら、この研究室がどんな場所にあるか分かるか?」
少し質問を変えて改めて尋ねた。
「コロニーの事ですか?」
「コロニー?」
異跡とは言わなかった。
「違うのですか?」
ジンのおうむ返しの言葉に少女は首を傾げた。
「いや…俺達は異跡と呼んでいる…」
そう言ってジンは考え込んだ。
(異跡とは言わなかった。とっさに考えた感じもない)
「あの~?」
考え込むジンに少女は顔を覗き混んだ。
(1000年前に使われていた言葉とするなら、あいつは古代人と言う事になる。だが…)
そこまで考えるとさっきから感じている違和感を考えていた。
慎重に選んで聞いている質問。それに素直に答える少女。だが、何かが、何処かが引っ掛かる。話の内容にではない。少女にだ。
ジンは目線を上げた。
「それから…!」
そう言って目前に少女がいない事に気づいた。
後のドアが開く音がして振り返ると少女が部屋から出て行っていた。
ジンは慌てて部屋を出た。
「待て!」
ジンは追い付くと少女の肩を掴んだ。
「何処に行く気だ?」
ジンは急いで止めると尋ねた。
「外に行きます」
少女は一言だけ言った。
これにジンが更に慌てないはずがない。
「よせ!死にに行く様なものだ!」
ジンの必死の言葉に少女は分からないと言う表情で目を丸くした。
「上にはドローンがいる!撃たれ死にたいのか!」
ジンは現代の用語で言った。
「ドローン?」
だからか、少女は意味が分からないという表情で首を傾げた。
「もしかして、ガーディアン・ボールの事を言っているのですか?」
「ボール?」
少女の言葉に今度はジンが分からず呟いた。
説明によると、どうやら小型で丸く宙に浮かび、コロニーではよく見るのがそうだと少女は言った。そして、機体名の略字として「GB」と付けられており、文字に振った時の頭文字からきていると教えてくれた。そのまんまである。
ジンは今一つガーディアンと言われるドローンについて信用していないが、少女は安心している様子で言った。
「心配いりません。ボールは無闇に撃ちません。例え、不審人物を見つけてもいきなり人に撃ちませんし殺しません」
歩きながら言うと廊下の端、ジンが小さな箱から出た場所へと止まった。
「信じられるか!」
その言葉にジンは異を唱えた。
「こっちはいきなり撃たれて死んでいるんだ!1人2人じゃない。十数、数百、それ以上だ!」
「そんな事ありません!」
ジンの言葉を聞いた少女は驚いた表情をしてすぐに反論した。
「警備を担当するガーディアンは無闇に撃ちません。威嚇射撃をしてそれでもダメなら人体に影響がない程度に無力化すると聞いています。」
少女の口から異跡探求者でも知らないドローンの行動が言われたが、今一信じられない。
「もし、ガーディアンがその様な行為をしているという事は、システムに異常…暴走…ウイルス…もしかして…」
そう考えると扉の近くの壁に手を当てた。
ジンは何をと思ったが、すぐに箱がある扉が開いた。
少女は。急いでその中に入り、ジンも後を追う様に急いで箱の中に入る。
「最上階へお願いします」
少女は箱の中に入るとそう言った。
ジンは誰に言っているのかと思ったが、すぐに扉が閉まり、上へ上がった。
「お前、何処に行く気だ?あと、これは何だ?」
ジンはさっきまで物腰柔らかそうにしていた少女が真剣な表情になっている事に気づいて尋ねた。
「これはエレベーターです」
「エベレーター?」
「エレベーターです」
少女はジンに訂正すると話を続けた。
「今、エレベーターでメインコントロールルームのある最上階へ向かっています」
「メインコントロールルーム?」
響きからして重要そうな場所である。
「コロニーの全システムの統括をしているのがメインコントロールルームなのです。そこから生活に必要なエネルギーや環境整備、ガーディアンの操作をしているんです。もしそこに異常があるのならそこから止められますし、確かめる事も出来ます」
その言葉にジンは腕を組んだ。
つまり、少女からしてみれば、暴走しているドローンを確めてもしそうなら止める事が出来る。探求者としては止める事が出来ればこの異跡で探求者が死ぬ事はなくなる。そして、調査の為にこれからそこを目指すという目的も出来る。
「所で、何故最上階なんだ?」
どうでもよかったのだが一応尋ねた。
「広いコロニーでは監視も大変なんです。施設や機材。その為に上へ下へと往復するのが大変なので最上階に全てまとめて、そこから監視をする体制となったと聞いています。そもそも、最上階には限られた人しか入れません」
安全を維持するなら当たり前なのだろうと思った。
「そして、最下層にはエネルギーを作ったり生活に必要な物を作る装置があります。その装置は大きい事と重要であったのであまり人目につかない様に、事故があった時に隔離出来る様に最下層に置かれているんです」
そこまで尋ねていないが素直に聞いた。
用は安全の確認は上、危険な物は下という事か。危険な物は奥と大体は言われているが、ここでは一番下の最下層であった。
そして、休眠カプセルや異跡の話は異跡探求者が調査しても発見しきれていないもの、理解しきれていない事を少女はあたかも当然に話していた。矛盾もおそらくないだろう。
ジンはようやく信じる事にした。今いる少女は1000年前の人間、古代人であると。
「お前は、そのコントロールルームに入る事が出来るのか?」
ジンは大切な事を聞いた。今までの話からいけば入れる者は極わずか。入れなければ意味がない。
「多分」
少女は少し自信なさげに言ったが多分大丈夫と付け足した。
少女の言葉にジンの表情が険しくなった。また違和感を感じたからだ。
そうしていると、上に上がってたエレベーターが止まり扉が開いた。
ジンは静かに銃を持った。ドローンに遭遇すればすぐに撃つつもりであった。
2人がエレベーターから出ようとした時、左端からドローンが現れた。
例のボールと言われたドローンだ。
ジンの表情が険しくなる。
「大丈夫です」
ジンの表情を見た少女が言った。
「例え暴走していても威嚇射撃をするはずです。だから…」
言い終わらないうちにドローンが撃った。
ドローンの標的が少女だと察したジンは急いで少女の腕を掴むと強引に引き寄せた。
「きゃっ!」
突然の事に少女は何かと思う前にジンが腕を引いた事で光線の的から外れ、ジンに倒れ込んだ。
ジンはそのまま受け止めるとすぐさま左手に握っていた連写の銃の引き金を2度引き、ドローンの銃口に命中させた。
撃たれたドローンは小刻みしながら落ちた。
その間、少女は発砲音に驚いて耳を塞いでいた手をゆっくりと離した。
「どうして…」
信じられないという表情で言った少女。安全で人は殺さない。そう信じていたからだ。
「言っただろ。殺しに来ると」
ジンはドローンに銃を向けたまま少女に目線だけを向けて言う。
「伏せろ!」
目線を戻すした瞬間、小刻みするドローンが角度を付けて光線を放った。今度は少女の頭を押さえて共にしゃがんだ。
光線はエレベーターの天井を貫いた。
ジンはすぐさまドローンの銃口に再び打ち込んだ。そして、ようやくドローンの動きが止まった。
ジンは立ち上がると少女に手を差しのべた。
少女は差し出された手を握り立ち上がると天井を見た。小さな火花が散っている。
「あぶない!」
「なっ!?」
今度は少女がジンの手を引いてエレベーターの外に出た。ジンは引かれるがまま外に出た直後、光線が当たった天井から大きな音と共に爆破した。そして、そのまま真下へ落下していった。
さすがに驚いたジンは言葉が出なかった。
「散水機は?」
少女は周りの天井を見ていた。が、少女が探していた物はなかったようで…
「一体どうなってるの?」
わけがわからないという表情で呟いた。
ドローンの暴走。そして、施設全体が機能していない事に。
「おい!」
そんな少女をよそにジンは周りを警戒しながらウエストポーチに手を入れ弾丸を握れるだけ握ると空の弾倉に入れていた。
「あの箱が落ちた下には何がある?」
「おそらく、エネルギーを作る…」
ジンの質問にそこまで言って少女は青ざめた。
炎上したエレベーターが急速で落ちた事で下にある重要機械のある部屋に天井を破って落下した可能性もある。
エレベーターや一部機械が動いていたのならエネルギーを今も作り出している。そこに落下したなら、更に炎上しているはず。いや、大炎上だ。最悪、全てを焼き尽くす。
その時、下から大きな爆発音が響いた。最上階にいるのにここまで聞こえる音だ。爆破の大きさが伺える。
「俺のせいにならないよな?」
一方、ジンは吐き捨てる様に呟くと少女を見た。
「消す方法はないのか?」
「メインコントロールルームに行けば隔離出来ます!」
「隔離?消すんじゃなく?」
「スプリンクラーが作動してないんです!コントロールルームから操作しないと!それに、被害を防ぐには隔離をして炎上を広げない様にもしないと!」
ジンは余裕のない苦しい表情を浮かべるがまだ確認は終わってはいない。
「場所は?」
「分かりません…」
「はあぁ!?」
最上階にあるのは分かるのに場所までわからない。危機的状況なのに更に追い詰められた気がした。
「そもそも、警報も鳴っていませんし何も報告がないんです。コントロールルームは何をして…」
少女は考え込んでしまうが、ジンは追い打ちをかける言葉を言った。
「人がいないからだろ」
「え?」
ジンの言葉に少女は胸が止まる感じがした。
「ここにはもう人はいないと言ったんだ。どうゆう理由でお前があそこに取り残されていたかは分からないが、今、この異跡には俺とお前しかいないんだ」
ジンの言葉を聞いた少女は追求しようとしたが、ジンは少女が言う前に顔を見て言った。
「今はお前がコントロールルームって部屋を開けられる事に賭ける。憶測でいい。俺が先行するから案内しろ!」
それは、生きるか死ぬかの瀬戸際で出した答えであった。
装備品も殆どない。少女をドローンから守りながらの行動。何処にあるか分からないメインコントロールルームの探索。加えて、いつ大爆発が起こるかわからない異跡。
生きるか死ぬかの瀬戸際で出した答えにしては制限や条件が厳しい。
だが、何か行動を起こさなければ死ぬ事をドローンとの戦闘を潜り抜けてきたジンは深く理解していたし、状況が状況で嫌でも分かる。
握ってた弾丸を全て弾倉に入れたジンはすぐに備え付けているホルスター等の装備にしまうと両手に銃を握った。
「俺はジン。探求者だ」
ジンは短く少女に名乗った。
ジンの名乗りに少女も名乗ろうと口を開いた。
だが、ジンは少女の後の通路から現れたドローンに気づき遠距離型銃の引き金を引いた。
弾丸は銃口から僅かにずれるも一部を損傷させた。
「行くぞ!」
そう言うと少女の腕を引いて長い通路を走り出した。
「あの…」
少女はまだ名乗っていないため名乗ろうとするも、
「どっちに行けばいい?」
目的地に着く事が優先と全く聞く気のないジンであった。もっとも、悠長に聞いていられる時間もないわけである。
「えっと…右へ!」
少女は考えて言った。その言葉にジンは握っていた少女の腕を離すと先行して進行方向の安全を確かめると、少女と共にその通路を走り出した。
文字の原形って面白いんですよ!
落書きかと思うようなものから文字が生まれるんですから
お馴染みの漢字は甲骨文字ですし、アルファベットは楔形文字が親戚みたいなものです
今回の旧字体と新字体ですが、簡単に説明するなら…
國(旧)→国(新)
亞(旧)→亜(新)
みたいなものです
元は地方や地域でバラバラに使われていたみたいですが、明治時代に教科書を作る時に統一されたそうです
今の新字体が使われたのは第二次世界大戦後らしいです
あと、本当はヒロインの名前出すところまで行きたかったのですが、ジンの慎重さに全て費やしてしまいました(泣)